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ジョージ・ワシントンの肖像画をメトロポリタン美術館が売却へ。新たな作品購入のための資金調達

ニューヨークのメトロポリタン美術館は、2024年1月18日と19日にクリスティーズで開催されるオークションで、80年間所蔵してきたギルバート・スチュアートによるジョージ・ワシントンの肖像画を売却する。予想落札額は150万ドルから250万ドル(約2億1400万円から3億6000万円)。

ギルバート・スチュアート《ジョージ・ワシントン》(1795)Photo: Courtesy Christie's

ギルバート・スチュアート(1755-1828)はアメリカの最初期の肖像画家で、6人の大統領を含む1000人以上を描いた。中でも100点以上制作されたジョージ・ワシントンの肖像画はよく知られており、1796年の未完の作品が現在の1ドル紙幣の図案に使われている今回の肖像画は、1795年、大統領在任末期のワシントンを描いたものだ。メトロポリタン美術館はこのほかにも、同館の所蔵品の中で最も注目される、1795年のワシントンの肖像画を所蔵している。

クリスティーズに出品されたワシントンの肖像画の予想落札額は150万ドルから250万ドル(約2億1400万円から3億6000万円)で、オークションのトップロットのひとつ。しかし、2018年にペギー&デイヴィッド・ロックフェラー夫妻が所有していた、スチュアートによる別のワシントン肖像画は1150万ドル(現在の為替で約16億円)で落札されている。今回のオークションで、この記録を塗り替えることはないと見られる。

美術館は一般的に、他の作品購入の資金を得るために、所蔵する類似作品や美術館の目的にそぐわないと判断した作品をオークションにかけて売却する「ディアクセッション(deaccession)」を行っている。メトロポリタン美術館は2022年にも、パブロ・ピカソの彫刻をクリスティーズに出品して4500万ドル(現在の為替で約64億円)で落札されるなど、近年、ディアクセッションを積極的に行っている。

今回も、ジョージ・ワシントンの肖像画の売却から得た資金は、新たな作品購入のための資金に充てられる。これは、コレクションの維持という目的であれば所蔵品を売却することができるという美術館長協会(AAMD)のガイドラインに沿ったものだ。

新型コロナウィルスのパンデミックによる景気悪化を受け、AAMDはガイドラインを緩和し、美術館がオークションで所蔵品をより自由に販売できるようにした。しかし、2020年にボルティモア美術館が、コレクションの多様化と従業員の昇給を目的にアンディ・ウォーホルやブリス・マーデンなどの作品をオークションに出品しようとしたところ、元理事やスタッフらが反発して土壇場で計画を白紙に戻すなど、内外からの反対で売却を断念する例が相次いでいる。(翻訳:編集部)

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