ARTnewsJAPAN

シアスター・ゲイツのサーペンタイン・パビリオン「ブラック・チャペル」の鐘、英国の伝統に敬意を

廃墟となった教会の鐘が、天窓から陽光が入り込むサーペンタイン・パビリオンでその響きを取り戻す――。2022年2月3日、シカゴを拠点に活躍するシアスター・ゲイツが今年のパビリオンのデザインを発表した。

シアスター・ゲイツによる2022年のサーペンタイン・パビリオン「ブラック・チャペル」完成予想図(内観) © 2022 Theaster Gates studio

「ブラック・チャペル」と名付けられたこの作品は、2022年夏、ロンドンサーペンタイン・ギャラリーに登場する(*1)。陶磁器生産で知られるイギリスの都市、ストーク=オン=トレントの製陶窯にインスピレーションを得た木造建築で、英国の工芸とものづくりの伝統に敬意を表すものになっている。

*1 近現代美術の展覧会を行うサーペンタイン・ギャラリーは、隣接する草地に夏季限定でサーペンタイン・パビリオンを開設するのが通例。

世界的な建築事務所、アジャイ・アソシエイツの協力を得て建てられるシアスター・ゲイツのパビリオンは、6月10日にロンドンのケンジントン・ガーデンズで一般公開される。パビリオンは、音楽や詩、ダンスなどのライブイベントや市民交流の場となる予定だ。内部には円形の天窓から光が入り込み、入口には鐘が設置される。この鐘は、かつてシカゴのサウスサイドにあり、今は取り壊されている聖ローレンス教会のもので、「パフォーマンスやイベントの始まりを知らせる」ために使われる。

「ブラック・チャペルというタイトルは、とても重要なもの。というのは、私のアーティスト活動の見えない部分を反映しているからだ」とゲイツは声明の中で述べている。「このタイトルは、聖なる音楽と芸術が私の活動に与えた役割と、エモーショナルかつ共同体的な取り組みという特質を示している」

ゲイツのパビリオンは、軽量でサステナブルな素材を使用し、分解可能な構造になっている。ケンジントン・ガーデンズでの展示後は、恒久的に設置する場所に移設される予定だ。

ゲイツは何十年にもわたり、集団的な行動を探求する手段として都市計画や都市保全計画を活用してきた。過去、現在そして未来の、黒人としての体験を保存するために記録を残す活動を進めているほか、自らが設立したリビルド・ファウンデーション(Rebuild Foundation)を通じて、シカゴのサウスサイドにおけるアートシーンの再活性化に精力的に取り組んでいる。その主な事業は、廃墟となった建物を創作活動と人々の交流のための施設として再構築するというものだ。(翻訳: 平林まき)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月3日に掲載されました。元記事はこちら

あわせて読みたい