3300年前の「死者の書」に修正跡。3D顕微鏡で古代エジプトの「修正液」を特定

イギリス・フィッツウィリアム博物館の研究者たちが、約3300年前の「死者の書」から古代エジプト版の「修正液」を特定した。ジャッカル姿の神と思われる図像をより細く見せるため、白い顔料を塗り重ねて描き直していたことが明らかになった。

修正箇所が見つかった「死者の書」部分。Photo: ©The Fitzwilliam Museum, University of Cambridge

イギリス・ケンブリッジのフィッツウィリアム博物館の研究者たちが、「死者の書」から古代エジプト版の「修正液」を特定したとロンドンのタイムズ紙が伝えた。

同館のスタッフは、昨年10月から開催されている展覧会「Made in Ancient Egypt」の準備の一環として、約3300年前の「死者の書」のパピルスを調査していた。

「死者の書」とは、新王国時代の古代エジプトで編纂された死者のための魔術的な呪文の集成であり、葬られた人物が来世へ到達するのを助けると信じられていた巻物だ。今回調査された書は、紀元前1290年頃に王家の書記官ラモセの埋葬のために作られたもので、1922年にエジプトのセドメントで発見された。同書の挿絵には、ラモセが、戦争と狩猟の神であり死者の守護者でもあるウェプワウェトと思われるジャッカルに手を添えている場面が描かれている。研究者たちは、そのジャッカルの体の両側と後ろ脚の太ももの前面に、太い白い線が描かれているのを発見した。

ジャッカルの胴体部分拡大図。Photo; Facebook/The Fitzwilliam Museum, Cambridge
ジャッカルの胴体部分の透過光赤外線写真。Photo; Facebook/The Fitzwilliam Museum, Cambridge

その白い線を透過光赤外線写真を用いて分析したところ、ジャッカルの図像の一部の上から描き加えられており、形状を変えるための修正であったことが確認された。同館の上級エジプト学者で本展キュレーターのヘレン・ストラドウィックは声明で、「誰かが最初に描かれたジャッカルを見て、『太りすぎている。もっと細くしよう』と言ったのでしょう。そこで画家は、修正するために古代エジプト版の修正液のようなものを作ったのです」と説明する。

研究者たちは、3Dデジタル顕微鏡を用いて白い線の顔料成分を分析した。その結果、方解石とハンテ石という2つの白色炭酸塩の混合物であることが判明したという。さらに興味深いことに、顕微鏡観察では黄色い顔料の微粒子も確認された。これは、修正部分を当時のパピルスの淡いクリーム色になじませるために加えられたものと考えられる。

ストラドウィックによれば、大英博物館に所蔵されているナクトの死者の書や、カイロのエジプト考古学博物館にあるユヤのパピルスなど、他の古代エジプトの文書でも同様の修正が行われている例を確認したという。彼女は声明で、「私がそれを学芸員たちに指摘すると、皆たいへん驚いていました。最初はなかなか気づきにくいものだからです」と語った。

ラモセの死者の書の一部は、フィッツウィリアム博物館で4月12日まで開催中の展覧会「Made in Ancient Egypt」で公開されている。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい