100年前の出土品、エジプト最古の回転工具と判明──6000年前の高度な技術と交易も示唆

約100年前に発掘され、ケンブリッジ大学考古学・人類学博物館に所蔵されている小さな銅合金製の遺物が、エジプト最古の回転式穿孔工具だったことが新たな分析で明らかになった。先王朝時代にさかのぼるこの発見は、当時の職人技術の高度さに加え、長距離交易ネットワークの存在を示す可能性もある。

Man using drill, New Kingdom tomb painting from Western Thebes, Tomb of Rekhmire. Metropolitan Museum of Art
西テーベの「レクミラの墓」に描かれた、新王国時代のドリルを使用する人物。Photo: Metropolitan Museum of Art

約100年前に発掘された小さな金属製の物体が、エジプトでこれまでに確認された中で最古の穿孔(せんこう)工具である可能性が明らかになった。考古学メディアの『Archeology Today』が報じた。

この遺物は紀元前4千年紀後半にさかのぼるもので、上エジプトの考古遺跡バダリにある先王朝時代の墓地から出土したもの。成人男性の副葬品の一部で、銅合金製、長さはわずか約6センチほどだ。

所蔵先であるケンブリッジ大学考古学・人類学博物館の1924年の目録には、「革紐が巻き付けられた小さな銅製の錐」と記されていた。しかし、ニューカッスル大学とウィーン美術アカデミーの研究者による新たな調査により、この道具は実際には「弓錐(ボウドリル)」と呼ばれる工具の一部であることが判明した。

弓錐は先史時代に発明された工具で、軸に巻き付けた紐を弓で張り、弓を前後に素早く動かすことで回転させ、穴あけを行うために用いられていた。エジプトにおいては、紀元前2千年紀中期から後期の遺物として弓錐の存在はよく知られているが、今回の発見は、それよりもさらに2000年も前から使われていたことを示している。

この遺物が出土した墓域からは、ビーズなど穿孔加工が施された装身具も見つかっている。ニューカッスル大学の歴史・古典・考古学部の客員研究員で、本研究の筆頭著者であるマーティン・オドラーによれば、回転式の工具は当時の工芸職人にとって極めて重要なものだったという。

オドラーはプレスリリースで、「今回の再分析によって、この遺物が弓錐として使用されていた強い証拠が得られました」と述べ、こう続けている。

「これは、手で押したりねじったりする単純な錐状の道具よりも、より速く、より精密に穴あけを行うことを可能にする道具です。このことは、保存状態の良い弓錐セットが登場するよりも2000年以上前に、エジプトの職人たちが信頼性の高い回転式穿孔技術を習得していたことを示しています」

研究者たちの関心を集めたもう一つの点は、X線蛍光分析によって明らかになった金属組成だった。この工具には、当地では産出が確認されていない金属を含む、特異な合金を組み合わせて作られていた。研究成果が掲載されたエジプト考古学の専門誌『International Journal for Egyptian Archaeology and Related Disciplines』によれば、これは長距離交易ネットワークの存在、あるいは、東部砂漠に未確認の鉱床が存在する可能性を示唆している。

本研究は、古代エジプトの金属製工具に残る使用痕を分析し、その機能や製作技術を解明する研究プロジェクト「EgypToolWear」の一環として実施された。今回の成果は、新たな知見と分析技術によって、博物館の所蔵品から今なお重要な発見が生まれ得ることを示している。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい