「激烈にわいせつ」な地上絵の保全に5億円の寄付集まる──生態系保護や地上絵研究にも活用へ

イギリス・ドーセット州に残る謎の古代遺跡、サーン・アバスの巨人。周辺の土地の売却により開発の懸念が高まる中、国際的な募金活動が5億円超を集め、遺跡の保護が実現することになった。

イギリス南西部の巨大な裸像「サーン・アバスの巨人」。Photo: Getty Images
イギリス南西部の巨大な裸像「サーン・アバスの巨人」。Photo: Getty Images

イギリスで最も謎めいた古代遺跡の一つ、サーン・アバスの巨人を保護するための募金活動が国際的な支援を集め、遺跡への関心の広がりを示した。

ドーセット州の丘陵地帯の下に隠れている石灰岩を露出させて描いたとされるこのヒルフィギュアは、高さ180フィート(約55メートル)に及ぶ。この巨人の地上絵は、35フィート(約10メートル)の勃起した男性器を含む姿によって、圧倒的な存在感を放っている。

歴史的建築物の保護を目的としてイギリスで設立されたナショナル・トラストは2月3日、遺跡周辺の土地を購入するための目標額253万ポンド(約5億4100万円)に到達したと発表した。寄付はオーストラリア、日本、アイスランドなど20以上の国から寄せられ、国際的な関心の高さを裏付ける結果となった。集められた資金は、遺跡の一般公開の維持、地域の野生生物の保護、さらに遺跡の起源を探る考古学的研究の支援に充てられる。

この募金活動は、遺跡周辺の土地138ヘクタールが売りに出されたことを受けて開始された。これにより、住民や保護団体の間で、開発の可能性や立ち入り制限などの懸念が高まっていた。ナショナル・トラストは土地の購入資金のうち220万ポンド(約4億7000万円)を自己資金、助成金、そして遺贈でまかない、残りの33万ポンド(約7000万円)をわずか60日間で一般から募った。

イングランドの民間伝承と結びついているサーン・アバスの巨人には、何世紀にもわたってさまざまな説が唱えられてきた。ケルトの神や豊穣のシンボルを表しているという説から、オリバー・クロムウェルを風刺的に描いたものという説まで、人々の推測は多岐にわたる。そんななか、ナショナル・トラストの考古学者たちは、この巨人は700〜1100年の間に描かれた可能性が高いと2021年に結論づけたが、その正確な目的は依然として不明だ。

ナショナル・トラストの主任レンジャー、ルーク・ドーソンはガーディアン紙に対し、「この巨人は神秘的な魅力を持つ民間伝承の象徴的存在で、あらゆる方面から関心を集めています」と語った。また、ドーソンは、新たに取得した土地によって周辺地形の調査が可能になると説明し、調査対象には、現在も地元のモリスダンサー(*1)が使用しているトレンドルと呼ばれる鉄器時代の土塁や、石灰窯と考えられる遺構が含まれるという。さらに考古学者のスティーブ・ティムズは、調査範囲の拡大によって、数千年にわたる地域の定住パターンや儀式の変遷を研究する新たな機会が得られると述べている。

*1 イギリス民族舞踊モリスダンスの踊り手。ベルやリボンをつけ、スティックを打ち鳴らしながら踊るのが特徴。

巨人そのものに加えて、この丘陵地帯は重要な生態系の場所でもあり、絶滅危惧種のデューク・オブ・バーガンディを含む36種の蝶や、希少な菌類などが生息している。今回調達した資金は、分断されてしまった生息地をつなぎ直し、これらの種が暮らしやすい環境を整えるために使われる。

今年の夏の後半には、職員やボランティア、さらに一部の寄付者が参加し、サーン・アバスの巨人の輪郭を描き直す作業が予定されている。この保全作業では、輪郭を鮮明に保つために約17トンのチョークが使用される。今回の募金活動を統括したシアン・ウィルキンソンは、この取り組みの意義について次のように振り返っている。

「この募金活動は、人々が力を合わせれば何が実現できるかを示しています。私たちは今、ヒルフィギュアと周辺の景観を保護するという、遺跡の長い歴史における次の章を開くことができるようになりました」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい