3800年前の「足を繋がれたカエルの土偶」は何を意味するのか? ペルーの遺跡で新発見

アメリカ大陸最古の文明、カラル文明の都市として知られるペルーのビチャマ遺跡で行われてきた発掘調査で、3800年前のカエルの土偶やレリーフが出土した。これらの発見により、当時の人々が気候危機を連帯して乗り越えようとした姿が明らかになった。

ペルーのビチャマ遺跡で見つかったカエルの土偶。Photo: Courtesy Peru’s Ministry of Culture

ペルー文化省は8月23日、ペルーのビチャマ遺跡で18年間にわたって行われた発掘調査の成果を発表した。その中には、3800年前に遡る2匹のカエルの土偶があり、同日、文化省本部で公開された。

土偶が見つかったのは、首都リマから約110キロ北にあるフアウラ渓谷に位置するビチャマ遺跡。ここは、紀元前3000年頃に生まれたアメリカ大陸最古の文明、カラル文明の末期である紀元前1800年頃に都市として栄えた。25ヘクタールに広がるこの遺跡からは、儀式を行うための広場や公共建築物、一般住宅など28の主要な建築物が見つかっており、2009年にはユネスコの世界遺産に登録された。

Arkeonewsによると、土偶は粘土で成形された未焼成のもので、全長約12センチ。後ろ足を繋げられた2匹の小さなカエルの姿を表現している。同遺跡では泥レンガで制作されたレリーフ壁画も見つかっており、そこにはやせ細った身体の人物や、妊婦、農耕のモチーフなどが描かれていた。この時期のペルーでは気候変動による干ばつが起きており、研究者たちは、レリーフは飢饉、再生、豊穣を象徴するものであると考えている。

カエルの土偶もレリーフに関連したものと推測されている。発掘の主任考古学者兼ディレクターのタチアナ・アバドは記者会見で、「アンデスの宇宙観において、カエルは水と降雨に関連しており、古代社会における農業と生存に不可欠な存在とされてきました」と説明した。

ペルーのビチャマ遺跡で見つかったカエルの土偶。Photo: Courtesy Peru’s Ministry of Culture
ペルーのビチャマ遺跡の発掘の様子。Photo: Courtesy Peru’s Ministry of Culture

カラル文明は紀元前3000年からおよそ1500年間、ペルー中北部沿岸の肥沃な渓谷に沿って発展し、約30の主要都市を築いた。 驚くべきことに、カラルは戦争を行わずに領土を広げ、人々は農業、漁業、貿易を営みながら宗教的儀式を拠り所としてきた。また、天文学、建築学、灌漑に関しても高度な技術を擁したとされ、同文明の文化的遺産は、チャビン、モチェ、そして最終的にはインカ帝国など、後のアンデス社会に大きな影響を与えた。

今回の発見を伝えるプレスリリースには、「ビチャマの人々は、気候変動という逆境に集団で立ち向かい、レリーフを残しました。これは将来の世代に社会的結束を維持し、資源を保護する必要性を伝えているのです」と記載されている。また、カラル考古学ゾーンのディレクターであり、この文明の最も著名な研究者の1人であるルース・シャディは、「カエルの土偶の発見は、ビチャマのレリーフが伝えるメッセージを補強するものです。 レリーフは、気候変動に直面したときの苦難と希望の物語であり、古代社会が今日でも通用する課題にどのように適応してきたかを示しています」と強調した。

カエルの土偶発見の発表と公開は、今年は9月5日と6日に開催されるビチャマ遺跡に暮らした祖先を称える大規模な祭典「ビチャマ・ライミ」を前に行われた。

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