3000年前のマヤ文明遺跡群を発見。先コロンブス期の社会政治的・宗教的構造への理解を深める手がかりに
グアテマラ北部でマヤ文明の遺跡群が発掘された。3つの都市遺跡にまたがる約16平方キロの地域で、約3000年前のピラミッドや聖域、独自の運河システムなどが見つかっている。

約3000年前にさかのぼるマヤ文明の都市遺跡がグアテマラ北部で発掘された。約16平方キロにわたる遺跡群を発見したのは、ワシャクトゥン地域考古学プロジェクト(PARU:Proyecto Arqueológico Regional Uaxactún)に従事するグアテマラとスロバキアの考古学研究者共同チームだ。
ワシャクトゥンはグアテマラで最も著名な考古学遺跡の1つで、メキシコ国境からほど近い同国ペテン県のジャングルの中にある。今回発掘されたロス・アブエロス、ペトナル、カンブレヤルの3つの都市遺跡は、ワシャクトゥンから約21キロのところにあり、この地域で「最も古く重要な儀式的中心地の1つ」と考えられている。
3つの遺跡のうち「祖父母」を意味するロス・アブエロスは、現地で発見された夫婦を思わせる2体の彫像にちなんで名付けられた。グアテマラ文化・スポーツ省が5月29日に発表した声明によると、発掘された遺跡は先古典期中期(紀元前800年〜紀元前500年)にさかのぼるもので、「卓越した建築計画を特徴とし、この地域特有の意匠が施されている」という。
夫婦のように見える2体の彫像は、紀元前500年から紀元前300年頃のものと見られ、やはり今回発掘された聖域とともに「先祖崇拝の古代儀式に関連している可能性がある」と同省は指摘している。
また、ロス・アブエロスの東に位置するペトナルでは、頂上に2つの部屋のある高さ約33メートルのピラミッドが見つかった。部屋は先古典期の壁画で装飾されている。さらに、ロス・アブエロスから約5キロのカンブレヤルの宮殿内でも独自の運河システムが発見された。なお、当局が発表したTikTokの動画(スペイン語の音声あり)では、発掘作業の様子や遺物が紹介されている。
今回見つかった遺跡群は、「これまで知られていなかった古代都市のトライアングル」における都市間のつながりを示しており、先コロンブス期(ヨーロッパ人による植民地化以前)のペテン地域の社会政治的・宗教的構造をより深く理解する手がかりとなることが期待される。
近年、LiDAR(ライダー)と呼ばれるレーザー光による測量技術の進歩で、ジャングルに隠された遺跡も発見できるようになった。特に、最近グアテマラの古代マヤ都市ティカルで発見された、メキシコのテオティワカン文明の様式を備えた祭壇は、マヤ文明が広範囲にわたって栄えていたことを示す証左として注目されている。(翻訳:石井佳子)
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