メキシコの密林に古代都市を発見! 要塞の「真の姿」がレーザー測量によって明らかに
カナダのマギル大学の研究者が実施したレーザー測量調査によって、これまで要塞だと考えられてきたメキシコの密林地帯に古代都市が眠っていることが明らかになった。

これまで要塞跡と考えられていたメキシコ・グイエンゴラの遺跡が、航空レーザー測量技術(LiDAR)を用いた調査によって、実は600年前に建設された広大な古代都市であることが明らかになった。この技術により、考古学者たちは遺跡を覆う密生した森林の下に隠れた建造物を詳細に調査することが可能となり、メキシコシティから南東に520キロメートル離れたグイエンゴラ遺跡が真の姿を現したのだ。
メソアメリカの歴史を専門に扱う学術誌「Ancient Mesoamerica」に掲載された論文の著者でマギル大学の博士研究員のペドロ・ギジェルモ・ラモン・セリスは、アート・ニュースペーパーに次のように語る。
「私たちの研究により、これまで要塞と思われていたグイエンゴラが、実は貴族の邸宅やピラミッド、庶民の居住区を備えた都市集落であることが分かりました。この発見は、ヨーロッパ文明と接触する直前の地域住民がどのようにして都市を建設し、どんな生活を送っていたかを示すスナップショットのような役割を果たしています」
19世紀以来、探検家や考古学者たちは球技場や住居の痕跡などこの場所が単なる要塞ではないことを示す手がかりを見つけていた。しかし、密生した森林に覆われていたため、遺跡の全体像を把握することは不可能だった。そんななか、LiDARと地上調査を組み合わせることで、グイエンゴラが360ヘクタールにも及ぶ広大な都市であることが判明。公共建築物や宗教建築、農業用テラス、庶民や貴族の住居、道路網、そして最大5メートルの高さを誇る防御壁を有していたことが明らかになった。
メキシコの他の古代集落が、ヨーロッパ人の到来後も居住が続けられ、現在は植民地時代や近代の建造物の下に埋もれているのに対し、グイエンゴラはスペイン人に征服される直前に放棄された。そのため、古代都市をそのまま記録できたとラモン・セリスは説明する。2018年から2023年の間に、グイエンゴラ考古学プロジェクトは1173の構造物を特定し、そのうち90の構造物を詳細に調査した。
この発見は、1350年から東方へと領土を拡大し、最終的にグイエンゴラから20キロメートル南東に離れたテワンテペックに新首都を置いたサポテカ文明の動きにも新たな光を当てた。ラモン・セリスはこう語る。
「都市の構成が明らかになったことで、この移動には数世代を要したことが判明しました。グイエンゴラのような集落は、サポテカ人が地域内で新たな居住地を探す際の安全な拠点として、また移住中に他の集団からの防衛拠点として機能していたと推測されます」
また、この発見はアステカ帝国が繁栄していく過程に関しても新たな知見をもたらした。アステカ帝国は、抵抗をほとんど受けることなくメソアメリカを15世紀に征服したと言われてきたが、グイエンゴラの存在はその通説に疑問を投げかける。サポテカは、カカオや熱帯鳥類、羽毛といった重要な産物の供給地であるソコヌスコへの経路にあたるこの地域を支配していたが、そのことが、アステカの攻撃を招いた可能性があるのだ。
今後の研究では、この戦いの詳細や、メソアメリカの軍事技術、防壁の設計、アステカが用いた可能性のある戦術などの解明に焦点を当てていく予定だという。