2026年ヴェネチア・ビエンナーレの国別パビリオンリスト【随時更新】
2026年の第61回ヴェネチア・ビエンナーレは、黒人女性初の芸術監督、コヨ・クオを起用したことで注目を浴びたが、国別パビリオンと代表アーティストの人選に関するニュースも見逃せない。これまでに参加を公表した国の最新情報、第一弾をお届けする。
隔年開催されるヴェネチア・ビエンナーレ美術展の核となるのは、その時々のアート界の潮流を反映したテーマに沿ってキュレーションされるメイン展示だ。それを取り囲むのが数多くの国別パビリオンで、各国が1人または数人のアーティストを代表として選び、独自の展覧会を開催する。ヴェネチア・ビエンナーレが「アート界のオリンピック」、つまり新たにスターが生まれ、各国がしのぎを削る場だと見なされるのは、国別パビリオンの存在によるところが大きい。
開催直前まで参加の有無や内容が流動的なのも、国別展示の特徴だ。2024年のビエンナーレでは、ウクライナとガザで続く戦争の影響でいくつかの国が出展を取り止めた。2026年のビエンナーレでも、こうした紛争の状況によっては周辺地域で波乱が起きるかもしれないし、各国の国内情勢が参加するか否かの決定を左右する可能性もある。
この記事では、これまでに2026年のヴェネチア・ビエンナーレへの参加を決めた国別パビリオンをリストアップした。芸術監督(ビジュアル・アート部門ディレクター/キュレーター)を務めるのは、南アフリカ・ケープタウンのツァイツ・アフリカ現代美術館エグゼクティブディレクター兼チーフキュレーターのコヨ・クオで、メイン展示のテーマは2025年夏に発表されると見られる。国別パビリオンは、メイン展示のテーマに合わせるよう求められてはいないものの、多くの国がそれに呼応する代表アーティストや展示内容を選ぶ傾向にある。
ここで紹介するのは、ほとんどが公式の国別パビリオンのものだ。ただし、ヴェネチア・ビエンナーレは、イタリアと正式な外交関係を結んでいる国に限って国別パビリオンの出展を認めている。そのため、このリストにはコラテラルイベント(*1)として開催される展示も含まれており、該当するものに関してはその旨を記載した。
*1 ヴェネチア・ビエンナーレと同時期に周辺地域で開催される企画展。
これまでに決まった2026年ヴェネチア・ビエンナーレの国別パビリオンは以下の通り。なお、このリストは定期的に更新され、新たに発表された参加国を追加していく。
オーストラリア:ハーレド・サブサビ(Khaled Sabsabi)

2026年ヴェネチア・ビエンナーレで、早くも最も物議を醸しているのがオーストラリア館だ。レバノン出身のアーティスト、ハーレド・サブサビが、キュレーターのマイケル・ダゴスティーノ(Michael Dagostino)とともに取り組む本パビリオンは、2025年2月の初回発表からほどなくして、主催団体であるクリエイティブ・オーストラリアによって中止が決定された。
同団体は、サブサビの過去作──ヒズボラの指導者の映像を含む作品──に懸念を示し、「長期化し分断を招く議論」がパビリオンにとって「リスク」になると説明した。一方、サブサビとダゴスティーノは、これは検閲であると反論した。
しかし、この中止決定そのものが分断的な議論を呼び、クリエイティブ・オーストラリアの理事の辞任や公開書簡の発出につながった。最終的に5カ月後、サブサビはオーストラリア代表として復帰することが発表され、両名はこの再任が「ひとつの決着」を与えたと述べている。
オーストリア:フロレンティナ・ホルツィンガー(Florentina Holzinger)

2024年のアンナ・イェルモラエヴァに引き続き、オーストリア館は2026年もダンスに焦点を当てた展示を行う。代表アーティストに選ばれたのは、振付家でパフォーマンスアーティストのフロレンティナ・ホルツィンガー。しばしば非常に性的で、時に目を背けたくなるほど強烈な作品で知られる彼女は、各地で作品が上演される人気振付家の1人として注目度が急速にアップしている。
裸でローラースケートをする修道女とレズビアンの司祭が登場するオペラ《Sancta(サンクタ)》は、2022年の初演時に母国で激しく批判され、宗教関係者の非難を浴びた。2024年にドイツで上演された際にも、ピアッシングや大量出血を表現したシーンで観客が吐き気を訴えるなど、物議を醸している。2026年のヴェネチア・ビエンナーレで彼女が予定している《Seaworld Venice(シーワールド・ヴェニス)》も、心地良い内容とは言えないものになりそうだ。
ベルギー:ミート・ワーロップ(Miet Warlop)

ベルギー代表に選出されたミート・ワーロップは視覚芸術と演劇を融合させたパフォーマンスで知られている。パビリオンは「IT NEVER SSST」と名付けられ、アントウェルペンのMORPHOとブリュッセルのカナル・ポンピドゥー・センターの支援のもと、キャロリン・デュマリンがキュレーションを担当する。
これまでにワーロップのパフォーマンスは、ベルギーのゲント現代美術館、ベルリンのクンストヴェルケ現代美術センター、パリのパレ・ド・トーキョー、リトアニアのビリニュスで開催された2012年のバルト・トリエンナーレ、2024年のヴェネツィア国際演劇祭で上演されている。
カナダ:アッバス・アカヴァン(Abbas Akhavan)

アッバス・アカヴァンは、トロント・ビエンナーレ・オブ・アートに参加し、カナダ人アーティストに贈られるソビー・アート・アワードを受賞したほか、有名展示施設で展覧会を開催するなど、本国で着実に実績を積み重ねている。2026年のヴェネチア・ビエンナーレへの参加で、その名声はひときわ高まるだろう。
アカヴァンはこれまで、物質的なモノに埋め込まれた国家の歴史に関心を持ち続けてきたが、カナダ館の展示でもこのテーマを取り上げる。テヘラン生まれで、モントリオールとベルリンを拠点に活動するアカヴァンは世界的にも認知度が上がっており、2026年はミネアポリスのウォーカー・アート・センターでの個展も予定されている。
デンマーク:マヤ・マロウ・リューセ(Maja Malou Lyse)

デンマークは、同国史上最年少となるヴェネチア・ビエンナーレ代表として、1993年生まれのアーティスト、マヤ・マロウ・リューセを選出。彼女は写真、インスタレーション、彫刻など幅広い手法を用い、メディア消費が欲望をいかに形成するかを探究してきた。
初回発表時点ではデンマーク館の詳細は明らかにされていないものの、これまでの作品からの延長線上にあるものとなりそうだ。「ビエンナーレにセックスアピールをもたらす準備はできています」と、本人は声明で語っている。キュレーターはまだ発表されていない。
エストニア:メリケ・エストナ(Merike Estna)

メリケ・エストナは、カンバスに油彩という伝統的なフォーマットを超えて絵画を拡張しようとする試みで、母国エストニアで広く知られている。壁にかける抽象画を制作する一方で、工芸的な技法を取り入れたり、絵の中のモチーフを展示室のあちこちに広げたり、彫刻的な要素を加えたりしてきた彼女がエストニア館でどう絵画の限界に挑戦するのか、詳細はまだ明らかになっていない。
フィンランド:イェンナ・ステラ(Jenna Sutela)

生物、AI、デジタル技術を利用した革新的な彫刻で知られるアーティスト、イェンナ・ステラが選出された。彼女のパビリオンの詳細は明らかになっていないが、ヴェネツィアビエンナーレにおいては数少ない生きている生物を利用した展示の一つとなるだろう。
ステラの作品ではバクテリアやカビが繰り返し登場し、現代の人間であるとはどういうことなのかを問う。キュレーターを務めるのは、ニューヨークのスイス研究所所長、ステファニー・ヘスラーが務める。
フランス:イト・バラダ(Yto Barrada)

2026年のヴェネチア・ビエンナーレでフランス代表を務めるイト・バラダは、同国で最も有名な存命アーティストの1人だ。モロッコにルーツを持つ彼女は、彫刻やインスタレーション、コンセプチュアル・アート作品の制作を通じて、思想や概念が世界をどのように駆け巡っていくのか、また、政治運動がどのように歴史化されるかといったテーマに取り組んできた。
最近、MoMA PS1(ニューヨーク)の野外スペースのために制作された彫刻は、赤や青などのコンクリートキューブを積み重ねたもの。バラダによると、この作品はブルータリズム(*2)がモロッコでどう再解釈されたかを示しているという。彼女はこれまでヴェネチア・ビエンナーレのメイン展示に二度作品を出品しているが、国別パビリオンを手がけるのは今回が初めて。
*2 打放しコンクリートやガラスを用いた無骨な建築様式。1950年代に世界中で流行した。
ドイツ:ヘンリケ・ナウマン(Henrike Naumann)、ソン・ティウ(Sung Tieu)

2025年4月、ドイツ館のコミッショナーであるイファ/ドイツ対外関係研究所(ifa – Institut für Auslandsbeziehungen)は、2026年のパビリオンをキャスリーン・ラインハルト(Kathleen Reinhardt)がキュレーションすると発表した。ラインハルトはベルリンのゲオルク・コルベ美術館のディレクターで、これまでリン・メイ・サイード(Lin May Saeed)やノア・エシュコル(Noa Eshkol)の展覧会を手がけ、高い評価を得ている。
その約1カ月後、ラインハルトはヘンリケ・ナウマンとソン・ティウをドイツ代表アーティストに選出。両者はパビリオンのためにサイトスペシフィックな新作を制作する。いずれも政治体制を多角的に見つめる、大規模インスタレーションで知られるアーティストだ。
ラインハルトは声明で次のように述べている。
「コンセプチュアルかつ彫刻的な実践を通じて、ティウとナウマンは歴史的責任について問いを投げかけます。彼女たちは、若い世代の視点から、ドイツ館が扱ってきた大きなテーマをまったく異なる座標軸に置き直し、個人および集合的な主体性の役割を考察するのです」
イギリス:ルバイナ・ヒミッド(Lubaina Himid)

2017年にターナー賞を受賞したルバイナ・ヒミッドが、ヴェネツィア・ビエンナーレに参加することが決定した。彼女は、イギリス代表に選ばれた2人目の黒人女性となる。1980年のイギリス・ブラック・アーツ・ムーブメントの重要人物であるヒミッドは、黒人解放をテーマとした絵画やインスタレーション作品で知られており、特に女性に焦点を当てた作品を制作している。アーティスト活動に加え、イギリスの黒人アーティスト、特に黒人女性アーティストを中心とした展覧会を数多く企画してきた。パビリオンのキュレーターはまだ発表されていない。
ハンガリー:エンドレ・コロンチ(Endre Koronczi)

ブダペストを拠点とするアーティスト、エンドレ・コロンチが「Pneuma Cosmic(プネウマ・コズミック)」と題したプロジェクトでハンガリーを代表する(編注:Pneumaは「息」「風」「生命」などを意味する古代ギリシャ語)。本作は、コロンチが長年取り組んできた「空気の動き」の探究をさらに発展させるもので、リリースによれば、「世界全体を満たし、空気の流れとして可視化される『宇宙の呼吸』の形態を、架空のリサーチを通じて明らかにする」という。
コロンチは、コミッショナーであるルートヴィヒ美術館館長のジュリア・ファベーニ(Julia Fabényi)が主導した公募プロセスを経て選出された。キュレーターは、ルカ・チェルハルミ(Luca Cserhalmi)が務める。
アイスランド:アウスタ・シーグルザルドッティル(Ásta Fanney Sigurðardóttir)

複数のメディアで作品を発表しているアーティストは少なくないが、その中でもアウスタ・シーグルザルドッティルの活動は特に多彩だ。彼女は詩を書き、楽曲を作るだけでなく、実験的オペラと呼ばれる作品も制作している。その作品の多くに通底しているのは、言葉に対する深い関心だ。彼女はそれを、しばしば通常の書き言葉や話し言葉を超えた方法で表現しようとする。なお、シーグルザルドッティルがアイスランド館でどんな作品を発表するかはまだ公にされていない。
アイルランド:イザベル・ノーラン(Isabel Nolan)

アイルランド館の代表アーティストは、ダブリンを拠点に活動するイザベル・ノーラン。キュレーターを務めるのは、トリニティ・カレッジのダグラス・ハイド・ギャラリー・オブ・コンテンポラリー・アートのディレクター、ジョージナ・ジャクソンだ。絵画や彫刻、テキスタイル、写真などさまざまな媒体で作品を制作しているノーランは、宇宙論や神話、歴史、死の必然性といったテーマを探求している。
ノーランはこれまで、スコットランドのグラスゴー・インターナショナルやアイルランドのEVAインターナショナルなどのビエンナーレに参加しており、2025年にはリバプール・ビエンナーレにも作品を出展する。ノーランは声明で、国別パビリオン参加についてこう述べている。「アートには、たとえ一時的であっても、知識や美を共有する人々の間に強いつながりを生じさせ、コミュニティを試行させる不思議かつ特別な力があります。その意味で、ヴェネチア・ビエンナーレはこれ以上ないほど特別な発表の場です」
日本:荒川ナッシュ医(Ei Arakawa-Nash)

数年前に日本国籍を放棄したものの、生まれ故郷である日本では確固たる評価を築いてきた荒川ナッシュ医(Ei Arakawa-Nash)。2024年には東京都現代美術館で大規模な個展も開催された。ロサンゼルスを拠点とする彼は、絵画の可能性を拡張し、通常はスタジオの密室で行われる行為をパブリックなパフォーマンスへと転換する想像力豊かな作品で知られている。
今回の日本館では、彼自身の個人的テーマ──二卵性双生児の子どもをもつクィアの父としての旅路──に取り組む。市川崑による1962年の映画『私は二歳』を起点に、幼い子どもの視点から家族の試練と喜びを描いた物語を参照しつつ、パビリオンを展開する予定だ。
堀川理沙と高橋瑞木が日本館初となる共同キュレーター務める。
韓国:チェ・ゴウン(Choi Geon)、ロ・ヘリ(Hyeree Ro)

韓国芸術委員会は、18人の候補者の中からビナ・チョイ(Binna Choi)を2026年パビリオンのキュレーターとして選出した。チョイはビエンナーレ界で存在感を放つ人物で、2016年の光州ビエンナーレをキュレーションし、2022年のシンガポール・ビエンナーレでは共同アーティスティックディレクター、さらに2025年のハワイ・トリエンナーレでも共同キュレーターを務めている。
声明によれば、チョイのパビリオンは、「社会的な対立や混乱の状態を、ダイナミックで包摂的な動的エネルギーへと変容させるために設計された記念碑的空間」となるという。参加アーティストにはチェ・ゴウンとロ・ヘリが選ばれており、「要塞」と「巣」という空間的メタファーを手がかりにしたパビリオンを構想している。
コソボ:ブリラント・ミラジミ(Brilant Milazimi)

コソボ史上初めて、ビエンナーレでは画家が代表を務める。ブリラント・ミラジミは、人体が引き伸ばされた人物像を描く具象絵画で知られるアーティストだ。
パビリオンの審査委員によれば、ミラジミが制作する新作は次のような問いを投げかけるという。
「人間、身体、そして国家は、終わりのない“移動”の中で何が起こるのか。静止の中ではどんな習慣が生まれるのか。停止の時間にどんな緊張が蓄積するのか」
キュレーションは、ニューヨークのストアフロント・フォー・アート・アンド・アーキテクチャーの館長兼チーフキュレーターであるホセ・エスパルサ・チョン・クイ(José Esparza Chong Cuy)が担当する。
ラトビア:マレウンロルス(MAREUNROL’S)、ブルーノ・ビルマニス(Bruno Birmanis)

多くの国が現役アーティストを起用する中、ラトビアは20年以上前に解散したコレクティブを2026年の代表に選んだ。
パビリオンは、1990〜1999年に活動したコレクティブ「Untamed Fashion Assemblies(直訳すると、野生的なファッション議会)」を「未完のプロジェクト」と捉えるという。リリースによれば、それは「アーティスティックな実験、ジェンダーの自己表象、反消費主義的な制作、そして集合的想像力といった緊急性の高い議論につながるもの」だという。
アーティストのブルーノ・ビルマニス(Bruno Birmanis)が創設したこのコレクティブは、アート、ファッション、その他の領域を横断し、バルト海地域、中央ヨーロッパ、西欧、さらに広範な地域に存在する異質な文化圏のつながりを探求した。
パビリオンのキュレーションを務めるインガ・ラーツェ(Inga Lāce)とアドマス・ナルケヴィチウス(Adomas Narkevičius)は、この集団についてこう述べる。
「西洋を模倣しようとしたわけではなく、もっと奇妙で、根本的に独自の存在だった」
パビリオンには、別のコレクティブ、MAREUNROL’S(マレウンロルス)も参加する。
レバノン:ナビル・ナハス(Nabil Nahas)

レバノン館の代表を務めるのは、自然現象や建築から着想を得た抽象絵画で知られるナビル・ナハス。キュレーションは、ナダ・ガンドゥール(Nada Ghandour)が担当し、企画はレバニーズ・ビジュアル・アート・アソシエーションが行う。
同団体はナハスの作品を「現代的な課題に共鳴しながら、精神性と物質性、親密さと宇宙的広がりを同時に喚起する作品」と評価している。
リトアニア:エグレ・ブドビテ(Eglė Budvytytė)

リトアニア国立美術館によるコミッションで、インディペンデントキュレーターのルイーズ・オケリーがキュレーションするリトアニア館の代表アーティストは、エグレ・ブドビテだ。チェチリア・アレマーニが芸術監督を務めた2022年のメイン展示にも作品を出展したブドビテは、現在アムステルダムとリトアニアのヴィリニュスを拠点に活動。パフォーマンスや映像作品で知られる彼女が2026年の国別パビリオンで展示する予定の作品は、2024年から制作を続けている《Warmblooded and Wingless(温血で翼はない)》で、マルチチャンネルの映像やサウンド、空間的要素が組み合わされている。
「エグレと数年間仕事をしてきて、身体表現、社会的関係、人間と環境との共生に対する彼女独自のアプローチに特に魅力を感じています」。キュレーターのオケリーはリトアニアのウェブメディア、LRTの取材でそう語っている。「リトアニアで育った彼女は、作品の中で独自の世界観を提示し、失われた信仰や、今主流となっているものとは別の知識体系や共存の方法の重要性を示しています」
ルクセンブルク:アリーヌ・ブーヴィ(Aline Bouvy)

ブリュッセル生まれのアリーヌ・ブーヴィは、ルクセンブルクとベルギーを拠点に活動。多分野で活動する彼女は、身体とその周囲の空間との関係性に注目しながら、彫刻や絵画、写真作品などを制作している。ルクセンブルク館は、現代美術フォーラム「カジノ・ルクセンブルク」がコミッションしており、同フォーラムのキュレーターで、展覧会・プログラム部門のトップでもあるスティルベ・シュローダーがキュレーションを行う。
マルタ:アドリアーノ・アベーラ(Adrian Abela)、チャーリー・カウキ(Charlie Cauchi)、ラファエル・ヴェッラ(Raphael Vella)

3人のアーティスト、アドリアーノ・アベーラ、チャーリー・カウキ、ラファエル・ヴェッラが、「No Need to Sparkle」と題したプロジェクトでマルタを代表する。リリースによれば、本パビリオンは「不確実性に身を委ね、『うまく疑う』という態度を不安定な時代の哲学として受け入れるための誘い」をテーマにしている。
アベーラはロサンゼルスを拠点に活動し、マルタとミラノで建築学と土木工学を学んだ後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で彫刻のMFAを取得。カウキはマルタを拠点とするインターディシプリナリー・アーティスト兼映画作家。ヴェッラは、マルタ大学でアート教育とソーシャリーエンゲージド・アートを教える教授。パビリオンのオーガナイズは、キュレーターであり「Unfinished Art Space」創設者でディレクターを務めるマルゲリータ・プレ(Margerita Pulè)が担当する。
マケドニア:ヴェリミール・ジェルノフスキ(Velimir Zernovski)

マケドニア館では、ヴェリミール・ジェルノフスキが、ミケランジェロの《ピエタ》を実物の3分の1スケールで再構築した作品《Pieta in the Covers of Urgency》を展示する。本作の表面には、難民の保護のためによく用いられる金色のサバイバルブランケットが施される予定だ。
ニュージーランド:フィオナ・パーディントン(Fiona Pardington)

2024年のヴェネツィア・ビエンナーレは、ニュージーランドにとって2つの点で特筆すべきものだった。開催前、国の報告書により資金不足であることが明らかになり、その年のパビリオンを主催できないと発表。そして、展覧会ではマオリ族のアーティストコレクティブ「マタアホ・コレクティブ」が金獅子賞を受賞した。こうした背景を経て、ニュージーランドはビエンナーレへの正式な復帰を決定し、2030年までパビリオンを確保することを約束している。
2026年には、フィオナ・パーディントン(カイ・タフ、カティ・マモエ、ンガティ・カフンフヌ、クラン・キャメロン・オブ・エラハト)がニュージーランド・パビリオンを担当することになったが、その詳細はまだ発表されていない。
オランダ:ドリース・フェルホーフェン(Dries Verhoeven)

オランダ館では史上初めて、パフォーマンス・アートが展示の中心となる。ドリース・フェルホーフェンが、キュレーターのリーケ・ヴォス(Rieke Vos)と協働してパビリオンを構成する。
声明でフェルホーフェンが、「地政学的緊張は控えめにいっても深刻で、先の見えない不確実な時代にあります。私は、この不安をビエンナーレというセーフスペースの中で可視化したいのです」と述べているように、非常に暗いテーマに向き合うパビリオンとなる。
北欧諸国:クララ・クリスタロヴァ(Klara Kristalova)、ベンヤミン・オルロー(Benjamin Orlow)、トーリ・ウローネス(Tori Wrånes)

北欧諸国パビリオン(フィンランド、ノルウェー、スウェーデンによる共同パビリオン)は、2026年のアーティストとしてクララ・クリスタロヴァ、ベンヤミン・オルロー、トーリ・ウローネスの3人を選出した。キュレーションを担当するのは、ヘルシンキのキアズマ現代美術館チーフキュレーターのアンナ・ムストネン(Anna Mustonen)。
パビリオンのテーマやタイトルはまだ発表されていないが、ムストネンは声明でこう述べている。
「本展は、来場者を想像力と現実がダイナミックに交錯する旅へと誘うものであり、北欧の文化遺産と、より広いグローバルな文脈を架橋する展示になります」
本パビリオンは、キアズマ現代美術館に加え、スウェーデンのモダーナ・ムゼット、ノルウェーのオフィス・フォー・コンテンポラリー・アート(OCA)と共同で組織される。
スコットランド:デイヴィッド・ブガリン(Davide Bugarin)、エンジェル・コーン・キャッスル(Angel Cohn Castle)

資金上の理由により2024年のビエンナーレ参加を見送ったスコットランドが2026年版に復帰する。代表を務めるのは、デイヴィッド・ブガリンとエンジェル・コーン・キャッスルによるデュオ、Bugarin + Castleだ。
発表によれば、彼らのプロジェクトは「クィア史、スコットランドのアーカイブ、フィリピンの文化遺産に着想を得て、音や衣装が社会的コントロールをいかに形作るかを探る」ものとなる。パビリオンはマウント・スチュアート・トラストがキュレーションし、コラテラルイベントとして開催される。
シンガポール:アマンダ・ヘン(Amanda Heng)

シンガポール館を代表するのは、73歳のアマンダ・ヘン。同国パビリオンを担うアーティストとしては史上最高齢であり、かつ2人目の女性となる。
ヘンはかつて所得税局で働いていたが、1986年にアート制作へと舵を切った。1988年にはアートコロニー「アーティスツ・ヴィレッジ」を共同創設し、1999年には女性作家によるアーティストラン・コレクティブ「ウィメン・イン・ジ・アーツ」を立ち上げるなど、幅広い活動を展開してきた。もっともよく知られるのは、《Walking The Stool》(1999)に代表される持続的パフォーマンス作品で、これはパフォーマンス作品への政府の規制に対する抗議としての側面もあった。キュレーションを務めるのはシンガポール美術館のキュレーター、セレーヌ・ヤップ(Selene Yap)。同館は、パビリオンのコミッショナーであるナショナル・アーツ・カウンシルと協働してパビリオンを組織する。
スペイン:オリオール・ヴィラノヴァ(Oriol Vilanova)

スペイン館は、オリオール・ヴィラノヴァが「Los Restos(残滓)」 と題したプロジェクトで代表を務める。本プロジェクトは、彼が過去20年以上にわたって蚤の市や古物店から集め続けた数万点にのぼる絵葉書のコレクションがもととなっている。
キュレーションはアーティストで批評家でもあるカルレス・ゲラ(Carles Guerra)が担当。リリースによれば、スペイン館は、このコレクションを「進行中のアンチ・ミュージアム」として提示するといい、「控えめながらも継続的な収集行為が、保存、蓄積、文化的価値にまつわる経済といった現代的懸念に対する力強い応答となる」。
スイス:ニナ・ウェイクフォード(Nina Wakeford)、ミリアム・ラウラ・レオナルディ(Miriam Laura Leonardi)、リシック・アライアンス(Lithic Alliance)、ユル・トマタラ(Yul Tomatala)

スイス館は今回、6人のアーティスト/キュレーターによる共同プロジェクトを採用した。ジャンマリア・アンドレッタ(Gianmaria Andreetta)、ルカ・ベーラー(Luca Beeler)、ニナ・ウェイクフォード、ミリアム・ラウラ・レオナルディ、リシック・アライアンス、ユル・トマタラが連携し、「The Unfinished Building of Living Together(共に生きるという未完の建造物)」と題したプロジェクトを展開する。
作品は、1978年のスイスのテレビ番組「テレアレナ」の、クィアの人々が保守的な視聴者と鋭く対立し、自らの性的指向をめぐって議論した回を起点とする。パビリオンは、「寛容と帰属意識、そして社会的分断の諸形態の条件と可能性を検証する」ものになるという。
アンドレッタとベーラー(ともにキュレーター)およびウェイクフォード(アーティスト)がプロジェクトを立ち上げ、後に残る3人が合流した。スイス館が公募制をとったのは今回が初めてとなる。
台湾:リー・イーファン(Li Yi-Fan)

台湾を代表するのは、ここ数年同国で高い評価を得ている新進作家のリー・イーファンで、展示はコラテラルイベントとして開催される。イーファンは台北を拠点とする洪建全財団から、第8回銅鐘藝術賞を2024年に受賞。100万台湾ドル(約480万円)の賞金と、アムステルダムにある国立芸術アカデミーのレジデンシーアーティストとして新作を制作する機会が授与された。
同年の台北ビエンナーレのために制作された《What Is Your Favorite Primitive(忘れられない形)》(2023)は、テック系のキーノートスピーチをパロディ化した30分の映像作品。登場人物はテック業界、特に画像制作ソフトウェア分野が直面する倫理的な問題と格闘している。自ら開発したソフトウェアツールやゲームエンジンを用いて映像作品を制作するリーが、2026年のヴェネチアでどんな作品を発表するのか期待されるが、展示の詳細はまだ発表されていない。
ウクライナ:ジャンナ・カディロワ(Zhanna Kadyrova)

7年前にヴェネツィア・ビエンナーレのメイン展示に初参加を果たしたジャンナ・カディロワが、ついに母国ウクライナ館を代表する。「Security Guarantees(安全保障の保証)」と題されたプロジェクトでは、《Deer》と名付けられた彫刻が展示される予定。この作品は、もともと2019年にポクロフスクのユビレイニィ公園に設置されたもので、旧ソ連軍の軍用機を解体して制作された。しかし2024年、ポクロフスクが避難地域となる中で、カディロワは作品の撤去を余儀なくされた。
共同キュレーターのレオニード・マルシャク(Leonid Marushchak)はこの作品を、「過去の象徴が現代の課題を背景に経験する、現代的苦難の象徴」と評している。また、カディロワは本作の撤去を記録した映像作品《IDP》も展示する。撮影はナタルカ・ディヤチェンコ(Natalka Dyachenko)が担当した。
ウェールズ:マノン・アウスト(Manon Awst)、ディラン・ヒュー(Dylan Huw)

2019年以来となるウェールズ館のベネチア・ビエンナーレ復帰にあたり、マノン・アウストとディラン・ヒューが2026年の代表アーティストに選ばれた。展示はカーマーゼンのオリエル・マーミディン・ギャラリーが企画・運営する。(翻訳:野澤朋代)
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