#ヴェネチア・ビエンナーレ/Venice Biennale
ヴェネチア・ビエンナーレとは、イタリアのヴェネチアで行われる国際美術展。1895年に始まった歴史の最も古い国際美術展であり、世界各地でビエンナーレが行われる現代においても美術シーンを強力に後押しする影響力のある美術展である。
ビエンナーレとは2年に一度を意味するイタリア語である。ヴェネチア・ビエンナーレは1895年から毎年開催されているが、美術展と建築展を隔年で行っているためビエンナーレと呼ばれている。ヴェネチア・ビエンナーレをはじめとする世界の主要な国際美術展には、1951年から続くサンパウロ・ビエンナーレ、フランスのリヨン・ビエンナーレ、5年に一度ドイツのカッセルで開催されるドクメンタ、日本では横浜トリエンナーレが3年おきに開かれている。
開催時期
ヴェネチア・ビエンナーレの開催時期は年によって若干の違いはあるものの、例年4月ごろから始まり11月ごろまで開催している。美術展の開催は1993年から奇数年だったが、2021年はコロナウイルスの流行により延期になり2022年開催となった。
開催場所
世界最大規模の芸術祭であるこのビエンナーレの会場はヴェネチアのジャルディーニを拠点としており、その周辺に各国が自前のパビリオンで展示を行う。1980年からはメイン会場のジャルディーニに合わせてアルセナーレを解放し、ここでは通常若手アーティストたちを紹介するアペルトという部門をスタートさせた。
出展方式
メイン会場にあたるジャルディーニでは、ビエンナーレの総合キュレーターが全体のテーマを掲げて企画を行う。各国パビリオンの出展形式は国によって異なるが、日本の場合、コミッショナーが作家を含む企画案を提出するコンペ方式を採用している。総合展示、各国パビリオン展示の双方優れたものには優秀賞である金獅子賞が贈られる。
2022年のヴェネチア・ビエンナーレ
2021年に予定されていたヴェネチア・ビエンナーレはコロナウイルスの流行で開催が1年延期され2022年に開催された。総合キュレーターを任されたのはニューヨークを拠点に活躍するイタリア人キュレーターのセシリア・アレマーニ。テーマは「ザ・ミルク・オブ・ドリーム」であった。本展示は120年以上の歴史の中でも最も多く女性とトランスジェンダーの作家が含まれており、カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタンの中央アジアの国々も参加する大規模なものとなった。日本パビリオンは、これまでのコミッショナーのコンペティション形式は取らず、美術の専門家から構成される国際展事業委員会が選考する形を取り、ダムタイプが選出された。ダムタイプはビジュアル・アート、音楽、ビデオ、ダンス、デザイン、プログラミングなど様々なジャンルで制作を行うアーティストの集団で、リーダーや固定メンバーはおらず、プロジェクトごとに流動的に参加アーティストが変化していくマルチメディア・アーティスト・グループだ。本展示では、新型ウイルスの世界的流行やインターネット、ソーシャルメディアによって変わっていく人々の関係性や世界を知覚する方法について、あるいは「ポスト・トゥルース」についてのインスタレーション作品を展示した。
各国パビリオンの金獅子賞にはイギリス、フランス、ウガンダが選ばれ、メイン展示部門の金獅子賞はシモーヌ・リーが受賞した。黒人女性初のアメリカ代表アーティストであり、黒人女性初の最優秀賞受賞となった。
歴史
一回目の展示は、1895年、イタリア王ウンベルト1世と女王マルゲリータ・ディ・サヴォイアによって開催された。1907年、ベルギーが自国のパビリオン建設を進めたことから複数の国がパビリオンを持つようになる。日本の初めての参加は1952年であり、梅原龍三郎ら11名の作家が出展した。日本は1956年にブリヂストンの石橋誠二郎の資金援助によりパビリオンを建設、この年に出展した棟方志功が版画で賞を獲得する。1960年代後半に入るとヴェネチア・ビエンナーレを商業主義であると批判する声が高まり賞の撤廃や規模の縮小を余儀なくされる。息を吹き返すべく、1980年にはメイン会場のジャルディーニに加えて造船所跡のアルセナーレでも展示を企画。ここでは若手アーティストを紹介する展示を行い、国際美術祭としての勢いを取り戻すきっかけとなった。その結果、廃止されていた賞も1986年に再開されることとなる。
100周年を迎える1995年は初めてイタリア人以外から総合キュレーター職が選ばれ、フランスからパリ・ピカソ美術館館長ジャン・クレールが就任した。2022年、ビエンナーレに参加した作家の180人以上が初出展であった。この年は、前述の通りこれまでで最も女性、トランスジェンダー作家の参加が多い回でもあり、金獅子賞に初めて黒人女性のシモーヌ・リーが選ばれる歴史的な回でもあった。2024年開催にあたり、女性のみの展示スペース建設計画や、総合キュレーターに初めてラテンアメリカ人が選ばれるなど、さらなる多様性を目指したビエンナーレになると期待されている。
(Text: Atsushi Suzuki)
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