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ヴェネチアの入場料徴収、2025年は2倍に。オーバーツーリズム抑制効果には疑問符

深刻なオーバーツーリズム問題に直面するヴェネチア市では、2024年に5ユーロの入場料を試験的に導入した。観光客数の抑制にはつながらなかったとの結果が示されているが、2025年も入場料の試験的実施を継続。条件によっては倍の10ユーロが徴収される。

オーバーツーリズムによる環境への悪影響が懸念されるヴェネチアの代表的観光スポット、サンマルコ広場。Photo: AFP via Getty Images

ヴェネチア市では今年、オーバーツーリズム対策を目的に、週末を中心とした指定日の日帰り観光客に5ユーロの入場料を課す施策を試験的に導入した。指定日とされたのは4月から7月までの29日で、今年はこの期間、世界中のアートファンや関係者が集まるヴェネチア・ビエンナーレが開催されていた。

市当局が集計したデータによると、これらの指定日におけるヴェネチア市への訪問客は、2023年の同日との比較で平均7000人多いという結果になった。ちなみに、人口約5万人の同市には、毎日約4万人の観光客が訪れる。

2025年には、この指定日が54日にほぼ倍増される。試験期間は今年同様、観光客の数が増える4月18日から7月下旬までの週末や祝祭日などで、訪れる4日前までに予約をしないと徴収額が通常の倍の10ユーロとなる。対象は14歳以上の日帰り旅行者で、午前8時30分から午後4時までの間にヴェネチアの歴史地区に入る場合に適用。なお、居住者やホテル宿泊者、学生、労働者などは免除される。

しかし、この施策には懐疑的な見方もある。ヴェネチア・カ・フォスカリ大学の観光経済学教授、ヤン・ファン・デル・ボルグはアートニュースペーパー紙に宛てた声明で、入場料施策はヴェネチアのオーバーツーリズム抑制には効果がないと批判。「自治体の収入は増えるだろうが、観光客の流れに影響を与えることはない」と述べた。

一方、ヴェネチアの文化遺産保護計画を監督するイタリア政府の関連部署は、この施策を支持。時間が経つと把握しにくくなる訪問者に関する貴重なデータを収集できるようになったと主張している。(翻訳:石井佳子)

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