「幻のカラヴァッジョ」がついに公開! 300年間ローマの名家が守り抜いた作品
専門家が「これまで一度も見ることのできなかった唯一のカラヴァッジョ」と評する作品が11月22日、イタリア・ローマの国立古典絵画館(バルベリーニ宮殿)で公開された。
長らく個人コレクションとして保管されてきたカラヴァッジョ作品が、11月22日、イタリア・ローマの国立古典絵画館(バルベリーニ宮殿)で公開されたとニューヨーク・タイムズが伝えた。
この絵画《マフェオ・バルベリーニ教皇の肖像》は、カラヴァッジョ作品の中でも数少ない肖像画だ。モデルのマフェオ・バルベリーニは1623年にウルバヌス8世として教皇に選出された人物で、教皇領の拡大や三十年戦争の指揮をする傍ら、芸術を支援した。遡ること1598年、バルベリーニの友人で同じ聖職者だったフランチェスコ・マリア・デル・モンテは、苦境にあった芸術家を自らの家族の邸宅に住まわせて支援し、バルベリーニに肖像画の依頼をするよう勧めた。その芸術家こそがミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオだった。
当時30歳だったバルベリーニをモデルにしたこの絵画には、暗闇から浮かび上がるようにスポットが当てられた彼の姿が力強い筆致で描かれており、《ホロフェルネスの首を掻き切るユディト》(1602)や《ナルキッソス》(1599)のような華やかさは無いが、光の使い方の巧みさは見て取れる。共同キュレーターのパオラ・ニキータは声明で「この絵画の核心は手にあります。手紙を握る左手と、指を指す右手で自己表現をしているのです」と解説する。
この絵画は約300年にわたって代々受け継がれ、1930年代にバルベリーニ家が所有地を売却した際に初めて手放された。そのため、この絵画には関連資料が一切なく、1963年代にイタリアのカラヴァッジオ研究家ロベルト・ロンギがバルベリーニ家の肖像画に関する論文を発表するまで知られざる作品であり続けた。
今回の公開の立役者は、国立古典絵画館のトーマス・クレメント・サロモン館長だ。彼は就任後すぐに《マフェオ・バルベリーニ教皇の肖像》の一般公開という野心を抱く。非公開の所有者に数ヶ月にわたって「断固として粘り強く」説得を続けた結果、バルベリーニが教皇に即位後建てた壮麗な邸宅、バルベリーニ宮殿での展示を叶えた。サロモンは同作を「何十年もの間、誰もが見たかったカラヴァッジョの肖像画」と評価する。また、共同キュレーターのパオラ・ニキータも、「美術館の手の届かないところにあり、ほんの一握りの専門家しか目にすることのできなかった、誰もが欲しがるような作品」と同様の意見を述べた。
11月22日、カラヴァッジョに関する著作を複数手掛けたロッセラ・ヴォドレットは初めて肖像画を目にした。これまで所有者の家を訪ねたことはあったが追い返されており、「これまで一度も見ることのできなかった唯一のカラヴァッジョ」だったという。彼女は「私にとっての悩みの種だった」と語った。そしてついに「この素晴らしい作品」を目にすることができ、大喜びした。
《マフェオ・バルベリーニ教皇の肖像》の特別展示は2025年2月23日まで行われる。その後3月から、同館ではアメリカを含む世界各国の美術館から借り受けた作品で、カラヴァッジオの大規模な展覧会を開催する予定だ。そしてサロモンは更なる野望を抱いている。「私たちの最初の夢は《マフェオ・バルベリーニ教皇の肖像》を展示することで、実現しました。次の夢は購入でしょう。それは挑戦ですが、可能であれば取り組みたいと思います」と語った。