4億円超えなるか!? ヴァン・ヘイレン愛用ギター「フランケンシュタイン」が10月オークションに登場
ロック史に名を刻んだエディ・ヴァン・ヘイレンの愛用ギターが、10月に開催されるサザビーズのオークションに出品される。公の場としては40年ぶりに姿を現す「フランケンシュタイン・ギター」には約4億円の予想落札価格が付けられており、同社はこのオークションを皮切りに、ポップカルチャー分野に注力していく方針だ。

世界中のギター小僧を虜にしたギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレン。彼が自身でカスタマイズした1982年製のKramer 5150が、サザビーズ・ニューヨークのオークションに出品される。評価額は200〜300万ドル(約2億9500万〜4億4300万円)。
このギターが目玉商品として出品されるのは、音楽や映画、テレビ、コミックスなどの文化的な名品に焦点を当てたサザビーズの新たなオークション「Grails Week」。これは、メモラビリアの収集ブームの中心に自らを位置づけようという、サザビーズの新しい試みだ。
ただし、ヴァン・ヘイレンのKramer 5150はメモラビリアの枠組みを超えた価値を持っていると言える。長い年月、ヴァン・ヘイレンと世界各地のステージをともにしたこのギターは、のちに彼のギターテックに贈られた。その後、モトリー・クルーの元ギタリストであるミック・マーズに売却され、マーズは1989年のアルバム『ドクター・フィールグッド』のレコーディング以降、このギターを表舞台で用いることはなかった。よって、これが公の場に姿を現すのは、40年以上ぶりとなる。
フェンダーのネックとギブソンのピックアップを組み合わせ、赤、黒、白のストライプを施したこのギターは「フランケンシュタイン・ギター」と呼ばれ、音、外見ともに強烈な印象を残す。フレットの高さやナット幅、ボディ形状に至るまで徹底的に調整されたこのギターは、ヴァン・ヘイレンのパートナーとして、実用性とデザイン性を兼ね備えた一本となった。
10月に開催される「Grails Week」には、フランケンシュタイン・ギター以外にも、ボブ・ディランの「風に吹かれて」の歌詞の直筆原稿、ローリング・ストーンズの「イッツ・オンリー・ロックンロール」のアルバム・ジャケットの原画、1960年代にビートルズのレコーディングで使われたシンバルなどが出品される予定だ。
ポップカルチャーを象徴するアイテムが多く取り扱われる背景には、美術品オークションの売上低迷がある。調査会社ArtTacticによると、2025年前半のクリスティーズ、サザビーズ、フィリップスの売上高は2022年同期比で44%減少、金額にして約30億ドル(約4430億円)の縮小となった。これにより、大手オークションハウスは、ラグジュアリー商品やポップカルチャーに力を入れざるを得なくなったのだ。
その象徴的な例として、今年7月にパリのサザビーズで開催されたオークションでは、ジェーン・バーキンがかつて所有していたエルメスのオリジナル・バーキンが、ハンドバッグとしては記録的な860万ユーロ(当時の為替で約14億円)で落札された。また、競合のクリスティーズが2025年前半に横ばいの業績を維持できたのは、ラグジュアリー商品の売り上げが30%増の4億6800万ドル(約691億円)に達し、全体売上の22%を占めたことが要因だ。ArtTacticの推計によれば、大手オークションハウスにおけるラグジュアリー商品の売上金額ベースでの割合は5分の1を超え、過去最高の水準に達しているという。
今年初めにポピュラー・カルチャー部門を新設したサザビーズにとって、「Grails Week」はこの拡大するニッチな市場において盤石な地位を築くための布石だ。サザビーズのラグジュアリー部門責任者を務めるジョシュア・プランは、ヴァン・ヘイレンのギターについて、「私たちが出品したいと考えていた作品そのもの」と評している。同社はすでに、映画関連の分野でも実績を積んでいる。例えば、映画『フェリスはある朝突然に』で主演のマシュー・ブロデリックが劇中で着用したセーターベストなどを出品し、大きな話題を呼んだ。(翻訳:編集部)
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