盗まれた幻のギブソンがメトロポリタン美術館に? 元ローリング・ストーンズのメンバーが異議

今年5月、メトロポリタン美術館に500本のギターコレクションが寄贈されて話題になった。だがローリング・ストーンズの元ギタリスト、ミック・テイラーは、その中に自身がかつて所有し、1970年代に盗まれたギブソン・レスポール・スタンダードがあると主張している。

1973年、ロンドンでレコーディングを行うミック・テイラー。Photo: Michael Putland/Getty images

今年5月、億万長者の実業家ダーク・ジフが集めた500本のギターコレクションがメトロポリタン美術館に寄贈された。このニュースはニューヨーカー誌でも大々的に取り上げられたが、その中に盗品が含まれている可能性が浮上した。というのも、ローリング・ストーンズの元ギタリスト、ミック・テイラーが、自身が以前所有していたが1970年代に盗まれた1959年製ギブソン・レスポール・スタンダードが寄贈ギターに含まれていると主張したのだ。

ページシックス紙の報道によると、この1959年製ギブソン・レスポール・スタンダードはもともとローリング・ストーンズのギタリストであるキース・リチャーズが所有し、1964年にストーンズがテレビ番組「エド・サリバン・ショー」に初出演した時に使用された。テイラーはそれを1967年に買い取ったが、その後1971年に、コート・ダジュールにあるストーンズの別荘「ネルコート」に泥棒が入り、他の8本のギターなど複数の楽器と共に盗まれたという。

メトロポリタン美術館はこのギターについて、キース・リチャーズの使用だけを公表している。これについて、テイラーのマネージャーであるマリエス・ダミングは、「ミック・テイラーがこのレスポールを演奏している写真が多数存在しています。これは紛失するまで彼のメインギターでした。1950年代後期製のヴィンテージレスポールには炎のような模様があり、指紋のように個別の特徴があるのですぐに分かります」と主張する。

また、テイラーに近い情報筋がページシックス紙に語ったところによると、テイラーは、「自分の所有物がどのようにしてメトロポリタン美術館のコレクションに混入したのか困惑している。私は50年前の盗難に対する補償を一切受けていない」と話しているという。

億万長者の実業家でありコレクターのダーク・ジフが寄贈した500本のギターには、フェンダー社を創設した「エレキギターの祖」レオ・フェンダーが1948年に製造した最初のギターや、1970年代にニール・ヤングが使っていたギブソン・フライングVなど貴重なものが揃っている。美術館はこの寄贈を「アメリカのギター製作の黄金時代を象徴する画期的かつ最高峰のギター」と評しており、2027年にはアメリカのギターに関する常設ギャラリーをオープンさせて、寄贈品の一部を展示する予定だ。

US版ARTnewsはメトロポリタン美術館の広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られていない。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい