21億円のポロックを落札した「億万長者の息子」、代金未払いでフィリップスに訴えられる
かつてスイスで最も裕福な300人に選ばれた億万長者、ジャン・クロード・ミムランの息子が、フィリップスに提訴された。訴状によれば、昨年11月にニューヨークで開催されたイブニングセールで落札したジャクソン・ポロックの絵画代金、1450万ドル(約21億5800万円)を支払っていないという。

砂糖産業の億万長者であるジャン・クロード・ミムランの息子、デヴィッド・ミムランが昨年11月にフィリップスで購入したジャクソン・ポロックの絵画代金を支払っていないとして、7月初め、オークション会社に提訴された。ニューヨーク・ポスト紙が伝えた。
デヴィッド・ミムランは、トム・ハーディがボクサー役で出演し、高い評価を得たドラマ『Warrior』(2011)などの映画プロデューサーでもある。また、以前はセネガルの金生産大手であるエンデバー・マイニング社の要職に就いていた。
渦中の絵画は、ジャクソン・ポロックが1948年頃に制作した無題の作品。キャンバスに絵の具を垂らすポロック独自の「ドリップ・ペインティング」という手法が用いられている。オークションの際にフィリップスは、「垂涎の的であった黒地に白の『ドリップ・ペインティング』の見事な見本」と評し、昨年11月19日にニューヨークで行われたイブニング・セールのトップロットを飾った。

ニューヨークの最高裁判所に提出された訴状によると、デヴィッドは、この作品の第三者保証の保証人となったという。第三者保証は、不落札を防ぐ目的でコロナ禍頃から一般的になったシステムで、オークションハウス以外の人物(保証人)が作品の最低価格での購入をあらかじめ保証するもの。保証人は、入札がなかった場合には作品の購入価格を低く抑えられるメリットがあり、仮に作品が設定した価格を超えて誰かに落札された場合には、設定価格と落札額の差額から、一定の割合を受け取ることが出来る。保証人はオークションの入札権を与えられるため、入札の展開次第では、経済的なリターンを得ることも可能となる。
しかし今回のケースでは、絵画は予想落札価格1300万ドル(約19億3500万円)に達することはなく、事前に合意していた最低価格1450万ドル(約21億5800万円)でデヴィッドが購入することとなった。だがその後、デヴィッドはフィリップスに「借金がある」と明かし、支払いの延長を求めたという。
アートネットの取材に対してもデヴィッドは、「私はこの絵が大好きです。オークションハウスではよくある事だと思いますが、金策のため少し遅れて購入するつもりです」と語っている。
だがデヴィッドは、今年3月と6月を期限とする2度にわたる支払い義務を履行しておらず、フィリップスは期限から120日以上が経過したとして訴訟に踏み切った。同社はデヴィッドに対し、絵画代金に金利手数料、弁護士費用を加えた1495万ドル(約22億2500万円)を支払うよう求めている。
ミムランの父ジャン・クロードは「アフリカの砂糖王」の異名を持ち、その純資産は約20億ドル(現在の為替で約3000億円)と言われている。しかしジャン・クロードは近年、所有する高級リゾートや一部の事業を売却したとも報じられている。さらにデヴィッドも、2013年に決定した最初の妻への離婚調停金700万ドル(同・約10億円)以上が、いまだ支払っていないという。
フィリップスの弁護士ルーク・ニカスはUS版ARTnewsの取材に対して、次のようにコメントした。
「デヴィッドが親の肩書きをちらつかせて億万長者のように入札し、都合が悪くなると自分は無一文だという主張に隠れることが出来ると信じていることに驚きを隠せません。作品の代金を1ドルも持っていないのであれば、オークションに名乗りを上げるべきではありませんでした」(翻訳:編集部)
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