国内120の目利きが選んだ名品と出会う──「東美アートフェア2025」が10月17日から開催

日本で最も歴史のあるアートフェア、「東美アートフェア2025」が10月17日から19日までの3日間、東京・港区の東京美術倶楽部で開催される。今年は120の美術商が一堂に集い、日本画、洋画、工芸、古美術、茶道具、近現代美術まで、多岐にわたるジャンルの優品が出品される。

板谷波山《葆光彩磁柘榴文香爐》 花きりこ より出品予定

東京美術商協同組合は、10月17日から19日までの3日間、東京・港区の東京美術倶楽部で「東美アートフェア2025」を開催する。

1949年に設立された同組合は、1907年に創立された美術商団体の東京美術倶楽部を母体に持ち、1924年に設立された東京美術商親交組合を継ぐ形で組織された。現在は、厳しい入会基準を満たした500人の組合員が加盟している。

2024年の「東美アートフェア」展示風景。
2024年の「東美アートフェア」展示風景。
2024年の「東美アートフェア」展示風景。
2024年の「東美アートフェア」展示風景。

そんな同組合が1999年から毎年開催する「東美アートフェア2025」は、各分野のエキスパートが選び抜いた古美術、工芸、近代美術、そして現代美術が集まる場として、目の肥えたコレクターの信頼を得てきた。今回は東京美術倶楽部の4フロアを会場に、120の美術商がそれぞれの専門性と審美眼を生かした品々を展示する。中でも同フェアは、古美術の老舗や名店による美術館・博物館レベルの品物の出品も大きな特徴。これらの逸品を通して古美術の奥深い魅力に触れることが出来るまたとない機会だ。

目利きが選んだ多様な「美」が集結

東洋古美術を専門に扱う浦上蒼穹堂(東京・日本橋)は、中国陶磁の歴史の中で最も華麗と称される「唐三彩」から、逸品「三彩馬」を出品する。同作は繭山龍泉堂の名品図録「龍泉集芳」(1976)に収録される6頭の唐三彩馬のうちの1頭で、唐時代(618-907)の中央集権制国家の中で馬が重用され、名馬を持つ事は王侯貴族の夢であったことが表されている。

1914年創業の老舗、小西大閑堂(東京・港区)の見どころは、能楽で用いる打楽器「大鼓」の胴部分である「雲鶴蒔絵大鼓胴」。鼓装飾の特徴は、演奏の妨げになる高蒔絵や、手触りに違和感を持たせる貝や金属などの使用を避け、 梨地や平蒔絵などの単純で華やかな装飾が施されていた点だ。この鼓胴は、両端にあたる「革口」と棹の円周の比率は9対3と大きな差がある中で大胆に図案をまとめ上げ、「至難の業」と言われる起伏の激しい胴部分に見事な蒔絵が施されている。

「三彩馬」
浦上蒼穹堂 より出品予定
「雲鶴蒔絵大鼓胴」
小西大閑堂 より出品予定
英一蝶《菊慈童図》
万葉洞 より出品予定
板谷波山《葆光彩磁柘榴文香爐》
花きりこ より出品予定
釘町 彰「Dialogue」
YUKIKOMIZUTANI より出品予定
北大路魯山人《雲錦 鉢》
銀座 黒田陶苑 より出品予定
「金梨子地葵紋散金銀蒔絵鞘糸巻太刀拵」
銀座日本刀ミュージアム泰文堂 より出品予定
「鍋島青磁染付青海波宝尽文大皿」
東京 大谷美術 より出品予定
「青銅鍍金菩薩立像」
去来 より出品予定

古書画や茶道具を扱う万葉洞(東京・銀座)は、昨年サントリー美術館で開催された展覧会「没後300年記念 英一蝶―風流才子、浮き世を写す―」で改めて注目された江戸時代の絵師、英一蝶(1652-1724)の《菊慈童図》を展示する。同作は菊の露を飲んで不老不死の力を得たという中国の仙童、菊慈童を中心に左右の幅に多様な種類の菊を描いた三幅対で、狩野派に学んだ一蝶の繊細な筆致と色彩感覚により菊慈童の優雅さと霊妙な雰囲気が丁寧に表現されている。

花きりこ(茨城・土浦市)は、地元茨城出身の近代陶芸の巨匠、板谷波山(1872-1963)の作品から、独創的な技法である「葆光彩(ほこうさい)」の名品「葆光彩磁柘榴文香爐」を紹介する。光を包むという意味で波山が自ら「葆光」と名付けた葆光彩は、艶消しの葆光釉によって、薄絹を透かしたような淡い光を放つのが大きな特徴。香炉に描かれた図案や炉の金属の網部分にアール・ヌーヴォーの影響が感じられる。

YUKIKOMIZUTANI(東京・天王洲)は、紙と岩絵の具を使い、「光、時間、距離」をコンセプトに風景画を描く現代アーティスト、釘町彰の新シリーズ「Dialogue」を発表する。和紙の皺が作る宇宙と描かれた樹々が互いに関係しながら予定調和なく変化していく動的なスペクタクルからは、日本画にとどまらず、映像やインスタレーションなど多様な表現に取り組んできた作家独自の知見が垣間見える。

日本の美意識に触れ、美術の知識を深めるイベントも開催

「済美庵」茶室からの眺め。
「済美庵」室内

会場の東京美術倶楽部の2階には日本庭園があり、その庭園を臨む茶室「済美庵」では各日呈茶が行われる。亭主を務めるのは、17日は武者小路千家・久米守翆、18日は裏千家・梶谷麻里、19日は表千家・澤井雅彦。福岡大宰府の和菓子店、藤丸の作り立ての茶菓子を用意する(各日11:00~先着200人、1500円)。

また、期間中は4人の専門家によるギャラリーツアーも開催。17日は繭山龍泉堂代表の川島公之、18日は神奈川県立金沢文庫の瀬谷貴之主任学芸員と雑誌「芸術新潮」編集長の高山れおな、19日はテレビ東京系列「開運!なんでも鑑定団」の出演で知られる永善堂画廊代表山村浩一がガイドを務める。(各日15:00~、予定人数に達しているが、当日人数に余裕があれば参加可能)

東美アートフェア2025
会期:10月17日(金)〜10月19日(日)
場所:東京美術倶楽部(東京都港区新橋6-19-15)
時間:10:00~19:00(18日は18:00、19日は17:00まで)
料金:一般2000円(前売り1500円)、大学生以下・障がい者手帳所持者及び付添者1人無料

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