古代エジプト最盛期の巨大城塞を新発見。パン焼き窯など兵士の生活をうかがわせる遺物も

エジプト・シナイ半島北部、ガザ地区との国境に近い遺跡から、古代エジプト新王国時代の軍事施設が新たに見つかった。エジプト観光・考古省は、当時の東部国境を守る城塞群の1つであり、非常に重要な発見だとしている。新王国時代は古代エジプトが最も栄えた時期で、パレスチナからメソポタミアにまで領土を広げている。

エジプト新王国時代最大級の城塞の1つがシナイ半島北部で発掘された。Photo: Courtesy of the Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

エジプト観光・考古省は10月11日、シナイ半島北部で古代エジプト新王国時代(紀元前1550年頃~紀元前1070年頃)の城塞が新たに発見されたと発表した。それによると、「地中海沿岸の『ホルスの道』沿いで見つかった最大かつ最も重要な城塞の1つ」だという。「ホルスの道」とは、古代エジプトから東へ向かう主要な交易路で、軍隊の遠征路でもあった。

新たに城塞が見つかったのは、シナイ半島北部のシェイフ・ズワイドに近いテル・エル・ハルバ遺跡。面積は約8000平方メートルにわたり、1980年代に同遺跡で発掘された城塞の約3倍の大きさがある。なお、80年代に掘り出された城塞は、今回の発見から南西に約700メートルの場所に位置する。

考古学専門誌のアーキオロジーによれば、この城塞は「エジプトとパレスチナシリアなどの東地中海沿岸地域を結ぶ幹線を防衛し、国境を固めるために築かれた一連の砦の一部」とされる。研究者たちの発掘調査により、長さ約105メートル、高さ2.5メートルの南側の壁の一部と11棟の塔、高さ2.2メートルの出入り口が見つかったほか、北西部の塔や北側および西側の壁の一部も発掘された。

城塞の西部からは、北から南へ兵舎を囲むように築かれた75メートルのジグザグの壁も見つかっている。これは、「新王国時代のエジプト建築が過酷な環境に適応する能力を備えていたことを物語る設計」だという。

また、第18王朝前期のものと見られる塔の下に埋まった礎石群や、トトメス1世(エジプト第18王朝の第3代ファラオ)の名が刻印された容器の一部なども出土。ギリシャの火山島のものと見られる火山岩のほか、大型のパン焼き窯と大量の化石化したパン生地も見つかったことから、研究者たちは「この城塞に駐留する兵士たちの生活の場だったことが裏付けられる」と考えている。

これまでの予備調査によると、この城塞では何度も修復、改修、再建築が行われ、南側の出入口の設計も複数回にわたって変更されていたことが分かっている。(翻訳:石井佳子)

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