ChatGPTで生成の「ディストピア絵画」が証拠の一つに。制作者をロサンゼルス山火事の放火容疑で逮捕

今年初めに発生し、大惨事となったアメリカロサンゼルスの山火事。そのうち高級住宅街パシフィック・パリセーズ地区での発生原因を調べていた当局が、当初の小さな火災を引き起こした放火容疑で29歳の男を逮捕した。証拠の1つとされたのは、チャットGPTで生成された「ディストピア絵画」の画像とプロンプト(指示)だった。

容疑者のジョナサン・リンダーネクトがチャットGPTで生成した画像。Photo: U.S. Attorney's Office for the Central District of California

10月8日、今年1月のロサンゼルスにおける大規模な山火事の1つを引き起こした容疑で、ジョナサン・リンダーネクトの逮捕が発表された。リンダーネクト容疑者は、高級住宅街のパシフィック・パリセーズ地区で、元日に小規模な火災を起こしたとされる。その残り火が、折りからの強風によって1月7日に再燃した可能性があると当局は見ている。

BBCの報道によると、当局はリンダーネクトの携帯電話で山火事への関与を疑わせる複数の記録を特定。たとえば、同容疑者はAIチャットボットのチャットGPTに、たばこが火災発生の原因になった場合、自分に責任はあるかと質問していた。捜査当局はこの行為を、「自分が消火活動に協力しようとした証拠を残そうと試みた」ものとしている。

また、同容疑者は昨年7月に、「貧困に苦しむ何十万人もの人々が、巨大なドル記号の掲げられた門を突破しようとしている」というプロンプト(指示)で、炎上する森や火災から逃げようとする群衆を描いた「ディストピア絵画」の生成をチャットGPTに依頼したとされている。その指示にはこんな記述もあった。

「門と壁の向こう側には、最も裕福な人々の集まりがある。彼らはくつろぎながら世界が燃え尽きるのを見物し、人々が苦しむのを見ている。笑い、楽しみ、踊っているのだ」

パシフィック・パリセーズ地区の山火事では12人が死亡し、6000棟を超える住宅が焼失した。リンダーネクトは放火による器物損壊罪で訴追されたが、今後、殺人罪を含む追加訴追の可能性もある。

なお、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館の一部で、パシフィック・パリセーズ地区にあるゲティ・ヴィラでも敷地内に飛び火したため、4カ月間にわたり施設を閉鎖。5月に再開している。

同地区で甚大な被害を被った住民には、アートコレクターのロン・リヴリンもいた。彼は自宅と、アンディ・ウォーホルキース・ヘリングダミアン・ハーストアレックス・カッツケニー・シャーフ、ジョン・バルデッサリなど、340点にのぼる美術作品を失ったという。リヴリンは悲惨な山火事の後、US版ARTnewsにこう語っている。

「突然、何かが爆発したように、隣家の炎が渦を巻いて我が家に流れ込んできました。私たちの家も燃えていると気づいたのは、隣の家が炎に包まれたのを見たときでした」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい