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奈良美智がロサンゼルス山火事チャリティコンサートに作品を提供。涙をためて前を見つめる少女像

奈良美智が、1月30日(日本時間1月31日)にロサンゼルスのインテュイット・ドームとKiaフォーラムで開催されたロサンゼルス山火事のチャリティコンサート「FireAid」のグッズと告知ポスターに作品を提供した。

奈良美智《Midnight Tears》(2023)を使った「FireAid」告知ポスター。©Yoshitomo Nara, Courtesy the Yoshitomo Nara Foundation

アメリカ・ロサンゼルスで1月30日(日本時間1月31日)開催のロサンゼルス山火事のチャリティコンサート「FireAid」のグッズと告知ポスターに、奈良美智が作品を提供した。コンサートは2会場あり、Kiaフォーラムは18時(日本時間31日11時)から、ロサンゼルスのインテュイット・ドームは19時半(同・12時半)にスタートした。

「FireAid」は、US版ARTnewsのトップ200コレクターにも名を連ねる音楽界の重鎮、アーヴィング・アゾフとシェリー夫妻が、ライブ・ネーションとLAクリッパーズと共同でプロデュースした。参加アーティストは、スティーヴィー・ワンダー、スティング、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、レディー・ガガビリー・アイリッシュ、ケイティ・ペリー、ジョニ・ミッチェルなど、驚くほど豪華だ。アゾフ夫妻は長年のファンである奈良美智の作品をコンサートを象徴するビジュアルに起用したいと考え、奈良が所属するギャラリー、ブラムの代表ティム・ブラムを通じて実現した。

奈良は音楽との関係が深いアーティストだ。作品制作時には常に音楽をかけていることで知られており、自身もバンド活動を行ってきた。数々のレコードやCDジャケットを手掛け、過去の展覧会では度々これまで聴いてきたレコードを展示している。また、2011年の東日本大震災では被災地支援プロジェクトに作品を提供したほか、19年にはシリア難民への支援キャンペーンにも参加し、難民キャンプを訪れている。今回使用された作品は《Midnight Tears》(2023)。2023年から翌年にかけて青森県立美術館で開催された展覧会「奈良美智: The Beginning Place ここから」で発表した絵画で、少女は目に涙をためているが、それでもじっと前を見つめている。

コンサートでは、同作や奈良のドローイングをフィーチャーしたポスターやTシャツ、パーカー、キャップ、トートバッグなどのグッズが製作された。グッズはウェブでも販売されており、コンサートのサイトによると、全ての収益はアネンバーグ財団の助言のもと分配され、「短期的な救援活動と、南カリフォルニアの将来の火災災害を防ぐための長期的な取り組み」に使われるという。チャリティーグッズの収益だけでは家を再建したり失われた景観を回復したりすることはできないが、文化と商業が時として共通の目的を見出せることを示す、有意義な試みだ。グッズは米国内のみ発送だが、同サイトでは寄付も受け付けている

現在、LAのブラムでは奈良の個展「My Imperfect Self」が開催中だ(3月22日まで)。同展では、奈良が東日本大震災の経験に強く影響を受け制作した新作のブロンズ彫刻シリーズと、《My Imperfect Self(不完全な自分)》と題された絵画やドローイングを展示している。なお、東京のブラムでも2月1日まで奈良の個展が行われている。(翻訳:編集部)

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