箱根・岡田美術館オーナー、74億円の弁護士費用捻出のため所蔵作品売却へ。北斎など125点が競売に
神奈川県・箱根にある私設美術館、岡田美術館の創設者である岡田和生は、カジノ王との訴訟にかかった弁護士費用5000万ドル(約74億円)を賄うため、コレクションの一部を売却する。11月22日に行われるサザビーズのオークションでは、彼のコレクションから葛飾北斎《神奈川沖浪裏》(1830-32)をはじめ125点が出品される。
神奈川県・箱根にある私設美術館、岡田美術館の創設者である岡田和生が、カジノ王スティーブ・ウィンとの訴訟にかかった弁護士費用5000万ドル(約74億円)を賄うために、所蔵作品の一部をサザビーズのオークションに出品する。
現在83歳の岡田和生は、パチスロ機で財を成し、東京に本社を置くユニバーサルエンターテインメント社の会長を務めた。美術品収集が趣味だった岡田は、1924年に廣田松繁と西山保により創設された日本橋の老舗古美術店「壺中居」と懇意となり、30年以上に渡って上質な古美術コレクションを築き上げた。
岡田美術館は、これらを展示するために2013年にオープンした。同館では、約80年ぶりに再発見された伊藤若冲による《孔雀鳳凰図》や約60年ぶりに見つかった喜多川歌麿の《深川の雪》をはじめ、日本・中国・韓国の古代から現代までの絵画や陶磁器など、常時約450点の美術品が展示されている。
11月22日にサザビーズ香港で行われるオークションでは、そんな貴重なコレクションから125点が出品される。

岡田は2002年、数十年来の友人であったカジノ王スティーブ・ウィンと共に、ラスベガスを拠点とするホテル・カジノ運営会社ウィン・リゾーツを共同で設立した。だが数年後には、アジア圏の公職者への収賄疑惑をめぐり両者の関係は悪化、互いを非難し合うようになった。そして2012年、岡田はウィン・リゾーツの副会長職を解任され、同社はユニバーサルエンターテインメントが保有していた20%の株式を割引価格で買い戻した。これに対しユニバーサル側が裁判で異議を申し立て、最終的に2018年に和解が成立。ウィンおよびウィン・リゾーツが26億ドル(約3844億円)を支払うことで決着した。
その後、岡田の代理人である法律事務所バーリット・ベックは5000万ドル(約74億円)の弁護士費用を請求したが、岡田は金額が不当だと主張。しかし仲裁裁判で同事務所が勝訴したため、岡田は支払い義務を負うことになった。
ニューヨーク・タイムズによれば、サザビーズの販売情報には、125点の出品作品は「香港の裁判所命令に基づき、オカダ・ファイン・アート・リミテッドの株式に対する裁判所指定の管財人の代理人によって委託された」と記されているという。これらの中には、葛飾北斎《神奈川沖浪裏》(1830-32)や、希少な乾隆帝時代の「八宝」花瓶、そして16世紀、室町時代の狩野元信による六曲一双屏風が含まれている。そのうち数点の作品は数億円で落札されると見込まれている。
中でも北斎の「富嶽三十六景」シリーズの1つである《神奈川沖浪裏》は、「世界で最も有名な日本の木版画」とも呼ばれている。だが、2020年に大英博物館の科学研究員キャプシーヌ・コレンバーグは、「《神奈川沖浪裏》には多くの刷りが存在し、唯一の『決定版』というものはありません」と語った。そして、《神奈川沖浪裏》は、大英博物館は3点、メトロポリタン美術館は4点、英国のメイドストーン博物館は1点を所蔵していると証言した。
サザビーズのアジア会長兼アジア美術部門の世界責任者であるニコラス・チョウは、出品作品についてのニューヨーク・タイムズの取材に対して、「私たちが今回のオークションで扱うのは、基本的に中国、日本、韓国にわたる3000年分の最高級の陶磁器、工芸品、絵画です。これはおそらく最高のコレクションの一つでしょう」と語った。
US版ARTnewsは岡田美術館にコメントを求めたが、「当館に所蔵されていない作品の状況についてはコメントできません」という返答だった。(翻訳:編集部)
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