サザビーズ・ロンドンで白熱の20分。フランシス・ベーコン作品が26億円超で落札、市場回復の兆し

10月17日に開催されたサザビーズ・ロンドンのコンテンポラリー・イブニング・オークションでフランシス・ベーコンの作品が高値で落札され、停滞気味だった現代アート市場の回復の兆しを印象づける結果となった。一方、前回より大幅に価格が下落した作品もあった。

Francis Bacon standing next to his Portrait of a Dwarf. Photo: Courtesy Sotheby's
自身の作品《Portrait of a Dwarf(小人の肖像)》の横に立つフランシス・ベーコン。Photo: Courtesy Sotheby's

10月17日(木)、サザビーズ・ロンドンでコンテンポラリー・アート・イブニングセールが開催された。このオークションのハイライトとなったのは、20分にわたり20件以上の応酬が繰り広げられた末、1310万ポンド(手数料込み、約26億5000万円)で落札されたフランシス・ベーコンの《Portrait of a Dwarf(小人の肖像)》だ。本作には、600万~900万(約12億1000万円〜18億2000万円)ポンドの予想額がつけられていたが、それを大きく上回る結果となった。

この落札価格は、2013年にニューヨークのクリスティーズで記録したベーコンの史上最高額(1億4240万ドル、約215億円)には及ばないものの、同作および直前に出品されたもう1点のベーコン作品がともに健闘したことで、市場の停滞ムードに一筋の光を差し込むものとなった。

モダン・アート部門のチェアマン兼責任者であるアレックス・ブランチジックが、「質を絞り込んだ高水準の構成」と自信を見せた同セールは、ベーコンの2点とロダンのブロンズ2点を含む個人コレクションを中心に展開された。ブランチジックは、「この時期に近代の作品を扱うのは珍しいですが、ロダンとベーコンは同じコレクションから来ています。両者の対話を提示することが戦略の一部でした」と語る。

約1時間で27ロットが出品された今回のセールでは3点が未成約となり、落札率は88.9%だった。総売上は4760万ポンド(約96億円)で、前年同時期(3760万ポンド=約76億円)から約26.5%の増加となり、2023年10月のイブニングセール(4570万ポンド=約92億5000万円)とほぼ同水準となった。

ベーコン作品が好調だった一方で、ロダンの2点はそれぞれ88万9000ポンド(約1億8000万円)と76万2000ポンド(約1億5000万円)で落札され、予想範囲内にとどまった。オークショニアを務めたサザビーズ・ロンドン現代美術部門シニア・ヴァイスプレジデントのトム・エディソンは各ロットで入札を促したが、前半戦では入札の伸び悩みも見られた。

セール序盤では、アメリカの作家、サー・サーパス(Ser Serpas)の作品が下限を下回り、同じくアメリカのエルナン・バス(Hernan Bas)の作品は手数料込みで下限をわずかに上回る結果となった。ニュージーランド出身でアメリカを拠点に活動するエマ・マッキンタイア(Emma McIntyre)は予想範囲の中間で落札された。

また、ジャン=ミシェル・バスキアの1982年作《Untitled (The Arm)》も予想450万~650万ポンド(約9億1000万円〜13億1000万円)の中間にあたる553万ポンド(約11億2000万円)で落札。アンディ・ウォーホルの《Four Pink Marilyns (Reversal Series)》(1986)も同様に、430万ポンド(約8億7000万円)で落札された。

最も熱気を帯びたのは、ロット23のアメリカの作家、ルーシー・ブル(Lucy Bull)の《9:59》(2021)だ。18万ポンド(約3600万円)から始まった入札は瞬く間に白熱し、最終的に100万ポンド(約2億円)で落札。手数料込みで126万ポンド(約2億5000万円)となり、作家にとって通算6番目、2024年9月にクリスティーズ香港で記録した《18:50》(2021)以来の高額落札となった。今回の結果は、直近のクリスティーズ香港で約60万4000ドル(約9000万円)で落札された(《8:50》(2020)を上回る。

サザビーズ・ロンドン現代美術部門のイブニングセール責任者、アントニア・ガードナーは、US版ARTnewsの取材に対し次のように語った。

「ルーシー・ブルの作品をめぐっては、特定のコレクターが強い情熱を見せる傾向があります。今回もその典型的な例でした。とはいえ、何が彼らを駆り立てるのかは容易には説明できません。今回の結果は私たちにとってもうれしい驚きでした」

その後、エディソンは残り4ロットをスムーズに進行。ドイツのネオ・ラオホ(Neo Rauch)の《Gegenlicht》(2000)は38万1000ポンド(約7700万円)で落札され、2015年のサザビーズ・ロンドンでの取引額(46万1000ポンド、約9300万円)を下回った。

最終ロットのリチャード・セラ《Elevational Weights, Vertical》(2010)は、31万ポンド(約6300万円)で落札(手数料込みで39万3700ポンド=約8000万円)。前回の取引(2017年、約73万ポンド=約1億5000万円)からは大幅に下落した。こうした損失を被った委託者も少なくないが、今の市場環境を考えれば「致し方なし」と言えるだろう。(翻訳:編集部)

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