デイヴィッド・ホックニーがiPadで描いた「春の訪れ」シリーズ、総額12億円で完売。予想最高額の2倍

デイヴィッド・ホックニーがiPadで描いた「The Arrival of Spring」シリーズ17点が、サザビーズ・ロンドンのオークションが開催したオークションに出品された。落札総額は予想最高価格を大きく上回り、ホックニーのプリント作品の落札記録が当日に3度更新された。

サザビーズで開催されたオークションには、17点のドローイングが出品された。Photo: Courtesy of Sotheby's
サザビーズで開催されたオークションには、17点のドローイングが出品された。Photo: Courtesy of Sotheby's

デイヴィッド・ホックニーがiPadで描いたドローイングシリーズ「The Arrival of Spring(春の訪れ)」の17点が、10月17日にサザビーズ・ロンドンで開催されたオークションに出品され、合計620万ポンド(約12億5500万円)で落札された。落札総額は予想最高価格の2倍以上に達し、同日中にホックニーのプリント作品における最高落札記録が3度更新されるという異例の事態に。最終的に76万2000ポンド(約1億5400万円)でハンマーが下された《The Arrival of Spring in Woldgate, East Yorkshire in 2011 – 19 February》(2011)が、従来記録の50万4000ポンド(現在の為替で約1億200万円)を上回る最高額を記録した。さらに出品作品のうち15点が、それぞれ自己最高額を更新している。

ホックニーのiPadドローイングがこれほどまとまって出品されるのは初。サザビーズによれば、出品作品の40%はアメリカのコレクターが落札し、全体の65%はオンライン入札によるものだったという。サザビーズ・ヨーロッパの版画部門を率いるイェシカ・マークスは、オークション結果について次のような声明を発表している。

「iPadで制作されたホックニーのドローイングはインパクトがあり、どれも高揚感を覚えるものばかりです。完売という結果は、ホックニーの作品が世界中のコレクターからいかに注目されているかを裏付けています。また、今回の結果を受け、これらの作品が芸術的創造性における基準を示していると同時に、彼の作品にはマーケットにおける不変の訴求力があることが証明されました」

マークスはさらに、世界各地のコレクターが激しく競り合った今回のオークションは、ホックニーの実験的アプローチが市場でも高く評価されている証左だと続けた。

今年の7月で88歳を迎えたホックニーは、2011年1月から「The Arrival of Spring」シリーズを制作し始めた。ウェスト・ヨークシャーのブラッドフォードで育ったホックニーは、学校の長期休暇をイースト・ヨークシャーで過ごしていた。幼少期から馴染みのあるウォルドゲートを制作の場に選び、当初はキャンバスに描くことを計画していたという。しかし、冬の寒さのなか長時間立ち続けて制作することに気が進まず、iPadでの制作に切り替えた。

ホックニーは同年1〜6月にかけてに94点の作品を制作したが、最終的に51点に絞り込んだ。このシリーズは、2012年にロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された回顧展で展示された。サザビーズは、今回落札された17点はそのなかでも特に完成度が高いと評している。

今回のオークション結果は、サザビーズ・ロンドンにとっても大きな成果となった。オークションハウスが過去6カ月間に販売した近現代美術の売上総額は2億4000万ポンド(約485億7000万円)に達しており、10月16日に開催された現代美術のイブニングセールでは、4710万ポンド(約95億3100万円)の売上を記録している。売上を牽引したのはフランシス・ベーコンの《Portrait of a Dwarf》(1975)で、予想最高落札価格を上回る1310万ポンド(約26億5100万円)で落札された。(翻訳:編集部)

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