次なる標的はゴッホの《ひまわり》。環境活動家らの抗議が過激化
芸術作品を標的にした抗議活動がエスカレートしている。今回ターゲットとなったのは、ゴッホの《ひまわり》。環境活動家2人が歴史的名作にトマトスープを投げつけた。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーで10月14日(現地時刻)、環境活動団体ジャスト・ストップ・オイルの活動家2人がゴッホの《ひまわり》にトマトスープを投げつけ、逮捕された。ナショナル・ギャラリーによると、額縁に軽度の損傷があったものの、絵画に傷はついていないという。
ジャスト・ストップ・オイルは、2人の活動家がハインツ社のものと思しきスープ缶を開けて中身を絵画に投げつけた後、自分たちの手に接着剤を塗布して壁に貼り付ける様子を捉えた動画をツイッターに投稿し、こう主張した。
「この美術館では、人間の創造性と才能が紹介されている。一方で、気候変動と貧困という危機に対して行動しない政府によって、私たちの遺産は破壊されている」
同団体はこうした抗議活動を定期的に行い、環境破壊に対する迅速な対応をイギリス政府に働きかけているが、芸術作品を傷つけないために接着剤で手を貼り付ける手法を採用してきた。これまで、イタリアやオーストラリアでも同様の抗議活動が行われている。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所有するゴッホの《ひまわり》は、言わずもがなポスト印象派の重要な作品。ゆえに、美術関係者に限らず異なる立場の人々が今回の抗議活動に遺憾の意を表し、世界各地で分裂が生じている。英「ガーディアン」紙の編集者アレックス・ニーダムは、「公共施設でのこのような行為は賢明とは言い難い。あの絵画は私たちみんなが所有しているものだ」とツイッターに投稿。また美術史家のルース・ミリントンは、「世界で最も愛されている絵画のひとつであるゴッホの《ひまわり》を攻撃しても、真の変革に必要な国民の支持は得られないだろう」とコメントした。
中には、この抗議行動の潜在的な影響力を誇張して語る人もいた。イギリスのEU離脱を支持し、ポリティカル・コレクトネスを批判している政治的コメディアンのアンドリュー・ドイルもそのひとり。曰くこの抗議は、「文明と人類の偉業の否定を表している」との見解だ。
また、エレン・ウォーカーを名乗るツイッターユーザーが、「石油産業に抗議するために、精神疾患により地域社会から疎外されたゴッホが描いたひまわりの絵を破壊する必要があったのか、理解に苦しむ」と主張すると、3,000件にも上る「いいね!」がついた。他方、ポップスターのケイティ・ペリーが子ども番組で突然スライムを投げつけられた動画を例に、「ゴッホは何をして気候変動を招いたのか」と嘲笑し、この抗議行動をミーム化しようとする者も現れた。
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年10月14日に掲載されました。元記事はこちら。