約900年前の「無傷の朝鮮青磁」87点が海底から出現! 韓国沖の「特殊な泥」が叶えた奇跡
2025年11月10日、韓国国立海洋文化財研究所(NRIMCH)は、韓国西海岸・泰安沖の海底から12世紀半ばに遡る87点の椀と杯を引き上げたと発表し、同日公開した。ところが、その保存状態があまりに完璧だったため、目にした人々の中には「本当に900年近く前のものなのか」と疑う声すらあがった。
2025年11月10日、韓国国立海洋文化財研究所(NRIMCH)は、韓国西海岸の海底で12世紀半ばに遡る87点の青磁の椀と杯を引き上げたと発表し、同日公開した。
ZME SCIENCEが伝えるところによると、発見地点は、今年新たに確認された沈没船「マド4号船」の周辺。船自体は朝鮮時代のものと考えられているが、積み荷として見つかった椀や杯は1150〜1175年頃の高麗時代に制作された青磁で、密に積み重ねられた状態で海底に眠っていた。研究チームを驚かせたのは、保存状態の良さだ。水で軽く洗っただけで、まるで窯出しされたばかりのような青緑の光沢が甦ったという。NRIMCHの水中発掘部門に所属する洪光煕は、「87点全てを無傷で回収し、保存率は事実上100%です」と語る。今回引き上げられた青磁を目にした者の中には「本当に900年近く前のものなのか」と疑問を呈する人がいたほどだった。
今回、これほど良好な状態で遺物が残された理由は2つある。ひとつは、泰安沖が古来より「難所」として知られ、潮流が激しく多くの船が沈んできたことだ。だが南部の諸州から首都へ穀物や陶磁器を運ぶ際、この海域を避けることはできなかった。もうひとつは、海底に厚く堆積する細粒で粘着性の高い泥の存在である。この泥がクッションの役割を果たし、海底への衝撃を和らげた。さらに重要なのは、泥の密閉性だ。泥は遺物を覆うことで、大敵である酸素を遮断する。もし、青磁が海水に晒されていたならば、釉薬中の鉄が酸化し、特有の美しい青緑色は茶色に変色していただろう。
洪光煕はさらに、当時の船で一般的だった省スペースのための「入れ子状の梱包」も保存に寄与したと指摘する。洪は、「陶磁器が重ねられると、内側の椀は外側の衝撃から守られます。亀裂の入ったものもありましたが、いずれも修復可能な状態でした」と説明する。
研究者たちが今、最も注目しているのは、陶磁器の輸送に欠かせなかった木札や竹札といった荷札の存在だ。そこには窯元名、輸送経路、責任者、税記録などが記され、当時の交易ネットワークや行政システムを読み解く鍵となる。洪は「私たちは遺物そのものだけでなく、それを取り巻く繋がりを再構築したいと考えています」と語る。
今回引き上げられた87点の青磁は現在、泰安郡の国立海洋文化財研究所およびソウルの国立古宮博物館で公開中だ。



