イギリスで鉄器時代のお宝800点超を発見。馬具に地中海サンゴの装飾など古代史に新たな光

イギリスのノース・ヨークシャー州メルソンビー近郊の畑で、800点を超える鉄器時代の遺物が見つかった。この種の発見としては最大規模かつ重要性が高く、イングランド北部と古代ローマの交易を示す遺物も出土している。

メルソンビー近郊での発掘調査の様子。Photo: Courtesy Durham University

イングランド北部のノース・ヨークシャー州メルソンビーで、前例のない規模の遺物が発掘された。約2000年前に埋められたと見られる800を超える出土品には、2つの大釜、3本の儀式用の槍、四輪馬車または二輪の戦車7台、少なくとも14頭分の精巧な馬具、手綱の切れ端、28個の鉄製タイヤなどが含まれている。

馬具の中には地中海産の赤いサンゴや色ガラスで装飾されているものもあり、ワイン作りに使われたらしい大釜の1つに施された装飾には、地中海世界の特徴と鉄器時代の特徴の両方が見られる。これらの遺物は、鉄器時代にイングランド北部に居住していた人々が、当時西ヨーロッパで勢力を拡大していたローマ帝国と交易していたことを示唆している。

メルソンビーの財宝と呼ばれる出土品は、金属探知機でこの地域を調べていたピーター・ヘッズによって発見され、2021年12月に当局へ通報。その後、ダラム大学の考古学研究者たちが、大英博物館の協力とヒストリック・イングランド(歴史的環境保護のための公的機関)による12万ポンド(現在の為替レートで約2300万円)の助成金を得て、2022年に遺跡の発掘を開始した。

3月25日にダラム大学が出した声明によると、メルソンビーの出土品は、イギリスにおけるこの種の発見としては最大級かつ重要性が非常に高く、グレートブリテン島北部の支配階層の富と地位、そしてこれまで知られていなかったヨーロッパ大陸との交易に新たな光を当てるものだという。

また、遺物は埋められる前に意図的に破壊され、埋葬用の火で焼かれたのではないかと考えられているが、遺骨は見つかっていない。こうした点について、ダラム大学のトム・ムーア考古学部長は声明で次のように述べている。

「これらの遺物をもともと所有していた人々は、おそらくイギリス全土、ヨーロッパ、さらには古代ローマの支配階級をつなぐネットワークの一部だったのでしょう。ここに見られる破壊された上流層の物品は、鉄器時代のイギリスでは稀有な規模です。それは、グレートブリテン島北部の支配階級が、南部と同様に強大な力を持っていたことを示しています」

ノース・ヨークシャー州のヨークシャー博物館は、これらの遺物を所蔵品に加えるため、募金を開始した。同館では3月25日から主な出土品を一般に向けて展示するが、略奪の懸念があるため発掘場所は公表されていない。(翻訳:石井佳子)

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