金属探知機愛好家が「歴史の空白」を掘り起こす! 模造金貨のジュエリーは権力の象徴?

イギリス・エセックス州サクステッドで金蔵探知機愛好家が金製のペンダントヘッドを発見した。研究者たちは、中世初期のものと思われるこの遺物が、ローマ帝国崩壊後の同州における支配階級の存在に新たな光を投げかけるものと注目している。

金属探知機愛好家が見つけた、中世初期のものと思われる金貨ペンダント。Photo: Courtesy Colchester and Ipswich Museum Services

イギリス・エセックス州サクステッドで、金属探知機愛好家が6世紀ごろに作られたと考えられる金製のコインをペンダントヘッドに仕立てた遺物を発見したとArkeonewsが伝えた。

コインは直径2センチというサイズながらも模様が精巧に彫られており、研究者たちが調査したところ、西暦565年から578年まで東ローマ皇帝を統治した皇帝ユスティヌス2世が発行した金貨を忠実に模造したものであることが分かった。表には兜をかぶり鎧を身に着けたユスティヌス2世の顔とラテン語の銘文「DN IVSTINVS PP AVG(我らが主ユスティヌス、永遠のアウグストゥス)」が彫られており、裏面には、王笏と十字架付きの球体を持って座る帝国の首都コンスタンティノープルの擬人像と、コンスタンティノープル造幣局を示す「CONOB」の印が記されていた。

注目すべきは金貨をペンダントとして吊り下げるための輪だ。これは 6世紀後半から7世紀初頭の吊り輪に特徴的な形状をしており、常に皇帝の肖像が表になるよう、金貨にはんだ付けされていた。裏面には相当な摩耗が見られたことから、持ち主は皇帝の肖像を誇示しながら肌身離さず身に着けていたことがうかがえる。

金属探知機愛好家が見つけた、中世初期のものと思われる金貨ペンダント。Photo: Courtesy Colchester and Ipswich Museum Services

調査にあたった歴史学者のロリ・ロジャーソンによると、これらの複製金貨はローマ帝国崩壊後いくつかの王国で「帝国と同等の権威を持っているという印象を与える」ために鋳造されていたという。エセックス州ではこの時代の文字情報が存在しておらず、この発見によりサクステッドに支配層がいたことが明らかになった。

ロジャーソンは、「金は本当に高品質で、エリート層の遺物で間違いありません。考古学や文化遺産に携わる人々にとって、この時代のエセックス州は情報が無く、本当に暗闇の中にあるのです。そのため、この発見は文字通り光を当てるものなのです」と発見を称えた。

ペンダントヘッドは検視官によって正式に宝物として認定された。その後は大英博物館の宝物評価委員会による査定後、地元の博物館などに購入の機会が与えられるが、サフロン・ウォルデン博物館が関心を示しているという。

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