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わずか12ミリ! コンピュータ断層撮影でローマ帝国時代のミニ南京錠の超精巧な内部構造が明らかに

2023年、ドイツで金属探知機愛好家が、1600年前のローマ帝国で作られたわずか1.2センチの超小型南京錠を発見。このほどその調査結果が発表され、精巧な内部構造が明らかになった。

ドイツで見つかったローマ帝国時代の南京錠。Photo: facebook/@Archaeology Magazine

金属探知機を使って遺物を探すことを趣味として楽しんでいたコンスタンティン・フリードは、2023年、ドイツ北西部のヴェストファーレン地方にある野原で黄金製の小さな南京錠を見つけた。その調査結果がこのほどウェストファーレン・リッペ地方協会(LWL)から発表され、考古学ディレクターのマイケル・リンドは、「これほどまでに小さな黄金の南京錠は過去に発見例がなく、ヨーロッパでは完全に唯一無二のものです」と評価した。LIVE SCIENCEが伝えた。

LWLは調査を開始してすぐに、この南京錠は3世紀と4世紀にローマ帝国の属州で作られた錠のミニチュア版であると特定した。シリンダーの大きさはわずか12ミリで、当時はそれに加えて鎖と鍵があったと考えられている。LWLの専門家が、X線よりも内部を細かく調査出来る3D中性子CT(コンピュータ断層撮影)を用いて調べたところ、シリンダーの内部は鉄で出来ており、バネ、ガイドレール、ボルト、ベースプレート、ピンが仕込まれていることが判明した。

LWLの研究チームが製作した南京錠の拡大複製。Photo: facebook/@Archaeology Magazine

南京錠には損傷の跡があり、リンドは、「誰かが明らかに錠をいじった形跡がありました。おそらく錠をこじ開けようとしたか、あるいは鍵穴の詰まりを取り除こうとしたのでしょう」と推測する。LWLの研究者たちは、これらの成果をもとに、真ちゅうと鋼鉄で南京錠の拡大複製を作った。南京錠は、宝石箱やチェストに施錠するために使用されていた可能性があるという。

今回の調査について、LWL文化局のバーバラ・リュショフ=パルツィンガー局長は声明で、「この発見は、ローマ時代の地方の鍛冶屋と金属加工業者の高い技術力を示しています。と同時に、ヴェストファーレン地方とローマ帝国との間で貿易が行われていたことを示唆しています」とコメントした。

しかし、このユニークな小さな錠がなぜ作られたのかについては、手がかりがつかめていない。これについてリンドは、「この鍵は唯一無二のものなのでしょうか。それとも、ほかに作られていたが、見つかっていないだけなのでしょうか。尽きない疑問について、私たちは引き続き調査を続けていきます」と話している。

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