皇帝ネロの大宮殿跡で、合成顔料「エジプシャンブルー」の塊が出土。「豊かな財力と高度な技術の証」
ローマ皇帝ネロ(37-68)が築いた大宮殿、ドムス・アウレアの遺跡で行われた最新の発掘調査で、壁画工房の跡を発見。そこにはさまざまな顔料が入った壺があり、希少な合成顔料エジプシャンブルーの2.3キログラムの塊も見つかった。
ローマ皇帝ネロが築いた大宮殿、ドムス・アウレアの遺跡で行われた最新の発掘調査で、工房跡を発見したとアートネットが伝えた。
ドムス・アウレア(黄金の家)は64年のローマ大火後にネロが建設した。最大150ヘクタールあるとも言われる敷地には、広大な公園と、大理石で作られた100以上の豪華な部屋で構成されている。
宮殿の内部にはギリシャや小アジア(トルコ共和国のアジア側の半島部)の彫刻が点在し、壁や天井には画家ファムルスによる色彩豊かなフレスコ画が描かれていた。だが宮殿は、ネロの死後何世紀にもわたって放棄され、地中に埋められた。時は過ぎ、16世紀にフレスコ画が描かれた空間が発見され、「グロッタ(洞窟)」と名付けられた。ラファエロやギルランダイオをはじめとする芸術家たちは、地中に開けられた穴を通ってグロッタに降り立ち、フレスコ画を創作の糧にしたという。
考古学者たちによる最新の調査で、宮殿の建設とフレスコ画制作に関連する工房が見つかった。工房には、石灰に水を加えて壁画の土台の漆喰を作ったり、顔料を加工したりしたと考えられる2つの流し台があり、イエローオーカー(黄土色)、赤土やレアルガーを含む赤など、様々な顔料が入ったアンフォラ(壺)も見つかった。
その中でも最も注目すべきは、エジプシャンブルーの顔料の塊だ。染料は通常、粉末や小さな球体の形で発見されることが多く、幅約15センチ、重さ2.3キロという大きな塊で見つかるのは珍しい。エジプシャンブルーは世界最古の合成顔料で、紀元前10年頃にローマの建築家ヴィトルヴィウスが出版した『De architectura』という本の中でその作り方が登場するが、詳細は分かっていない。石灰岩、シリカ、銅と炭酸ナトリウムを含む鉱物の混合物を加工した後、超高温で焼成して作られたと考えられており、現代の科学者たちはその組成に関する研究を進めている。古代ローマで同色は、人物の顔色を涼やかにしたり、瞳に光沢を与えたり、衣服のドレープを生み出すために使われていた。
この遺跡を管理するコロッセオ考古学公園によれば、宮殿のフレスコ画は、携わった巨匠たちが持つ専門的な技術や洗練されたセンスを物語っているという。同公園のアルフォンシーナ・ルッソ園長は声明で、「エジプシャンブルーの顔料の塊の発見は、宮殿の装飾には当時としては非常に高価な材料と高度な技術が使われており、職人たちが高い技術と創造性を持っていたことを裏付けるものです」と解説した。
エジプシャンブルーは、ラファエロの1512年の有名なフレスコ画《ガラテアの凱旋》、ジョヴァンニ・バッティスタ・ベンヴェヌートの1524年の絵画《聖マーガレット》などの作品に使われている。同公園は、記者発表の中で、「エジプシャンブルーを研究することで、宮殿を装飾した古代ローマ時代の画家たちと、16世紀にこの宮殿のフレスコ画に影響を受けた画家たちとの関係がより明確になるかもしれない」と話した。