伝統と革新が共存する、ローマの美術館・ギャラリー20選【MAP付き】
古代遺跡や世界的な美術館が建ち並ぶイタリア・ローマは、現代美術の街でもあった。ローマ市内にはイタリアを代表するギャラリーが多く存在し、この10年で新たなギャラリーも増えるなど、いまなおローマのアートシーンは盛り上がりを見せている。伝統と革新が共存するローマのアートシーンを知るための20の美術館やギャラリーをご紹介しよう。

- 1. MAXXI
- 2. MACRO
- 3. Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea
- 4. Palazzo Esposizioni Roma
- 5. Fondazione Pastificio Cerere
- 6. Villa Médicis
- 7. Galleria Lorcan O'Neill
- 8. GALLERIA CONTINUA
- 9. MONITOR
- 10. MAGAZZINO
- 11. Nomas Foundation
- 12. Fondazione Memmo
- 13. AlbumArte
- 14. Matèria
- 15. ERMES ERMES
- 16. Mattatoio
- 17. T293
- 18. z2o Sara Zanin
- 19. Libreria Marini
- 20. Leporello
バチカン美術館やボルゲーゼ美術館といった世界屈指の名門美術館で知られるローマでは、現代美術シーンも目覚ましい発展を遂げている。国立現代美術館の開館や工業遺産を活用した新興アートスペースの登場、数多くの実験的ギャラリーの台頭を通じ、ローマのアートシーンは伝統と革新が共存する場へと変貌を遂げた。建築的にも注目される現代美術館から気鋭のギャラリーまで、古代遺跡と最先端のアートが隣り合うローマのアートシーンを牽引する20の施設を紹介しよう。
1. MAXXI
MAXXIは2010年に開館した、イタリア初の国立現代美術館。建築家ザハ・ハディドが設計した曲線が絡まりあう独創的な建築で知られ、2010年に英国建築家協会スターリング賞も受賞している。アートとアーキテクチャの両分野を扱う同館は、MoMAと若手建築家を評価するプログラム「Young Architects Program」に取り組むなど、国際連携も活発だ。クリスチャン・ボルタンスキーやキキ・スミスなど国際的なアーティストの作品を多く収蔵しており、常にさまざまな展覧会が開催されている。
過去の展示
- Daido Moriyama with Shomei Tomatsu「TOKYO REVISITED」
- AALTO – Aino Alvar Elissa「The Human Dimension of Design」
2. MACRO
ビールの醸造所を改装した独創的な展示空間で知られる、ローマ市立の現代美術館。2018-2019年には実験的プロジェクト「MACRO Asilo」を実施し、15カ月間にわたり美術館をオープンラボとして開放する試みを行い注目された。同館はロンドンV&Aとの巡回展「ピンク・フロイド展」など国際的企画も開催し、館内リニューアルなど先進的取り組みがアートメディアでも多く報じられている。
過去の展示
- Lawrence Weiner「TRACCE / TRACES」
- Richard Serra「Animal habitats live and stuffed… Rome, La Salita, 1966」
3. Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea
1911年にチェーザレ・バッツァーニが設計した建物に収蔵される、イタリア最大の近現代美術館。約2万点の作品を所蔵し、19世紀から21世紀までイタリア美術の流れを包括的に紹介している。2016年には新館長の下、所蔵品を時代混交で展示する大胆な再構成「Time is Out of Joint」を実施し、大胆なキュレーションが話題に。コレクションにはアルテ・ポーヴェラからジャクソン・ポロックまでさまざまな作品が含まれ、エド・ルシェやカラ・ウォーカーなど国際的なアーティストの作品も収められている。
過去の展示
- 「The Time of Futurism」
- Mario Ceroli「Ceroli Totale」
4. Palazzo Esposizioni Roma
1883年の開館以来、ローマ中心部の巨大展示スペースとして機能する文化的ランドマーク。イタリア美術の動向を紹介するローマ・クアドリエンナーレ(4年毎の現代美術展)の主要会場であり、国内外から注目を集める国際的プラットフォームとなっている。最近ではイギリス人写真家のドン・マッカランによる展覧会を開催し、2019年のテート・ブリテン回顧展を拡充した史上最大規模の回顧展として話題を呼んだ。
過去の展示
- Boris Mikhailov「Ukrainian Diary」
- Mario Giacomelli「The photographer and the artist」
5. Fondazione Pastificio Cerere
1905年に建設された元パスタ工場を改装した非営利アートセンター。1970年代にアーティストの拠点として使われた歴史をもち、現在はアーティストやファッションデザイナーのアトリエ、グラフィックスタジオ、写真学校、美術アカデミーを併設している。若手アーティスト育成と教育プログラムに特に注力し、若手アーティスト向けの賞やレジデンシーを主催し、多数の受賞者を輩出している。
過去の展示
- Alba Zari「FEAR OF MIRRORS」
- Wang Yuxiang「THE SUN ALSO RISES」
6. Villa Médicis
1666年創設の伝統ある芸術アカデミーで、現在は広範なプログラムを展開する現代芸術センターでもある。350年以上にわたり、毎年フェローとして芸術・人文分野の若手才能を招聘し、多くの著名アーティストを輩出してきた。年間プログラムでは現代美術展や映画祭、コンサートなども開催し、歴史遺産とコンテンポラリーアートを融合した企画が特色となっている。
過去の展示
- 「CELESTIAL EPICS Art Brut in the Decharme collection」
- 「STONE STORIES 200 masterpieces by Guido Reni, Damien Hirst, Rodin and Picasso」
7. Galleria Lorcan O'Neill
2003年に開廊した現代アートギャラリー。国際的な著名アーティストからイタリアの才能ある新進アーティストまで幅広く紹介しており、絵画や彫刻、インスタレーションなど多様な作品を展示している。トレイシー・エミンやアンゼルム・キーファーなど、国際的アーティストを紹介し、ローマのアートシーン発展に貢献している。
過去の展示
- Anselm Kiefer「The Consciousness of Stones」
- Rachel Whiteread「New Works - Rome」
8. GALLERIA CONTINUA
トスカーナ州サンジミニャーノ発の国際ギャラリーとして、2020年にローマのザ・セント・レジス・ローマ内のサラ・ディオクレツィアーノに拠点を開設。アイ・ウェイウェイやアニッシュ・カプーア、ミケランジェロ・ピストレットなど、世界的作家を擁し、各国に支局を展開するグローバルギャラリーでもある。新興国の若手アーティストのためのレジデンシープログラムも展開。
過去の展示
- 杉本博司「Viaggio in Italia」
- JR「Ferita」
9. MONITOR
2003年にパオラ・カパタによって設立されたコンテンポラリーアートギャラリー。映像やインスタレーションなど実験的作品に焦点を当て、若手から中堅の国内外作家を積極的に紹介している。リスボンやペレートにもスペースを展開して国外展開を図り、アルテ・フィエラやアート・バーゼルにも参加。新進アーティストを国際舞台へ送り出している。
過去の展示
- Lucia Cantò「36°」
- Laurent Montaron「To Tell a Story」
10. MAGAZZINO
1997年の設立以来、現代美術分野における研究を支援・促進し、アーティストや批評家、キュレーターとのコラボレーションを展開。国内外の現代美術アーティストを扱い、写真・絵画・インスタレーションなど広範な展示で知られる。杉本博司など世界的アーティストの展覧会も開催し、若手と著名作家双方を擁するバランスのとれたプログラムを展開している。
過去の展示
11. Nomas Foundation
2008年設立の学際的・分野横断的な非営利アート研究センター。現代美術を装置として捉え、社会文化的、政治的、経済的、歴史的、科学的な美学について考察している。社会正義や経済平等、教育への平等なアクセス、持続可能な発展、資源への公平なアクセス、社会的流動性、市民参加を価値観として掲げており、包摂と参加の空間として機能している。
過去の展示
- Iris Nesher「MATERIA / MATTER」
- Alberto Timossi「Sirens」
12. Fondazione Memmo
1990年にローマの名門メンモ家によって設立された、ローマにおけるアートと文化の促進を目的としたギャラリー。2012年以降、現代美術シーンに特化した新しい展覧会プログラムを展開し、国際的・地域的機関との対話と協力を促進し、アーティストと街の相互作用を生み出そうとしている。また、イタリア人アーティストのためにロンドンでのレジデンシープログラムも運営している。
過去の展示
- 「The Library of the World | Conversation Piece Part IX」
- Wynnie Mynerva「Omen」
13. AlbumArte
2011年に設立されたインディペンデント系非営利アートセンター。ローマを拠点としながらイタリア国内外で活動し、現代美術の支援と促進に取り組んでいる。国際的なコラボレーションやトーク、ミーティングで際立った存在感を示し、新進アーティストから確立されたアーティストまで幅広いプログラムを展開している。ピアッツァ・デル・ポポロとヴィアーレ・ベッレ・アルティの間という好立地にあり、アートラバーにとって重要な拠点となっている。
過去の展示
- Lucia Tkáčová「Pain Chain」
- 「La forma solida del paesaggio」
14. Matèria
2015年に開廊した、写真・映像を中心に実験的展示を行う新興ギャラリーながら、ポルタ・サン・ロレンツォ地区で注目を集める存在。若い才能の発掘と新しい表現媒体の探求で評価され、ローマのみならず海外アートフェアにも参加。若手才能あるアーティストにスポットライトを当てるプロジェクトも積極的に展開し、多くのアーティストにとってギャラリーでの初展示の機会を提供している。
過去の展示
- Chen Xiaoyi「Spoken Leaves」
- Maïmouna Guerresi「La Création du Monde」
15. ERMES ERMES
バンキ・ヴェッキ通りに位置するERMES ERMESは、ローマの現代アートシーンで注目される実験的ギャラリー。2017年以降だけでも19のプロジェクトが記録されており、継続的に質の高い企画を発信している。マリーナ・クセノフォントスの個展「Safe Places」や、歴史的テーマを扱った「JEANNE LA PUCELLE」など、多様なアーティストの作品を紹介している。
過去の展示
16. Mattatoio
テスタッチョ地区に位置するMattatoioは、1888年から1891年に建設された旧食肉処理場を改装したアートセンターだ。巨大なホールと重厚な煉瓦造りの建築が特徴で、現在は大規模なインスタレーションやパフォーミングアーツの会場として使用されている。毎年開催されるARFフェスティバル(コミック・フェア)では、コミックやアニメーション関連の展示が行われ、幅広い層の来場者を集めている。
過去の展示
- Mohamed Keita「Porto Roma」
- Roger Ballen「Animalism」
17. T293
トラステヴェ地区のリペンセ通り6番地にあるT293は、2002年にナポリで設立されたギャラリーだ。Italicsのメンバーとして国際的なネットワークをもち、ワン・ペイの大型インスタレーション「The Deluge」やニエベス・ゴンザレスの作品など、現代作家の多様な表現を紹介している。ローマ・ギャラリー・ウィークエンドでは、イザベラ・デュクロの未公開作品を展示し話題となった。
過去の展示
- Simon Denny「Sandbox Landscapes」
- Nieves González「Also on view」
18. z2o Sara Zanin
2006年に設立したギャラリーで、当初はコロッセオ近くにあったが、2012年にローマ歴史地区の現在の場所に移転した。約12平方メートルという小さなスペースながら、新進作家から確立されたアーティストまで幅広く紹介している。関連プロジェクトz2o Projectも展開し、ギャラリー以外の場所でも活動を展開している。
過去の展示
19. Libreria Marini
ピニェート地区にある1993年創設の専門書店。アート、写真、デザイン、建築、文学の稀少本や絶版本を扱っている。20世紀の文学・アート書籍から最新のアーティスト・ジンまで幅広く取り揃えており、オリジナルアート作品による挿絵本やアーティストブックのコレクションも充実している。
20. Leporello
ピニェート地区にある写真集専門の書店。グラフィックデザイン、建築、イラスト、文学関連の書籍も扱っている。書店としての機能に加えて、展示会場やプロジェクトスペースとしても使用され、書籍と画像をテーマにした企画を定期的に開催している。Rome Art Weekにも参加し、写真出版を中心とした独自の活動を展開している。