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【MAP付き】香港の注目美術館&ギャラリー20選──東アジア・アートシーンの成熟と躍動を体感しよう!

台北ソウル、シンガポールなど、東アジア他都市のアートマーケットの成長著しい中にあっても、2013年に

アート・バーゼルが進出した香港はやはり特別だ。成熟し、次の局面を見せつつある香港アートシーンの現座地に迫るべく、ARTnews JAPANが注目する美術館やギャラリーを20軒ピックアップ。記事末尾のマップも参照しながら、香港の街を巡ってみよう。

Photo: Keith Tsuji/Getty Images

長年にわたって東アジアのアートシーンを支えてきたのは、間違いなく香港だ。近年は東京やソウルでも国際的なアートフェアの開催やグローバルギャラリーの進出は進んでいるが、いまなお香港はグローバルメガギャラリーの集積地として強い求心力をもっている。

もちろん、グローバルアートシーンとの接続のみならず、香港を拠点とするアーティストのサポートや写真・メディアアートなど多領域へ活動を展開するローカルギャラリーが数多く存在することも忘れてはならない。東アジアアートシーンの現在地を捉えるべく、ソウル台北に引き続き、ARTnews JAPANがおすすめする香港のギャラリーや美術館を20軒ピックアップ。末尾のギャラリーマップとともに、香港アートシーンの成熟と躍動を感じとってほしい。

1. M+

アジア初の世界的なビジュアル・カルチャー美術館として知られるM+は観光地としても圧倒的人気を誇る。6万5,000平米(東京ドーム約1.4個分)のスペースはアジア最大級の文化施設とも言われ、33の展示室に加えてミュージアムショップや図書館、レストラン、ビクトリア・ハーバーを一望できる屋上庭園などが備わっている。

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2. 香港芸術館

せっかく香港を訪れたならば、中華圏の美術にも触れたいもの。香港芸術館は中国の長い文化遺産に光を当てると同時に、地域アートの振興に力を注いでいる。1万平方メートルに及ぶ広大なコレクションには、新石器時代にさかのぼる中国の古美術や、独創的な芸術家の作品など、17,000点以上の作品が収蔵されている。

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3. 香港故宮文化博物館

北京や台湾に展開していることで知られる故宮博物院が、2022年に香港にも開館。故宮から厳選した914点の宝を収蔵品の核として、9つのギャラリーから構成されている。中国・紫禁城を模したとされる建築デザインにも注目だ。

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4. Axel Vervoordt Gallery

ベルギーの有名ギャラリー、アクセル・ヴェルヴォールトの海外初拠点。香港ではあまり知られていない、定評のあるアーティストと新進気鋭の近現代国際アーティストの両方を紹介することに重点を置いており、東洋と西洋の芸術表現の架け橋となっている。創業者のアクセル・ヴェルヴォールトが世界的に著名な現役インテリアデザイナーであり、ギャラリー空間のデザインも大きな魅力。

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5. PACE

言わずもがな、20世紀と21世紀の重要な国際的なアーティストを育成し展示する一流のギャラリーであるPACEは香港に2つの拠点を構えている。こちらは、有名ギャラリーが勢揃いする商業ビル「H Queen’s(エイチ・クイーンズ)」12階に居を構え、壁面の大きな窓と灰色の床が特徴的な空間に合わせたミニマルな展示が印象的だ。

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6. Hauser & Wirth

世界4大ギャラリーに数えられるハウザー&ワースは、「H Queen’s(エイチ・クイーンズ)」から、通りに面したガラス張りの開放的なスペースに移転。これまでロニ・ホーンラシッド・ジョンソンなどの有名アーティストの個展を開催してきたほか、80を超える講演、イベント、パフォーマンス、教育活動、学校訪問などを行なっている。

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7. David Zwirner

ニューヨークが本拠地のデヴィッド・ツヴィルナーのアジア初拠点。「H Queen’s(エイチ・クイーンズ)」の5、6階に位置する。 世界のトップアーティストの作品を紹介し続けており、革新的で独創的、そして先駆的な展覧会を企画している。

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8. Gagosian

近現代美術を専門とする世界的なギャラリー、ガゴシアンは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの19カ所に展示スペースをもつ。世界の重要アーティストの作品を多く取り扱っており、香港はアジア初拠点としてオープンして以来、ダミアン・ハーストや曽梵志らの大きな個展を開催している。ギャラリーが入居するペダー・ビルは長い歴史をもつ建物で、7階に位置するガゴシアンのほかにもギャラリーが入居している。

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9. PERROTIN

パリで生まれたペロタンは、東京も含めて6都市に拠点をもつ。ペロタン香港はJRKAWSなど若手アーティストの作品を扱うほか、日本人アーティストの個展も多く開催してきた実績がある。ギャラリーのある総合施設「K11 ATELIER Victoria Dockside」は「M+」や香港芸術館からのアクセスも良好。窓から見える港の景色と静かな空間でゆっくりと作品を楽しむことができる。

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10. White Cube

ロンドンを拠点とする世界的コンテンポラリーアートギャラリー、ホワイト・キューブの海外初となる拠点。 香港でも数多くのアート施設が集まっているセントラル地区にある2階建てのギャラリーは、天井が高く上品な空間となっている。展示室に加え、図書室やプライベート鑑賞室も併設している。

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11. Kwai Fung Hin

1991年に設立されたKwai Fung Hinは、東洋と西洋の芸術交流を推進してきた。2000年代に入ってからは出版社も設立し、リトグラフやカタログなどの制作・販売も精力的に行っている。アートフェアへの出展はもちろんのこと、近年はレクチャーイベントも数多く展開している。

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12. Kiang Malingue

中華圏・アジア圏のアーティストを中心に絵画や映像、インスタレーションなどコンテンポラリーな作品を多く扱うKiang Malingueは、2010年に設立。世界各国のアート・バーゼルフリーズにも出展しており、グローバルに活動を展開している。

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13. Blindspot Gallery

2010年に設立されたBlindspot Galleryは現代写真を中心に、さまざまなビジュアルアートを扱う現代美術ギャラリー。650平方メートルの展示スペースを活かして、多くの展覧会を開催している。主に香港と中国のアーティストにフォーカスしており、香港アートシーンの発展に貢献してきた。ほかのギャラリーと同じく、Blindspot Galleryもアート・バーゼルやフリーズなど国際的なアートフェアに数多く参加している。

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14. Blue Lotus Gallery

2007年に設立されたBlue Lotus Galleryは、写真をメインとして扱いながら香港の文化やアイデンティティを探求することに注力してきた。Fan HoやRomain Jacquet-Lagrèzeなど所属作家も香港の文化的アイデンティティを深く掘り下げる作品を発表してきたことで知られている。Hong Kong Art Book Fairにも参加し、写真集やプリント作品の制作にも積極的だ。

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15. Empty Gallery

2015年に設立された比較的新興ギャラリーのEmpty Galleryは、ホワイトキューブならぬ「ブラックキューブ」を特徴としている。没入型・インタラクティブな展示を数多く実施しており、パフォーマンスや音楽も含む多様なプログラムも展開している。既存の枠に囚われない作品への注力が、印象的な体験を生んでいる。

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16. Para Site

1996年に設立されたPara Siteは、アジア圏のアーティストから多くのリスペクトを集める独立系の非営利アートスペース。香港では最も古い独立系アート機関として知られており、展覧会から出版、イベント、教育プログラム、レジデンスプログラムなど多様な活動を展開している。

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17. ​​貫文空間/Koon Man Space

2024年にオープンした貫文空間/Koon Man Spaceは、ほかのアートギャラリーが集積するエリアから離れた川龍村を拠点とする写真に特化したアートスペース。60年以上前の廃校を改装してつくられており、地域の生態系や文化、歴史を探求する場として機能している。写真のワークショップや地域の文化研究を進めるプログラムも展開しており、地域とのつながりが大きな魅力と言える。

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  • Jon Burgerman「Family」(2024年)

18. ODD ONE OUT

ここからはいわゆる現代美術の領域に限らず活動を展開するギャラリーをご紹介しよう。ODD ONE OUTは、本記事で紹介しているほかのギャラリーとは異なり、イラストレーションやグラフィックアート、版画に特化したギャラリー。シルクスクリーンプリントや木版画などさまざまなプリント作品を展示・販売している。ギャラリー内にはカフェも併設されており、来場者は気軽にさまざまな作品を楽しめるようになっている。

19. 艺鵠/Art and Culture Outreach

艺鵠/Art and Culture Outreachは非営利のアート団体であり、富德樓(Foo Tak Building)と呼ばれるビルを拠点に、展示やレジデンスプログラムを提供するアートプラットフォームとして機能しているほか、書店も運営している。地域のアートシーンへフォーカスしており、よりオルタナティブ/インディペンデントなアートスペースやアーティストとのつながりが特徴だ。

20. THE SHOPHOUSE

THE SHOPHOUSEは、香港のクリエイティブエージェンシーUnveil Limitedによって設立されたギャラリー。現代美術作品を扱うだけでなく、プロダクトデザインやライフスタイルプロダクトも多く扱っているのが特徴と言える。1930年代に建てられた5階建てのビルを改装しており、当時の素材をそのまま活用した建築デザインも魅力的だ。

ARTnewsJAPANでは、本記事で紹介した美術館・ギャラリーをまとめたマップも公開している。ぜひ本記事を参考にしながら香港の街を歩いてみてほしい。

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