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【MAP付き】台北はアートも熱い! 観光の目的地に加えたい美術館・ギャラリー20選

新興アートフェア「Taipei Dangdai」や国際芸術祭「台北ビエンナーレ」が盛り上がりを見せ、東アジアのアートシーンのなかでも台北は独自のプレゼンスを発揮しつつある。そんな台北アートシーンの現座地に迫るべく、ARTnews JAPANが注目する美術館やギャラリー、アートブックストアを20軒ピックアップ。記事末尾のマップも参照しながら、台北の街を巡ってみてほしい。

Photo: TangChi Lee/Unsplash

東アジアのアートシーンといえば、アート・バーゼル開催地の一つである香港や、フリーズの進出先として注目の集まる韓国・ソウルを思い浮かべる人も多いかもしれないが、台北を忘れてはいけない。コロナ禍を経てTaipei Dangdaiや台北ビエンナーレが盛り上がりを見せ、東アジアのアートシーンを考えるうえでも見逃せない存在となっている。

以前から華山1914文化創意産業園区松山文創園区のような工場をリノベーションしたイベントスペースはアートのみならず台北のカルチャーを知れる人気の場所として知られているが、今回はARTnewsJAPAN編集部が独断と偏見で20の美術館・ギャラリーをピックアップ。国際交流も盛んな大型美術館からローカルなアーティストを支えるギャラリーまで、台北市内を巡りながらリアルな東アジアのアートシーンに触れてみてほしい。

1. 臺北市立美術館/Taipei Fine Arts Museum

台湾で最初の公立美術館であると同時に、アジア最大規模の現代美術館。台北ビエンナーレの会場としても知られている。台湾の作家を中心とした4,000点以上のコレクションからなる常設展のほか、企画展も常時開催されており、何度訪れても飽きることはない。美術館の位置する花博公園は、週末になるとファーマーズマーケットが開催され多くの人が集まっている。

過去の展示

2. 忠泰美術館/Jut Art Museum

台北の都市開発グループである忠泰建設の30周年を記念してつくられた美術館。「未来」と「都市」の問題に焦点を当てており、安藤忠雄や隈研吾など日本の有名建築家の個展も開催されている。日本人建築家の青木淳が手がけた室内空間は、こじんまりとしているものの洗練されていて、ゆっくりと台北の建築、文化、芸術を体験することができるだろう。

過去の展示

3. 富邦美術館/Fubon Art Museum

10年の構想を経て2024年5月にオープンしたばかりの新たな美術館。高層ビルやホテル、百貨店が立ち並ぶ華やかなエリアとして知られる信義地区の新たなランドマークとなっている。5階建ての建物は1階から3階が展示室で、大きな窓から日の光が入る開放感のある空間が印象的。国内外の新進気鋭のアーティストや大御所アーティストの作品が展示している。

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4. 台北当代芸術館/MOCA Taipei

日本統治時代に小学校の校舎として使われていた建物をリノベーションした、現代アート特化型の美術館。教室だった空間を使用しているため、小さく区切られた展示室が特徴的だ。常設展を設けず、2カ月ごとに企画展を入れ替えて開催している。国内外のアーティストらが集まる対話の場としても機能しており、講演会やワークショップなどを通じた交流イベントも積極的に開催。ローカルな視点も重視している。

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5. 也趣藝廊/AKI Gallery

古民家を改装した3階建ての温もりあるギャラリー。国外の芸術機関との協力関係や、国際的なアートイベントへの積極的な参加により、台湾の現代アートと世界のアート市場を繋ぐ架け橋となっている。2008年には「アジアで最も影響力のあるギャラリートップ10」のひとつとして数えられた実績も。須田悅弘や舟越桂といった日本のアーティストの展示が多いことでも知られている。

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6. 鳳甲美術館/Hong-gah Museum

1999年に開館した鳳甲美術館は2003年には文化省の地方文化博物館のひとつに認定されており、台北文化賞や台新芸術賞大賞も受賞するなど国内で高く評価されている。2008年に「Taiwan International Video Art Exhibition」を始動するなどビデオアートにフォーカスした展示や取り組みも盛んであり、現代美術の新たな動きを紹介するプラットフォームとしても機能している。

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7. 誠品畫廊/Eslite Gallery

松山文創園区のすぐ近くに位置する誠品畫廊は、日本にも進出していることで知られる台湾の大型書店チェーン「誠品書店」が運営するギャラリーだ。周囲には誠品グループのホテルや映画館も集まっており、観光の途中で立ち寄るのもいいだろう。国内のアートシーンをサポートしようとしており、国内アーティストとコレクターの所有する作品の展示を続けている。2009年にはアート・バーゼルに台湾のギャラリーとして初めて参加するなど、書店の“オマケ”ではなくギャラリーとしても堅実な活動を展開している。

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8. 台湾当代文化実験場/C-LAB

中華民国空軍総司令部の跡地をリノベーションしてつくられた、芸術、科学技術、社会開発を中心とした文化協力プラットフォーム。文化部の傘下にあり、台湾クリエイティブ・エキスポのメイン会場となるほか、国外の文化スペースと連携したプログラムを積極的に展開。日本の山口情報芸術センター(YCAM)とも交流を深めている。館内では、展示や公演、音楽イベント、教育講座が開催されており、市民との交流も積極的に行われている。

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9. 文心藝所/Winsing Art Place

ARTnewsの「TOP 200 COLLECTORS」にも掲載されている葉曉甄によって2019年に設立されたギャラリー。建築と都市をテーマにした人文書店とカフェを併設している。オーナーのコレクションを中心とした展示のほか、過去にはロニ・ホーンやナン・ゴールディンの展示が開催されている。ギャラリーの位置する内湖区は自然豊かなエリアとして知られ ハイキングコースとしても人気だ。

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10. TKG+

台湾の現代ギャラリーの開拓者である耿画廊/Tina Keng Galleryの新ブランドとなるTKG+は、より前衛的なアーティストへフォーカスした展示が特徴的。地下1階がTKG+、1階が耿画廊、2階がTKG+プロジェクトと3つのギャラリーがひとつの建物内で接続している。建物内の空間は余裕があり、地下の暗い空間を生かした大型の映像作品は見応えがある。国外のアートフェアにも多く出展しており、国際的に活躍するアーティストも在籍している。

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11. 安卓藝術/Mind Set Art Center

台湾やアジア圏はもちろんのこと、国際的なアーティストの作品も多く展示し現代美術のプラットフォームとも言えるギャラリー。広い通りに面したガラス張りの窓が特徴的な空間を生み出しており、独自のプログラムや共同プロジェクトの企画などアーティストの広報活動にも積極的。海外アーティストの台湾デビューの場としても注目されている。展示のみならず出版プロジェクトにも積極的で、展覧会カタログやアーティストアルバムなど、これまでに約40の出版物を制作している。

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12. 就在藝術空間/Project Fulfill Art Space

空間こそ小さいものの、気さくなスタッフと質の高い展示体験をつくっていることで地元の人々からも愛されるギャラリー。絵画からビデオ、サウンドアートまで幅広い表現を扱っている。若手アーティストの展示や前衛的な展示も開催しており、日本のアーティストとしては毛利悠子やChim↑Pom、CMTKなどが展示を行っている。

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13. 水谷芸術/Waley Art

万華区の市街地に立つ、台湾の若手のキュレーターとアーティストによるオルタナティブスペース。一戸建ての展示空間では、地上5階地下1階の各フロアに異なるスタイルの空間が広がっている。フロアの多い構造を生かして複数の企画展を同時に開催しており、各展示は1カ月程度で入れ替わるため、いつ訪れても新しい展示を楽しめるだろう。視覚芸術をベースにグラフィック、ビデオ、インスタレーション、パフォーマンス、彫刻などさまざまなジャンルの作品が展示されている。

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14. 亞紀畫廊/Each Modern

三階建の一戸建てを改装したシンプルなホワイトキューブながら、高低差のある空間が印象的。アジア圏のアーティストを紹介するとともに、新進気鋭の現代アーティストの展示にも力を入れている。過去には、20世紀で最も重要なアジア人アーティストのひとりである李元嘉や日本で開催された回顧展も記憶に新しい写真家の中平卓馬、日本を代表するもの派の作家、菅木志雄らの作品が展示されたことも。

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  • 荒木経惟、中平卓馬「沖縄」(2023年)

15. 本事藝術/Solid Art

本事藝術/Solid Artは2019年に設立された新興ギャラリーのひとつ。台湾と海外をつなぐ窓口となることを標榜しており、国内の作家が多く所属している。本記事で紹介している美術館やギャラリーとは異なり台北市内郊外の関渡に位置しており、閑静でゆったりとしたムードも特徴的。台北中心地の喧騒を離れてギャラリーを訪れてみるのもいいだろう。

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16. 立方計劃空間/TheCube Project Space

ヴェネチア・ビエンナーレの審査員を務めたこともあるキュレーターの鄭慧華が運営する立方計劃空間は、展示のみならずリサーチやイベントの開催も積極的に行っている。これまで100以上のレクチャーやパフォーマンスイベントを企画してきたほか、出版やオンラインラジオなど多面的に活動を展開。ソウル国立現代美術館やニューヨークのIndependent Curators Internationalなど、海外の美術館や機関とも積極的に連携を進めている。

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17. ​​DOPENESS ART LAB

台湾の現代美術家、Kea Tsaiが2009年に立ち上げたアートスペース。現代美術だけではなく“トレンディ”なストリートアートやグラフィックデザインを取り上げる展示も多く行っており、コロナ禍を経て2023年により大きなスペースへ移転したことで現地の若者たちが集まる場所にもなっている。Taipei Dangdaiなどアートフェアにも出展しており、台北のアートシーンに新たな風を吹き込んでいる。

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  • Jon Burgerman「Family」(2024年)

18. 朋丁/Pon Ding

せっかく台北を訪れたなら、美術館やギャラリーだけでなくアートブックストアも訪れたいもの。日本のメディアでもしばしば取り上げられる朋丁は、台北を代表するアートブックストアだ。1階は国内外の雑誌やアートブック、写真集、ZINEが並んでおり、2階にはカフェとギャラリースペースが展開されている。台北カルチャーの発信地として見逃せないスポットだ。

19. 田園城市生活風格書店/Garden City

台湾の出版社「田園城市文化事業」は、オフィスにカフェと書店とギャラリーが併設された空間を展開。地下がギャラリーになっており、新鋭アーティストによる展示を楽しめる。書店では自社で出版している建築関連の本を中心に、アート、人文学の書籍を扱っているほか、日本で厳選した古本も置かれている。ただの展示にとどまらず、書籍を中心としたコミュニティの育成を標榜している点が特長だ。

20. 荒花書店/Wild Flowers Bookstore

看板がなく静かな佇まいが特徴的で、都会の喧騒を感じさせないスペース。個性的なアートブックやZINEを置く書店で、店内に併設されたギャラリーでは国内外のインディペンデントクリエイターによる展示が開催されている。アーティストグッズも多く販売しており、多方面からクリエイターをサポートしている。昔の選書の名残で18歳未満は立ち入りが禁止されているほか、書店内の撮影も禁止されている。

ARTnewsJAPANでは、本記事で紹介した美術館・ギャラリーをまとめたマップも公開している。ぜひ本記事を参考にしながら台北の街を歩いてみてほしい。

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