ミケランジェロ傑作に観光客の「汗」が堆積──バチカン美術館《最後の審判》を約30年ぶりに洗浄
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バチカン美術館は2月28日、システィーナ礼拝堂のミケランジェロ作《最後の審判》(1536-1541)に付着した白い塩の被膜を除去する作業を報道陣に公開した。塩皮膜の原因は、日々押し寄せる観光客の「汗」だという。

2月28日、バチカン美術館はシスティーナ礼拝堂のミケランジェロによるフレスコ画《最後の審判》(1536-1541)に付着した塩の膜を取り除く作業を報道陣に公開した。AP通信が伝えた。
キリストの再臨と終末における人類の裁きを、縦約14メートル30センチ × 横約13メートルの壁一面に描いた本作は、ミケランジェロならではの劇的な構成と圧倒的な人体表現が際立つ傑作として知られ、いまもなお多くの観光客を引き寄せている。
壁画に付着した塩の由来は観光客の「汗」だ。修復作業員らの説明によれば、礼拝堂には毎日およそ2万5000人が訪れ、彼らの汗が蒸発して壁面で凝縮する。そして汗に含まれる乳酸がシスティーナ礼拝堂の壁や天井に含まれる炭酸カルシウムと反応し、白い被膜となって堆積してきたという。近年は観光客数が過去最高水準に達し、さらに気候変動によって都市の気温が上昇していることから、この塩の付着はいっそう加速している。
学芸員ファブリツィオ・ビフェラリはロンドン・タイムズ紙の取材に対し、とりわけ礼拝堂の祭壇背後に位置する《最後の審判》の壁面は、他の壁よりも温度が低いため結露が生じやすく、塩の膜が形成されやすいと説明した。ただし、この堆積物は蒸留水に浸した和紙で慎重に拭うことで比較的容易に除去できるという。清掃前後の違いは顕著で、フレスコ画中央のキリスト像では、除去後に色彩が鮮やかさを取り戻し、髪の毛や磔刑の傷も以前よりはるかに明瞭になっていた。
修復担当者らはまた、塩の被膜が再び形成されるのを防ぐため、来場者数を1日最大2万4000人に制限し、今後、湿度低減のため礼拝堂内に新たなろ過装置などを導入方針であると説明した。
システィーナ礼拝堂は1979年から1999年にかけて全面的な修復が行われ、何世紀にもわたり蓄積した煙や汚れ、蝋の堆積物が除去された。礼拝堂のミケランジェロ《アダムの創造》をはじめとする他のフレスコ画については、夜間に高所作業車を用いて毎年清掃が実施されている。一方、《最後の審判》は祭壇背後の壁面に位置し、祭壇が大理石の階段上に設けられているため作業車が使用できない。そのため、大規模修復以来、本格的な清掃は約30年ぶりとなる。
現在、《最後の審判》の前には足場が組まれ、10人から12人ほどの修復専門家チームが日々作業にあたっている。このため本物の壁画を直接鑑賞することはできないが、足場を覆うスクリーンには原寸大の同作がプリントされている。洗浄作業は4月初旬までに完了する見込みだ。

2. シモーネ・マルティーニ《受胎告知》(1333年)Photo: Uffizi Gallery
上部に華麗な彫刻が施され、金箔とテンペラで描かれたこの大作は、ルネサンスへの移行期における傑作の1つ。【作品の詳細はこちら】

3. パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い:ニッコロ・マウルジ・ダ・トレンティーノは、ベルナルディーノ・デラ・カルダを倒した》(1435-40年頃)Photo: Uffizi Gallery
1432年のサン・ロマーノ(ピサ)の戦いを描いた3連作の板絵の1枚。【作品の詳細はこちら】

4. ピエロ・デッラ・フランチェスカ《ウルビーノ公夫妻の肖像》(1473-75年)Photo: Uffizi Gallery
ルネサンス期の最も有名な肖像画の1つであり、傭兵隊長として活躍したフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公爵と、出産後に26歳で命を落としたその妻バッティスタ・スフォルツァを描いた作品。【作品の詳細はこちら】

5. ピエロ・デル・ポッライオーロ、サンドロ・ボッティチェリ《7つの美徳》(1469-72年)Photo: Uffizi Gallery
仮想の最高裁判所のようにも見える威風堂々たるこの連作絵画には、7つの美徳を擬人化した女性像が描かれている。【作品の詳細はこちら】

6. サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》(1485年)Photo: Uffizi Gallery
さまざまな雑貨に、この作品が印刷されているのを見たことがある人は多いに違いない。彼女はリーボックのスニーカーの売り上げに貢献し、著名アーティストのインスピレーションの源泉になってきた。【作品の詳細はこちら】

7. イノシシ(紀元前2-1世紀)Photo: Uffizi Gallery
このリアルなイノシシは、無名のローマ人彫刻家による大理石の彫刻で、ヘレニズム時代のブロンズ像を参考にしたものと考えられている。【作品の詳細はこちら】

9. ピエロ・ディ・コジモ《アンドロメダを救うペルセウス》(1510-15年)Photo: Uffizi Gallery
翼のあるサンダルを履いたペルセウスが空を飛び、尻尾の先がくるくる巻いた巨大な海の怪獣がアンドロメダを襲おうとする場面を描いている。【作品の詳細はこちら】

10. レオナルド・ダ・ヴィンチ《東方三博士の礼拝》(1482年)Photo: Uffizi Gallery
1481年にダ・ヴィンチは、フィレンツェ近郊のサン・ドナート教会に飾るための絵を、アウグスチノ会の修道士たちから依頼された。【作品の詳細はこちら】

13. ヘルマプロディートス(紀元2世紀)Photo: Uffizi Gallery
元前2世紀の古代ギリシャのブロンズ像をもとにしてローマ時代に作られたこの作品は、ギリシャのパロス島で採掘された大理石から彫られている。【作品の詳細はこちら】

14. エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン《自画像》(1790年)Photo: Uffizi Gallery
画家ルイ・ヴィジェの娘で、有名な画商ジャン=バティスト=ピエール・ルブランの妻だったエリザベートは、肖像画で成功を収めた作家だ。【作品の詳細はこちら】

15. パルミジャニーノ《長い首の聖母》(1534-40年)Photo: Uffizi Gallery
聖母の長い首と指、そして乳首とへそが見える薄布の衣服が描かれたこの絵には、典型的な聖母子像にはない官能性がある。【作品の詳細はこちら】

16. ポントルモ《エマオの晩餐》(1525年)Photo: Uffizi Gallery
ポントルモの《エマオの晩餐》は、復活したイエスが旅人に扮し、2人の弟子とともに食卓にいる様子を描いている。【作品の詳細はこちら】

17. ロッソ・フィオレンティーノ《エテロの娘たちを守るモーセ》(1523-27年)Photo: Uffizi Gallery
筋骨隆々の男たちが、カンバスから飛び出そうな勢いで前面に押し出されている混乱したシーンは、聖書の物語の一場面で、そこに登場するモーセが活劇のヒーローのように描かれている。【作品の詳細はこちら】

21. アルテミジア・ジェンティレスキ《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(1620年頃)Photo: Uffizi Gallery
この有名な物語は多くの画家が題材として取り上げているが、その中でも最も真に迫ったものの1つがこの作品だ。【作品の詳細はこちら】

22. ユストゥス・スステルマンス《Madonna “Domenica delle Cascine,” la Cecca di Pratolino, e Pietro Moro》(1634年)Photo: Uffizi Gallery
人物同士がやり取りをしている瞬間をカメラで捉えたかのように描写されている。【作品の詳細はこちら】






