「美術史の一部を書き換える」大発見も! バチカン美術館「ラファエロの間」全室の修復が完了
バチカン美術館は6月26日、「ラファエロの間」全4室の修復が完了したと発表。その修復中にラファエロの真筆が2点見つかったという大ニュースを伝えた。同館館長は「美術史上の重大な発見」と喜んでいる。

バチカン美術館は、10年に渡って「ラファエロの間」の全4室を修復してきた。そのうち最も重要と言われるコンスタンティヌスの間の修復が終わり、6月26日に一般公開された。
ラファエロの間は、ルネサンス期の著名な画家・建築家のラファエロ(1483-1520)が25歳だった1508年に、教皇ユリウス2世がバチカン宮殿内の私的居住空間の装飾を依頼したもので、ラファエロと弟子は計4室を1524年にかけて仕上げた。中でも最後に手掛けたコンスタンティヌスの間のフレスコ画は、1520年に37歳で死去したラファエロの弟子たちが描いたとされていた。
だがAP通信の報道によると、修復プロジェクトの過程で、専門家たちは同室の壁画の下にいくつもの釘を発見した。調べてみると、壁に釘を打ち込んで天然樹脂を塗った支持体が張られており、その上に油彩で2つの女性寓意像である「正義」と「友愛」が描かれていた。ラファエロは伝統的なフレスコ画よりも色鮮やかな油彩を好んでおり、また記録によると、ラファエロは弟子たちが油彩の技法を習得する前に亡くなったとされる。これらのことから、油彩の人物はラファエロ自身が描いたものと考えられ、亡くなる前にコンスタンティヌスの間の準備を始めていたという新たな証拠が浮上した。
これを受けて、バチカン美術館のバルバラ・ヤッタ館長はAP通信の取材に対し、「この修復により、私たちは美術史の一部を書き換えることになりました。私たちのカタログにラファエロ作品が2点追加されることになったのです」と喜びの声を伝えた。
修復にあたった同館の修復家ファビオ・ピアチェンティも、「歴史的、批評的観点から、そして技術的観点からも、これは真に発見です。コンスタンティヌスの間でラファエロが用いた技法は当時としては本当に実験的なものであり、油絵の具で制作された他のいかなる壁画においても見られません」と、今回の成果を評価している。(翻訳:編集部)
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