ミケランジェロは意図的に乳がんの女性を描いていた? 病理学者らが新説を発表
バチカン市国、システィーナ礼拝堂にあるミケランジェロのフレスコ画《大洪水》(1508-09)に、乳がんの女性が描かれている可能性があると研究者が発表した。
ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂に描いたルネサンス期の傑作と言われる天井画は、旧約聖書 の最初に収録されている『創世記』を題材にした9つの場面で主に構成されており、そのうちの1点《大洪水》(1508-09)には、洪水で死を宣告された人々が描かれている。
パリ・サクレー大学のラファエラ・ビアンチーニ率いるヨーロッパの研究者チームが同作を調査したところ、登場する女性の1人に乳がんの症状が描かれていることが分かったとEl Paisが伝えた。女性の右胸の乳首と乳房は変形しており、乳の付け根と脇部分が腫れている。これらは「乳がんの症状と一致する」と研究チームは結論付けた。
チームは、ミケランジェロが死体を解剖し、解剖学に関する図解付き論文の出版を構想した記録があることから、当時の人々の中では人体に関する高度な知識を持っていたと考えている。医療技術が発達していない当時、乳がんは死に直結する病だった。今回の研究の筆頭著者であるミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学の病理学者アンドレアス・ネルリッヒは、女性の乳の症状はミケランジェロが意図的に描いており、「(同作での)乳がんの表現は、生命の無常という概念と結びついている」と話す。そして、女性が地面を指さしているのは『創世記』の中の「あなたは塵であり、塵に帰らなければならない」という一節と関連していると説明した。
またネルリッヒは、ミケランジェロが乳がん患者を描いた例はこれだけではないと話す。フィレンツェのメディチ家礼拝堂にある彫刻作品の中の《夜の像》にも乳がんが表現されているという。この作品は、「避けられない死」という意味を持っている。
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