ミケランジェロのダヴィデ像が2カ月ぶりにキレイさっぱり! その清掃プロセスはまるで高級スパ
2023年にはアメリカの教育現場でポルノ論争が勃発したミケランジェロの傑作、ダヴィデ像。巨大な大理石の塊でできた5.1メートルを超えるこの像は、どのようにしてメンテナンスされているのだろう? 同作を所蔵するイタリア・フィレンツェのアカデミア美術館が、まるで高級スパの施術のような丁寧極まりないそのプロセスについて説明した。
イタリア・フィレンツェにあるアカデミア美術館は、ウフィツィ美術館に次いで訪問者数の多い美術館だ。昨年は、同館が所蔵するミケランジェロの傑作、ダヴィデ像やボッティチェリの《聖母子と少年聖ヨハネ、二人の天使》(1468年ごろ)といったイタリア美術の名作を目指して世界中から200万人以上がここを訪れた。
多くが訪れたことのある美術館とはいえ、ダヴィデ像の「入浴」ならぬ「清掃」の様子を見たことがある人は珍しいだろう。同館はこのほど、欧米メディアに向けて特別にダヴィデ像の掃除風景を公開し、セシリー・ホルバーグ館長が「終わりなき風呂掃除のよう」と喩えるそのプロセスについて説明した。
「どんなに隅々まで掃除をして完璧にキレイになった! と達成感に満たされるのも束の間、次の瞬間にはどこからともなく埃がやってきて、ダヴィデ像の完璧な体にまとわりつくのです」
巨大な大理石の塊でできているダヴィデ像は、当時まだ20代だったミケランジェロによって1501年から1504年にかけて制作された。そのシルクのような光沢は、少しでもメンテナンスを怠り埃が堆積すると失われてしまうのだという。そのため、ダヴィデ像の清掃はアカデミア美術館の専属保存修復家であるエレオノーラ・プッチによって、2カ月に一度、半日をかけて行われる。
白衣に白いヘルメット姿で掃除機を背負ったプッチは、5.1メートルもある象の周りに組み立てられた足場から身を乗り出し、様々なサイズのブラシや布を駆使しながら、完璧に引き締まったダヴィデ像の体を丁寧に掃除していく。中でも最も困難を極めるのは、ダヴィデ像のチャームポイントの一つと言えるカーリーなくせ毛部分だ。そこに絡まる埃やクモの巣をブラシで優しく払うと同時に掃除機で吸い取り、丁寧に取り除いていくのが難しいのだという。言うまでもなく、その全ての工程において掃除機が作品に触れることがあってはならない。ギリギリまで近づいて中に浮いた埃を素早く吸い込む作業には、当然のことながら細心の注意を払う必要がある。
汚れを取り除く前に写真を撮り、ダヴィデ像の「健康状態」をチェックするのもプッチの仕事だ。ガーディアン紙が報じたところによれば、ホルバーグ館長は「今のところダヴィデはいたって健康そのもの」と自信を見せているという。