o+hが語る、伊東豊雄「せんだいメディアテーク」【建築家たちの推し美術館 Vol.1】

建築家に一押しのアートスペースを聞く連載「建築家たちの推し美術館」。第1回で話を聞いたのは、建築ユニットo+hの大西麻貴と百田有希。第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2023年)の日本館展示キュレーターも務めたふたりが選んだのは、伊東豊雄設計による宮城県の複合施設、せんだいメディアテークだ。

Photo: Sendai Mediatheque

2026年に開館25周年を迎えるせんだいメディアテークは、私たちが建築学科に入った当初から、長きに渡って影響を受け続けている建築です。

伊東豊雄さん設計の建物は、光に満ちたワンルームの平面がチューブ状の柱によって緩やかに仕切られ、空き地のように自由で、使い手の想像力を喚起する場となっています。誰もが「ここにいていい」と感じられる寛容な場所が生まれているところが特に印象的です。

1階のオープンスクエア。建物全体は「チューブ」と呼ばれる13本の鉄骨独立シャフトと7枚の鉄骨フラットスラブで構成されている。Photo: Sendai Mediatheque
チューブは、ネットワークや空調などの設備配管・配線、エレベーター・階段など垂直動線を通すパイプとして機能している。Photo: Sendai Mediatheque
各階異なる平面計画を採用しているせんだいメディアテーク。2階はライブラリースペースだ。Photo: Sendai Mediatheque
3、4階は仙台市民図書館。Photo: Sendai Mediatheque
7階のスタジオスペース。Photo: Sendai Mediatheque
6階のギャラリースペース。Photo: Sendai Mediatheque

それは開かれた設計そのものの力であると同時に、25年間メディアテークを育ててきた運営メンバー、そしてこの場を使い続けてきた仙台市民の力も大きいと感じています。目的をあらかじめ定められた空間ではなく、余白がたくさんある点が寛容な場を生み出しているのでしょう。

せんだいメディアテークでは毎年、批評性の高い展示が企画されていて、6階のギャラリースペースはもちろん、7階のスタジオや1階のオープンスクエアなど、館内のあちこちを使って美術という分野から私たちの生き方や暮らし、価値観を問い直すたくさんの試みが実践されています。

大西麻貴+百田有希 / o+h|2008年から「大西麻貴+百田有希 / o+h」を共同主宰。公共建築から住宅、福祉施設やまちづくりまで、さまざまなプロジェクトに取り組む。主な作品にシェルターインクルーシブプレイス コパル(2022年)、熊本地震震災ミュージアムKIOKU(2023年)ほか。主な受賞に2023年日本建築学会賞作品賞、2024年度JIA日本建築大賞ほか。2025年11月30日(日)まで、せんだいメディアテークで「もうひとつの森 「なにもしない」からはじめるメディアテーク」を開催中。

せんだいメディアテーク
住所:宮城県仙台市青葉区春日町2-1
開館時間:11:00~22:00
休館日:第4木曜日
公式サイト:http://www.smt.jp

あわせて読みたい