「古代の貯金箱」が1700年前の集落跡から出土! 中には大量のコイン、計画的な貯蓄の痕跡も
- TEXT BY ARTNEWS JAPAN
フランス北東部スノン村の1700年前の集落跡で行われた発掘調査で、ローマ時代のコインが詰まった2つの壺が見つかった。コインの総数は4万枚を超えるとみられる。

フランス北東部スノン村の1700年前の集落跡で、国立予防考古学研究所(INRAP)のチームがローマ時代の大量のコインを収めた2個の壺を発掘したとLive Scienceが報じた。
これらの壺は、かつて住居の居間だった場所の床下に丁寧に埋められており、ワインやオリーブオイルの貯蔵に使われた「アンフォラ」と呼ばれる容器が使用されていた。INRAPの貨幣学者ヴィンセント・ジュヌヴィエーヴがLive Scienceに語ったところによれば、最初の壺には約38キロのコインが、2つ目の壺には約50キロのコインが入っており、合わせて4万枚を超える可能性があるという。さらに両者のそばには、かつてもう1つの壺が置かれていた跡も見つかったが、これは古代のうちに回収されたらしく、わずか3枚のコインだけが残されていた。

研究チームがコインを調査したところ、260年〜274年にローマ帝国から独立して存在したガリア帝国の支配者──ウィクトリヌス、テトリクス1世、テトリクス2世──の胸像が刻まれたものが含まれていた。これらの情報から、壺は280年〜310年頃に埋められたと考えられている。
今回の発見の重要性は、コインの数以上に、その埋蔵状況にある。INRAPが11月26日に発表した声明によると、アンフォラは居間内に慎重に掘られた穴に置かれ、壺の口は床面と同じ高さで、容易に出し入れできる状態だったという。また壺の縁には数枚のコインが付着しており、穴が堆積した土で完全に埋まる前にコインが投入されたことを示している。これは、非常時にまとめて埋められた財宝ではなく、日常的に少しずつ貯められた「貯金箱」のような役割だった可能性を強く示唆している。
さらに、この住居周辺からは床下暖房や地下室、ストーブ付き作業場を備えた石造建築物も見つかっている。そのことから、当時の住民が比較的豊かな生活水準であり、家庭内で計画的に貯蓄が行われていたことが伺える。
しかし4世紀初頭、スノンの集落は大火災に見舞われた。再建後も再び火災が発生し、集落は最終的に放棄された。今回見つかった大量のコインが火災の犠牲者の財産なのか、それとも何らかの事情で回収されないまま残されたのか──その理由は今も謎のままだ。
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