イタリア政府が「幻のカラヴァッジョ」を55億円で購入。「研究者や市民に開くため」1年かけて交渉

イタリア文化省が、「幻のカラヴァッジョ作品」として話題を呼んだ《マフェオ・バルベリーニの肖像》(1598)を3000万ユーロ(約55億円)で購入した。同政府による美術作品の取得額としては過去最大級とされる。

2024年12月5日、国立古典絵画館(バルベリーニ宮殿)で展示されるカラヴァッジョ《マフェオ・バルベリーニの肖像》(1598)。Photo: Roberto Serra - Iguana Press/Getty Images

イタリア文化省が、2024年に公に姿を現したカラヴァッジョによる肖像画《マフェオ・バルベリーニの肖像》(1598)を3000万ユーロ(約55億円)で購入したと報じられた。同省によれば、イタリア政府が美術作品に対して支払った金額としては過去最大級だという。

《マフェオ・バルベリーニの肖像》は、後に教皇ウルバヌス8世となるマフェオ・バルベリーニを描いた作品で、カラヴァッジョによる肖像画として確実に帰属されるわずか3点のうちの1点だ。1598年当時30歳だったバルベリーニは、華やかな緑色の聖職者のマントをまとい、右手を前に差し出して画面外の人物に命令を下している。こうした構図は、彼が後に権力の座へ上り詰めることを予示しているかのようだ。バルベリーニは1623年に教皇に選出され、1644年に死去するまでその地位にあり、芸術の庇護者としても知られる存在となった。

カラヴァッジョ《マフェオ・バルベリーニの肖像》(1598)Photo: Wikimedia Commons

この絵画は約300年にわたりバルベリーニ家に受け継がれ、1930年代に一族が所領を売却した際に初めて手放された。その後は長く個人コレクションに収められ、研究者の目に触れる機会はほとんどなかった。1960年代になり、イタリアの美術史家ロベルト・ロンギがこの肖像画をカラヴァッジョ作品として紹介する論文を発表したことで、作品の存在は広く知られるようになった。

それでも所在は長らく明らかにならず、作品は謎に包まれたままだった。しかし状況は2024年に大きく変わる。イタリア国立古典美術館群が、ローマのバルベリーニ家の歴史的邸宅である国立古典絵画館(バルベリーニ宮殿)で開催されたカラヴァッジョの大規模展に合わせ、この作品を短期貸与で確保したのだ。

展覧会に先立ち、イタリア文化省と国立古典美術館群は、この絵画を国家として購入する意向を明確にしていた。そして約1年にわたる交渉の末、取得に成功した。

イタリア文化大臣アレッサンドロ・ジュリは声明の中で、この作品を「並外れて重要な」作品であると評価。取得について、「このように重要な成果を達成するために、多大な力と献身をもって取り組んだ全ての機関、関係者、技術者に感謝したい」と述べた。

ジュリはまた、この購入が国家的に重要な美術作品が個人コレクションの中に埋もれてしまうのを防ぐ、より広範な取り組みの一環だと説明した。また、文化省は、「本来であれば個人市場に流れてしまう運命にある美術史上の傑作を、研究者や一般の美術愛好家がアクセスできるようにすること」を目的として、今後数カ月の間に同様の取得を「継続して追求する」方針を明かした。

《マフェオ・バルベリーニの肖像》は今後、国立古典絵画館(バルベリーニ宮殿)の常設コレクションに加えられ、同館が所蔵するカラヴァッジョ作品《ナルキッソス》(1597–99)や《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(1598–99)と並べて展示される予定だ。(翻訳:編集部)

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