イタリア政府が「幻のカラヴァッジョ」を55億円で購入。「研究者や市民に開くため」1年かけて交渉
- TEXT BY TESSA SOLOMON
イタリア文化省が、「幻のカラヴァッジョ作品」として話題を呼んだ《マフェオ・バルベリーニの肖像》(1598)を3000万ユーロ(約55億円)で購入した。同政府による美術作品の取得額としては過去最大級とされる。
イタリア文化省が、2024年に公に姿を現したカラヴァッジョによる肖像画《マフェオ・バルベリーニの肖像》(1598)を3000万ユーロ(約55億円)で購入したと報じられた。同省によれば、イタリア政府が美術作品に対して支払った金額としては過去最大級だという。
《マフェオ・バルベリーニの肖像》は、後に教皇ウルバヌス8世となるマフェオ・バルベリーニを描いた作品で、カラヴァッジョによる肖像画として確実に帰属されるわずか3点のうちの1点だ。1598年当時30歳だったバルベリーニは、華やかな緑色の聖職者のマントをまとい、右手を前に差し出して画面外の人物に命令を下している。こうした構図は、彼が後に権力の座へ上り詰めることを予示しているかのようだ。バルベリーニは1623年に教皇に選出され、1644年に死去するまでその地位にあり、芸術の庇護者としても知られる存在となった。

この絵画は約300年にわたりバルベリーニ家に受け継がれ、1930年代に一族が所領を売却した際に初めて手放された。その後は長く個人コレクションに収められ、研究者の目に触れる機会はほとんどなかった。1960年代になり、イタリアの美術史家ロベルト・ロンギがこの肖像画をカラヴァッジョ作品として紹介する論文を発表したことで、作品の存在は広く知られるようになった。
それでも所在は長らく明らかにならず、作品は謎に包まれたままだった。しかし状況は2024年に大きく変わる。イタリア国立古典美術館群が、ローマのバルベリーニ家の歴史的邸宅である国立古典絵画館(バルベリーニ宮殿)で開催されたカラヴァッジョの大規模展に合わせ、この作品を短期貸与で確保したのだ。
展覧会に先立ち、イタリア文化省と国立古典美術館群は、この絵画を国家として購入する意向を明確にしていた。そして約1年にわたる交渉の末、取得に成功した。
イタリア文化大臣アレッサンドロ・ジュリは声明の中で、この作品を「並外れて重要な」作品であると評価。取得について、「このように重要な成果を達成するために、多大な力と献身をもって取り組んだ全ての機関、関係者、技術者に感謝したい」と述べた。
ジュリはまた、この購入が国家的に重要な美術作品が個人コレクションの中に埋もれてしまうのを防ぐ、より広範な取り組みの一環だと説明した。また、文化省は、「本来であれば個人市場に流れてしまう運命にある美術史上の傑作を、研究者や一般の美術愛好家がアクセスできるようにすること」を目的として、今後数カ月の間に同様の取得を「継続して追求する」方針を明かした。
《マフェオ・バルベリーニの肖像》は今後、国立古典絵画館(バルベリーニ宮殿)の常設コレクションに加えられ、同館が所蔵するカラヴァッジョ作品《ナルキッソス》(1597–99)や《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(1598–99)と並べて展示される予定だ。(翻訳:編集部)
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2. シモーネ・マルティーニ《受胎告知》(1333年)Photo: Uffizi Gallery
上部に華麗な彫刻が施され、金箔とテンペラで描かれたこの大作は、ルネサンスへの移行期における傑作の1つ。【作品の詳細はこちら】

3. パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い:ニッコロ・マウルジ・ダ・トレンティーノは、ベルナルディーノ・デラ・カルダを倒した》(1435-40年頃)Photo: Uffizi Gallery
1432年のサン・ロマーノ(ピサ)の戦いを描いた3連作の板絵の1枚。【作品の詳細はこちら】

4. ピエロ・デッラ・フランチェスカ《ウルビーノ公夫妻の肖像》(1473-75年)Photo: Uffizi Gallery
ルネサンス期の最も有名な肖像画の1つであり、傭兵隊長として活躍したフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公爵と、出産後に26歳で命を落としたその妻バッティスタ・スフォルツァを描いた作品。【作品の詳細はこちら】

5. ピエロ・デル・ポッライオーロ、サンドロ・ボッティチェリ《7つの美徳》(1469-72年)Photo: Uffizi Gallery
仮想の最高裁判所のようにも見える威風堂々たるこの連作絵画には、7つの美徳を擬人化した女性像が描かれている。【作品の詳細はこちら】

6. サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》(1485年)Photo: Uffizi Gallery
さまざまな雑貨に、この作品が印刷されているのを見たことがある人は多いに違いない。彼女はリーボックのスニーカーの売り上げに貢献し、著名アーティストのインスピレーションの源泉になってきた。【作品の詳細はこちら】

7. イノシシ(紀元前2-1世紀)Photo: Uffizi Gallery
このリアルなイノシシは、無名のローマ人彫刻家による大理石の彫刻で、ヘレニズム時代のブロンズ像を参考にしたものと考えられている。【作品の詳細はこちら】

9. ピエロ・ディ・コジモ《アンドロメダを救うペルセウス》(1510-15年)Photo: Uffizi Gallery
翼のあるサンダルを履いたペルセウスが空を飛び、尻尾の先がくるくる巻いた巨大な海の怪獣がアンドロメダを襲おうとする場面を描いている。【作品の詳細はこちら】

10. レオナルド・ダ・ヴィンチ《東方三博士の礼拝》(1482年)Photo: Uffizi Gallery
1481年にダ・ヴィンチは、フィレンツェ近郊のサン・ドナート教会に飾るための絵を、アウグスチノ会の修道士たちから依頼された。【作品の詳細はこちら】

13. ヘルマプロディートス(紀元2世紀)Photo: Uffizi Gallery
元前2世紀の古代ギリシャのブロンズ像をもとにしてローマ時代に作られたこの作品は、ギリシャのパロス島で採掘された大理石から彫られている。【作品の詳細はこちら】

14. エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン《自画像》(1790年)Photo: Uffizi Gallery
画家ルイ・ヴィジェの娘で、有名な画商ジャン=バティスト=ピエール・ルブランの妻だったエリザベートは、肖像画で成功を収めた作家だ。【作品の詳細はこちら】

15. パルミジャニーノ《長い首の聖母》(1534-40年)Photo: Uffizi Gallery
聖母の長い首と指、そして乳首とへそが見える薄布の衣服が描かれたこの絵には、典型的な聖母子像にはない官能性がある。【作品の詳細はこちら】

16. ポントルモ《エマオの晩餐》(1525年)Photo: Uffizi Gallery
ポントルモの《エマオの晩餐》は、復活したイエスが旅人に扮し、2人の弟子とともに食卓にいる様子を描いている。【作品の詳細はこちら】

17. ロッソ・フィオレンティーノ《エテロの娘たちを守るモーセ》(1523-27年)Photo: Uffizi Gallery
筋骨隆々の男たちが、カンバスから飛び出そうな勢いで前面に押し出されている混乱したシーンは、聖書の物語の一場面で、そこに登場するモーセが活劇のヒーローのように描かれている。【作品の詳細はこちら】

21. アルテミジア・ジェンティレスキ《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(1620年頃)Photo: Uffizi Gallery
この有名な物語は多くの画家が題材として取り上げているが、その中でも最も真に迫ったものの1つがこの作品だ。【作品の詳細はこちら】

22. ユストゥス・スステルマンス《Madonna “Domenica delle Cascine,” la Cecca di Pratolino, e Pietro Moro》(1634年)Photo: Uffizi Gallery
人物同士がやり取りをしている瞬間をカメラで捉えたかのように描写されている。【作品の詳細はこちら】






