20年の修復を経て、古代エジプト・アメンホテプ3世の墓が再公開。早稲田大学の協力で壁画が鮮やかに蘇る
古代エジプトの墓地遺跡である王家の谷で、同地でも最大級のアメンホテプ3世の王墓が、長年の修復作業を経て一般公開を再開した。この保存修復作業には早稲田大学エジプト学研究所の調査チームが協力を行っている。

エジプト南部ルクソールのナイル川西岸に位置する岩窟墓群、王家の谷で最大級の墓の1つが10月4日に一般公開を再開した。それは、エジプト新王国第18王朝時代の紀元前14世紀に38年間在位したアメンホテプ3世の王墓で、約20年にわたる保存修復作業が続けられてきた。作業を監督したのは日本の早稲田大学の研究チームだ。
アメンホテプ3世の墓は、1799年にナポレオンの遠征隊に参加した2人のフランス人技師によって発見されたが、当時すでに墓は盗掘されていたという。その後、1900年代初頭に正式な発掘が始まった。早稲田大学は1971年からルクソールで発掘調査を開始し、74年にはアメンホテプ3世の儀式用彩色階段を発見している。
王家の谷の地下に長く伸びる通路は、アメンホテプ3世と、その2人の妻それぞれの埋葬室に続く。長さ36メートル、深さ14メートルの傾斜した通路から始まる墓の壁には、ファラオの姿と古代エジプトの神々が描かれている。修復され、鮮やかな色彩を取り戻したこの壁画によって、見学者は緻密な絵の細部を見ることができるようになった。
アメンホテプ3世のミイラは古代の司祭たちによって、やはり王家の谷にある祖父アメンホテプ2世の墓へ移されていた。現在は、カイロのエジプト国立文明博物館が収蔵している。また、公開再開の式典でAP通信がエジプト考古最高評議会の事務局長に取材したところによると、アメンホテプ3世の墓は王家の谷にある他の古代墓とは異なり、埋葬室が装飾で覆われてはいなかったが、盗まれた石棺の枠が残されていたという。
修復された墓の一般公開再開は、待ちに待ったカイロの大エジプト博物館のグランドオープンを1カ月後に控えた時期に行われた。10万点以上の遺物を収蔵する同博物館は1992年に計画が発表され、2002年に建設が始まった。昨年10月には12室の部分公開が始まり、今年7月に全面開館の予定だったが、新たな開館式の日程は11月1日とされている。
新しい大エジプト博物館を訪れるのなら、約600キロ南のルクソールまで足を伸ばし、王家の谷で約20年ぶりに目にすることができるようになった王墓の見学も加えてはどうだろう。(翻訳:石井佳子)
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