今週末に見たいアートイベントTOP5:アンディ・ウォーホルの「ポートレート」にフォーカス、山城知佳子と志賀理江子が創出する「漂着地」
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語(東京ステーションギャラリー)
世界を魅了したインド更紗の歴史を紐解く
天然素材の茜と藍を巧みに用いて、染織の難しい木綿布を色鮮やかに染め上げて作られるインド生まれの更紗は、数千年の歴史の中で、衣服や宗教儀式、室内装飾などさまざまな用途に使われてきた。更紗の伸びやかで濃密な文様と染色の驚異的な堅牢性は世界中の人々を魅了し、主要な交易品として1世紀には東南アジアやアフリカへと渡り、17世紀にはヨーロッパ各国で相次いだ東インド会社の設立に伴い世界中へと輸出されていった。
本展は、世界屈指の更紗コレクターであるカルン・タカールのコレクションを日本初公開する。インド国内向けに作られた最長約8メートルの完全な形で残る更紗の優品や、アジアとヨーロッパとの交易で生み出されたデザインを伝える掛布や服飾品するほか、国内の貴重なコレクションも交えて日本での展開を伝える。
カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語
会期:9月13日(土)〜11月9日(日)
場所:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
時間:10:00〜18:00(金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(10月13日、11月3日を除く)10月14日
2. 永井天陽、川谷光平「The Garden」(parcel)
2人の気鋭作家が創り出す「庭」
アクリル材や剥製、既製品など多様な素材を用い、人々が無意識のうちに抱く感覚や認識を問い直す彫刻作品を制作する永井天陽と、被写体との近い距離感と鮮やかな色彩感覚を特徴とする写真作品を発表してきた川谷光平。2人は今回、意図せずしてノスタルジーを感じさせる、どこか懐かしさを帯びたモチーフに着目し、新作を制作した。いずれも「庭」にまつわるイメージを出発点としており、その視覚的印象は可愛らしさや美しさをまといながらも、現代社会や文化のあり方をめぐる静かなアイロニーが潜んでいる。
本展のタイトルは、両作家が共通して用いた庭のモチーフに由来すると同時に、庭という空間が孕む多様な意味層にも着目している。庭は人の手によって形づくられる人工的な自然でありながら、そこに立つ者の視線や経験によって異なる風景を立ち上がらせる可変的な場でもある。本展は、その装置性を通じて、鑑賞者に自らの視線の軌跡を辿らせ、多様な読み解きと想像の余地を生成することを企図している。
永井天陽、川谷光平「The Garden」
会期:9月20日(土)〜10月19日(日)
場所:parcel(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-14 まるかビル2F)
時間:14:00〜19:00
休館日:月火祝
3. 八木良太、マルト・アルディ「Behind itself」(無人島プロダクション)
日本とインドネシアの2作家による視点の交差
「見る」「聴く」といった、私たちの制限的な知覚システムあるいは態度に対する批判的思考をベースに作品制作を行う八木良太と、大量生産されるものの美学に関心を持ち、既製品とアッサンブラージュを駆使して実用性と機能の存在論的本質に迫る複雑な語彙を構築するインドネシアのコンセプチュアルアーティスト、マルト・アルディによる2人展。
2人は2024年春に開催された「温泉大作戦 The Final!!」で、無人島プロダクションとジャカルタのギャラリー、ROHの展示で出会う。無人島プロダクションとROHはその時の2人の化学反応に興味を惹かれ、今年から来年にかけて東京(無人島プロダクション)、京都(Art Collaboration Kyoto 2025)、ジャカルタ(ROH、2026年開催予定)の3カ所で展覧会を行うことにした。その第1弾となる本展は、立体、平面、映像など多様な表現を通して、2人の思考や視点の交差を感じられるものになる。
八木良太、マルト・アルディ「Behind itself」
会期:9月27日(土)〜11月9日(日)
場所:無人島プロダクション(東京都墨田区江東橋5-10-5)
時間:水~金 13:00〜19:00( 土日は 12:00〜18:00)
休館日:月火祝
4. アンディ·ウォーホル展「SERIAL PORTRAITS - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」(エスパス ルイ・ヴィトン東京)
初期から晩年までの探求の軌跡を辿る
ポップ・アートの旗手、アンディ・ウォーホル(1928-1987)。フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを東京、ミュンヘン、ヴェネチア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンで公開する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として開催される本展は、「ポートレート」をテーマに、ウォーホルの名作から知られざる作品まで厳選して紹介する。
冒頭を飾るのは、1950年代にボールペンで描かれた若い男性のドローイングだ。ほとんど公開されることがないこれらの作品は、彼が初期に手掛けていた広告イラストに見られた、表現豊かで個性が色濃く出たスタイルを伺い知ることができる。そのほか、私的なスケッチ《Unidentified Male》や、亡くなる前年に「フライト・ウィッグ(恐怖のかつら)」の名で親しまれる乱れ髪のかつらを被って証明写真機で撮った写真、そして工業的な手法を制作に取り入れるための研究を続けた集大成とも言える1980年代の《Ten Portraits of Jews of the Twentieth Century》など、初期から晩年まで一貫した探求の軌跡を辿る。
アンディ·ウォーホル展「SERIAL PORTRAITS - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」
会期:10月2日(木)〜2026年2月15日(日)
場所:エスパス ルイ・ヴィトン東京(東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7F)
時間:12:00〜20:00(11月5日は22:00まで)
休館日:ルイ・ヴィトン 表参道店に準じる
5. ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着(アーティゾン美術館)
土地の記憶を見つめる2作家による展覧会
写真、ビデオ、パフォーマンスを駆使し、生まれ育った沖縄の歴史、政治、文化を視覚的に探求する山城知佳子と、愛知県に生まれ、2008年に宮城県に移住。その地に暮らす人々と出会いながら、人間社会と自然の関わり、何代にもわたる記憶といった題材をもとに制作を続ける志賀理江子。本展は、世界のアートシーンで注目される2人の作家が石橋財団コレクションから作品を選定し、彼女らの作品と組み合わせることによって既存の文脈を拡張し、コレクションの多層的な読み解きを促す。
展示室では、記憶、災害、移動、再生といったテーマで制作された2人の作品が、同館のコレクション作品と交差する。展覧会の空間全体が、ひとつの「漂着地」として機能して時間、場所、身体、記憶が交錯し、観る者の感覚と記憶にも波紋を広げるような体験を与える。「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 安井曾太郎」が同時開催。
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着
会期:10月11日(土)〜2026年1月12日(月祝)
場所:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
時間:10:00〜18:00(金曜は20:00まで)
休館日:月曜日(10月13日、11月3日、24日、1月12日を除く)10月14日、11月4日、25日、12月28日〜1月3日