今週末に見たいアートイベントTOP5:「モード」から見つめるアール・デコ、ブラジルの巨匠と現代作家展が同時開催
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に(三菱一号館美術館)
「アール・デコ」を服飾面から見つめる
1920年代を中心に世界を席巻した装飾様式「アール・デコ」。生活デザイン全般におよんだ同様式は、「モード」、すなわち流行の服飾にも現れた。ポワレ、ランバン、シャネルなどパリ屈指のメゾンは、モダンで幾何学的なデザインや幅広のシルエット、直線的な装飾を駆使した。これは当時としては斬新かつ現代的なスタイルで、古い慣習から解放され、活動的で自由な女性たちが好んだ。
パリで開催されたアール・デコ博覧会から100年目の記念の年に開催される本展は、世界屈指のファッションアーカイブである京都服飾文化研究財団(KCI)のコレクションから約200点の衣裳作品と資料類を展示する。また、国内外の美術館・博物館や個人所蔵の絵画、版画、工芸品なども加えた合計約310点で、現代にも影響を与え続ける100年前のモードを紐解く。
アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に
会期:10月11日(土)〜2026年1月25日(日)
場所:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
時間:10:00〜18:00(1月2日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜は20:00まで、入館は30分前まで)
休館日:月曜(祝日・振替休日、11月24日、12月29日、1月19日を除く)12月31日、1月1日
2. スーザン・フィリップス「Shine on Me」(太宰府天満宮)
太宰府の文化と歴史に触発された新作を発表
1965年イギリス・グラスゴー生まれ、ベルリンを拠点に活動するスーザン・フィリップスは、歴史や記憶を宿す土地や公共空間において、人と場所を音で繋ぐサウンドインスタレーションを制作してきた。2024年から2度にわたり太宰府を訪れた彼女は、1100年を超えて信仰と文化を育んできた太宰府天満宮の森、神事、そして御祭神・菅原道真公の生涯と詩歌に触発された新作を制作した。
境内の森に常設される《The Trees Listen》は、8つの法螺貝の音を用いた作品だ。森や風のイメージを響かせながら、道真公が左遷の地で詩を詠んだ心境とも重なり、音と沈黙が織りなす気配を感じさせる。宝物殿に展示される《Shine on Me》は、「サウンドミラー」として知られる初期の音響探知装置に着想を得た作品。3つのパラボラ状の鏡が宙に浮かぶように吊り下げられ、回転しながら、太宰府天満宮の七夕祭に取材した音の断片を響かせる。
スーザン・フィリップス「Shine on Me」
会期:10月19日(日)〜2026年5月10日(日)
場所:太宰府天満宮宝物殿(福岡県太宰府市宰府4-7-1)
時間:9:00〜16:30(入場は30分前まで)
休館日:月曜(11月24日、1月5日・12日、2月23日、5月4日を除く)2月3日・4日
3. マリーナ・ペレス・シマオとトミエ・オオタケ(Pace ギャラリー)
抽象が紡ぐ、2つのブラジルの風景
ブラジルを拠点とする画家マリーナ・ペレス・シマオと、同国を代表する抽象の巨匠トミエ・オオタケによる2つの展覧会を同時開催する。1980年ブラジル・ヴィトーリア生まれのシマオは、パリの国立高等美術学校で学び、色彩と感情を詩的に結びつける絵画で注目を集めてきた。本展は、日本初公開となる新作シリーズを発表。藍を基調に赤やピンクを重ねた色彩は、日本の藍染文化への敬意を込めながら、風景と記憶、外界と内的世界の境界を曖昧にする。複数の地平線が揺らめくような構図は様々なスケールで描かれ、新たな視点で風景を体験することを促す。
1913年京都生まれのオオタケは、1936年にブラジルへ渡り、同国のモダニズムに新たな地平を切り開いた。絵画から彫刻まで多様なメディアを横断し、有機的なフォルムと幾何学的な構成を融合させたその表現は、形式な厳密さを追求しながら、偶然性や驚きの要素を作品に込める。また、地質学的・宇宙論的な現象やブラジルの広⼤な⾃然⾵景や地形を、有機的なフォルムと構造的な幾何学を組み合わせながら描く。今回展示される絵画と彫刻の数々は、彼女の創造の軌跡と、光や空間に対する独自の感受性を伝えるものだ。
マリーナ・ペレス・シマオとトミエ・オオタケ
会期:11月4日(火)〜2026年2月11日(水)
場所:Pace ギャラリー(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA 1-2F)
時間:11:00〜20:00(日曜は18:00〜20:00、それ以外は19:00〜20:00でアポイントメント制)
休館日:月
4. レイチェル・タラヴェキア「Heaven Sent」(セイソン&ベネティエール)
夢と記憶の迷宮に変わる、郊外の家
アメリカ人アーティスト、レイチェル・タラヴェキアによる日本初の個展。安らぎの象徴である「郊外の家」を、記憶・空想・感情が交錯する超現実的な舞台へと変貌させる作品を展開する。ホラー映画、アニメ、ビデオゲーム、そしてミッドセンチュリー・デザインから着想を得て、日常的な家庭空間を心理的変容の場として再構築している。
タラヴェキアの創作の核には「Worldbuilding(架空の世界を構築すること)」がある。3人の兄の中で育った彼女は、ジェンダーによる経験の違いに敏感であり、その緊張感が作品全体に通底している。『ファイナルファンタジー』『大神』『キングダムハーツ』といったビデオゲームが彼女にとっての初期の逃避と変容の手段であったと語り、作品の中にも宙に浮かぶ武器やアイコン、力の象徴など、ゲーム的モチーフが繰り返し登場する。本展の作品群は、聖なるものと俗なるもののあいだを行き来し、家の内部が迷宮的に変化するにつれ、空間は夢のような変容の舞台へと進化していく。
レイチェル・タラヴェキア「Heaven Sent」
会期:11月7日(金)〜12月27日(土)
場所:セイソン&ベネティエール(東京都中央区銀座5-12-6 Cura Ginza 8F)
時間:11:00〜19:00
休館日:日月祝
5. ジャン・ジュリアン「PURPLE PONY」(PARCO MUSEUM TOKYO)
現実とフィクションが交差する日本の日常
イラストレーション、絵画、彫刻、インスタレーション、写真、映像、書籍、衣類、デザインオブジェなど、ジャンルや形式を横断する幅広い表現で知られるフランス人アーティスト、ジャン・ジュリアンによる新作個展。ジュリアンは2008年にロンドンのセントラル・セント・マーチンズを卒業後、2010年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号を取得。2011年には弟のニコラ・ジュリアンとともに映像制作ユニット「Jullien Brothers」を設立した。
ジュリアンは、現在は一時的に東京を拠点として制作を行っており、本展は日本での日常生活に目を向けて描いた新作19点を発表。現実と虚構の境界を曖昧にし、観客を優しく惑わせ、楽しませるジュリアンの創造のプロセスを表現する。
「嘘」は、フェイクニュースや人工的な現実のように否定的な形で扱われることが多い現代社会において、ジュリアンは、フィクションを「現実からの逃避」ではなく、身近な世界を愛おしむためのまなざしとして受け入れる。「想像と日常が混じり合う舞台」としての東京という街から着想を得て、愛情や想像力、そして「生きる」という行為そのものを静かに省察する試みとなっている。
ジャン・ジュリアン「PURPLE PONY」
会期:11月14日(金)〜12月1日(月)
場所:PARCO MUSEUM TOKYO(東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 4F)
時間:11:00〜21:00(入場は30分前まで、12月1日は18:00まで)
休館日:無休
































