亡き夫の「3億円」切手コレクションを巡り、妻が競売会社を提訴。同社は「事実無根」と否定

フロリダ在住の未亡人が、推定価格3億円の夫の切手コレクション返還を巡り、ニューヨークのオークションハウスを提訴した。未亡人は一部の切手が紛失しているとも主張しているが、オークションハウス側は全面的に否定している。

Sticky situation:Some stamps are highly sought after at auction. Photo: Picture Alliance.
フロリダの切手コレクター、故スタンリー・マークスのコレクションの中には、市場価値の高い希少品も含まれる。Photo: Picture Alliance

フロリダ州在住のシェリー・エントナーが、故夫の切手コレクション(推定価値200万ドル、最新の為替で約3億円)を返還するよう、ニューヨーク・マンハッタンのオークションハウスに求めている。エントナーは、故夫の切手コレクションに含まれていたはずの複数の切手が紛失していると主張している。

ニューヨーク・ポスト紙が報じたところでは、エントナーの亡き夫、スタンリー・マークスは1937年、16歳のときに切手収集を始め、2016年に89歳で亡くなるまで収集を続けた。その後、彼のコレクションは「世界有数のアメリカおよび世界の切手オークショニア」を自称するロバート・A・シーゲル・オークション・ギャラリーズに託された。

スタンリー・A・マークス・リヴォーカブル・トラストによって提出された裁判資料に記されている通り、コレクションはアメリカの切手と海外の切手に分けられ、後者は同オークションハウスによって75万ドル(約1億1000万円)で売却された。ところが、エントナーと息子ウィリアムが今年4月、ニューヨークで残りのコレクションの確認を行った際、いくつかの切手が見当たらなかったという。

裁判資料には、「エントナーはオークションハウスを訪れた際、委託時にアメリカの切手コレクションに含まれていた一部がなくなっていると考えるに至った」と記されている。

その結果、エントナーの家族はオークションハウスにコレクションの返還を求めたが、同社は拒否したとされる。さらにエントナーは、オークションハウス側から、コレクションの保険料として5万6000ドル(約850万円)の支払いを求められた上、同社に対する一切の責任を免除するよう要求されたと主張。エントナーは、少なくとも200万ドル(約3億円)の損害賠償を求めている。

エントナーの弁護士ウェンディ・リンドストロムはUS版ARTnewsの取材に対し、次のように語った。

「ロバート・A・シーゲル・オークション・ギャラリーズは、法的根拠もないまま、保険料を返還しない限り依頼人の貴重なアメリカ切手コレクションを返還しないと言っています。コレクションを人質のように扱うなど、到底容認できません」

一方、ロバート・A・シーゲル・オークション・ギャラリーズは公にこの主張を否定し、「訴訟はまったく根拠のないものだ」と述べている。また、同社の弁護士ダニエル・H・ワイナーはUS版ARTnewsに、「残念ながら、今回の訴訟には4つの重要な事実が欠けています」として、以下のように説明している。

  1. エントナーは、亡き夫の信託の唯一の受託者として、当初ロバート・A・シーゲル・オークション・ギャラリーズを通じてコレクションを公開オークションにかける意向を繰り返し伝えていた。
  2. しかし最近になって突如心変わりし、コレクションを返すよう要求してきた。
  3. エントナーは過去9年間にわたり、同コレクションを安全に保管する目的で、同オークションハウスに保険費用5万6000ドルを立て替えさせてきたが、その返還を拒んでいる。
  4. そして同オークションハウスは、繰り返し、エントナーにコレクションを返還する意志を示している。

さらに同氏はこう付け加えた。

「エントナーによる『コレクションから切手が紛失している』という主張には、まったく根拠がありません。これはロバート・A・シーゲル・オークション・ギャラリーズの評判を損ねるために、法制度を不適切に利用しようとする企みにすぎません」

ワイナーによると、エントナーと息子は4月にコレクションを確認しており、「すべての切手がそろっていることを確認したばかりか、オークションハウス社長のスコット・トレペルに対し、面会に多くの時間を割いてもらったことへの感謝をテキストメッセージで伝えていた」という。

from ARTnews

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