ダリの大規模巡回展で21作品に贋作疑惑。イタリア警察が強制捜査
イタリア当局は9月30日、北部の都市パルマの美術館で開催中の大規模な個展「ダリ、芸術と神話の間」に展示されているダリ作品のうち、贋作と疑われる21点を押収した。

9月30日、イタリアの警察にあたるカラビニエリの美術品対策部隊は、パルマにある美術館、パラッツォ・タラスコーニで開催されているダリ展から贋作疑いの作品21点を押収した。
懸案の展覧会は9月27日に始まった大規模展「ダリ、芸術と神話の間」で、ダリの素描、版画、タペストリー約80点が展示されていた。この展覧会は巡回展で、2025年1月25日から7月27日までローマのイタリア陸軍歩兵歴史博物館で開催されており、カラビニエリ美術品対策部隊のローマ班の警察官たちは同展の定期検査中に疑念を抱いたという。捜査を指揮する上級警察官のディエゴ・ポグリオはガーディアン紙に次のように語った。
「何かがおかしいと思いました。展覧会はダリによるリトグラフ、ポスター、素描のみが展示されており、数点の彫像やその他の物品はあったものの、絵画や重要な作品は一切ありませんでした。なぜ、あえてダリ作品の中でも価値の低い作品だけを集めた展覧会を企画したいと思ったのか、理解するのが困難でした」
部隊がスペイン・カタルーニャのフィゲラスに拠点を置くガラ=サルバドール・ダリ財団にその疑念を伝えたところ、財団は、主催者から展覧会について一度も連絡を受けていないと回答。これによりポグリオはさらに疑念を深めた。通常、重要な芸術家の作品を展示する展覧会を企画するのであれば、その作家のコレクションを管理する財団を通さない訳にはいかないからだ。
調査に関与するイタリアの検察官ステファノ・オピリオがアート・ニュースペーパー(以後、TAN)に語ったところによると、カラビニエリはその後2月に「ダリ、芸術と神話の間」展のカタログをダリ財団に送付。それを見た財団は3月の報告書で、これらの作品の来歴について「困惑している」と述べた。その後すぐに財団の専門家たちが展覧会を訪れ、作品に対して強い疑念を抱いた。ダリ財団はTANに寄せた声明で、「この展覧会の内容を知った時点から、財団はカラビニエリに対し、3点の素描と一連の版画についての疑念を表明しました」とコメントしている。
こうしてカラビニエリ美術品対策部隊は、作品がパルマで展示されるまで待ち、9月30日に強制捜査を行った。押収された作品は18点のリトグラフと3点の素描で、2人のイタリア人が貸与したコレクションの一部だったと報じられている。
展覧会「ダリ、芸術と神話の間」は、パレルモを拠点とするナヴィガーレという企業によって企画されていた。イタリアの文化省は現在、押収された作品を検査中だ。贋作であることが確認されれば、作品は恒久的に没収され、容疑者たちは偽造または故意に偽造品を取り扱った罪で起訴される可能性がある。
今後の捜査についてオピリオは、「今は、作品を流通させた人々が直接偽造したのか、それとも流通させた人々が他の贋作者から購入したのかを突き止めることが重要です」と述べた。
US版ARTnewsはパラッツォ・タラスコーニとナヴィガーレにコメントを求めたが、返事は来ていない。(翻訳:編集部)
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