評価額7億円! 金属探知機愛好家が発見した「チューダー・ハート」取得に、大英博物館が本腰
大英博物館は、2019年に金属探知機愛好家が畑で発見したヘンリー8世と最初の妻にまつわる24金ペンダント「チューダー・ハート」の取得を目指し、評価額350万ポンド(約7億円)の調達を始めた。そのキャンペーンには俳優のダミアン・ルイスも一役買っている。

大英博物館は、ヘンリー8世と最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンの結婚にちなんだ金のペンダント「チューダー・ハート」取得のための資金調達に乗り出した。
「チューダー・ハート」は24金で作られており、75連の鎖からは、ヘンリー8世と妻キャサリン・オブ・アラゴンに関連するシンボルであるバラとザクロの木、そして2人の頭文字「H」と「K」の彫刻がエナメル装飾されたハート型のペンダントヘッドが吊り下げられている。
大英博物館のルネサンス期ヨーロッパのキュレーターであるレイチェル・キングはアートニュースペーパーの取材に対し、これまでチューダー朝の「豪華装飾品」は目録やハンス・ホルバイン(子)などの芸術家による絵画からしか存在を知ることが出来なかったと語り、このペンダントは貴重な「具体例」と評価。「ヘンリー8世の治世初期から現存する遺物の中で、この種のこれほど複雑なものは全くありません」と述べている。
そもそもこのペンダントは、2019年に金属探知機愛好家のチャーリー・クラークが発見した。彼がイギリス・ウォリックシャーの畑を探索していたところ、探知機から「異常に大きな」探知音がし、その場所を掘ってみるとこのペンダントが現れたという。クラークは、バーミンガムの専門家にペンダントを持ち込んだ時の様子を、「彼女(専門家)はペンダントを持つ手が震えており、あごが床に落ちていた」と冗談を交えて語った。
その後、このペンダントは宝物と認定され、国内の博物館が取得の優先権を与えられるという1996年制定の宝物法に則って大英博物館が名乗りを上げたというわけだ。しかし、ペンダントの評価額は350万ポンド(約7億円)に上る。同館は現在もこのペンダントの保管・展示の役割を担っているが、公式に所蔵しているわけではない。そこで同館は、公式サイト内で寄付を呼び掛けた。最初の大口の協力者はイギリス最大級の慈善基金ジュリア・ラウジング・トラストで、同館に50万ポンド(約1億円)を寄付した。
続いて、『ドリームキャッチャー』(2003)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2013)、『ドリーム・ホース』(2023)などの出演で知られる俳優のダミアン・ルイスも支援を表明した。彼は大英博物館のインスタグラムの動画に登場し、「世界で唯一現存する、ヘンリー8世の治世の宝飾品です」とペンダントについて解説。ヘンリー8世と妻キャサリン・オブ・アラゴンの結婚に関する遺物であることにかけて、来年のバレンタインデーまでに「どうか気前よく寄付を」と呼びかけた。
そして10月18日、大英博物館は初となる舞踏会を開催する。これは、「世界有数の文化の中心地の一つとしてのロンドンの地位を祝い、国際的な社交カレンダーに新たな1ページを刻む」催しであると同時に、新しい資金調達のイニシアチブとして期待されている。
ペンダントの取得キャンペーンについての声明で、大英博物館館長のニコラス・カリナンは、「チューダー・ハートは、これまで発掘されたイングランドの遺物の中でおそらく最も驚くべきものの1つです。支援によって、このユニークで美しい宝物が我が国のものとなり、後世の人々が楽しみ、インスピレーションが得られるのです」と述べた。(翻訳:編集部)
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