中国政府の意向を反映? 香港芸術発展局がヴェネチア・ビエンナーレ香港パビリオンの主催を変更

香港芸術発展局は、2026年に開催される第61回ヴェネチア・ビエンナーレ香港パビリオンのオーガナイザーをM+から香港美術館(HKMOA)に変更すると発表した。M+は2013年から同パビリオンに関わっており、突然の出来事だった。

香港美術館。Photo: Wikimedia Commons

香港芸術発展局は、2026年の5月9日から11月22日まで開催される第61回ヴェネチア・ビエンナーレの香港パビリオンの主催をM+から香港美術館(HKMOA)に変更すると発表した。同発展局は香港政府によって設立された公的機関だが、重要政策や人事には中国政府の意向が反映されることがあるとも指摘されている。

アートフォーラムが伝えるところによると、M+は2013年から香港パビリオンを主催してきた。M+が参加して以来パビリオンの来場者数は増加しており高い評価を得ていたが、アーティストの選考プロセスに透明性が欠けているとの批判が起こっていたという。

すでに決まっていたパビリオンのテーマ「Very Hong Kong(非常に香港)」は引き継がれる。HKMOAは、2009年から続いてきた個展形式を廃止し、グループ展を行うという。参加アーティストは200人以上のリストの中から選出するというが、このリストには、過去5年間に政府運営の美術館から委託を受けたアーティストや、大学、その他の高等教育機関、および西九龍文化区管理局から推薦されたアーティストが含まれているという。

香港芸術発展局の副議長であるフランキー・ヨン・ワイシンは、サウスチャイナ・モーニングポストの取材に対し、今回の変更に「特別な理由はない」としつつも、同局が「新たなパートナー」を持つときであるとして、「(香港パビリオンが)中国の伝統文化と香港の特色をアピールすることを期待している」と語った。

一方、HKMOA館長のマリア・モク・カーウィンは同じ記事の中で、香港パビリオンは中国の伝統文化を中心にする必要はないと話し、こう続けている。

「私たちはオープンで包括的であり、現在在住していない人や永住者ではないアーティストも除外されません。私たちは地元からの幅広い参加とサポートを望んでおり、それが教育機関にアーティストの推薦を依頼した理由です」

また、香港を拠点とするアーティストのチャン・サイロクは同記事の中で、「ヴェネチア・ビエンナーレは非常に重要なイベントです。M+であろうがHKMOAであろうが、芸術コミュニティと香港市民の両方にとっての透明性が重要です。HKMOAはアーティスト選考に使用している具体的な基準を明確にすべきです。現在、私たちは参加に対する提案書の提出を求められていますが、何人のアーティストが展示会場を共有するのかも不明確です。また展示テーマの『Very Hong Kong』もかなり漠然としています」と述べた。

モクはさらに、「プロフェッショナリズム、独創性、品質、観客へのアピール、実現可能性」を基準にアーティストを選ぶべきだとも話している。ビエンナーレの最終候補者は7月か8月に選ばれ、最終候補に残った約20人は、2026年3月にHKMOAで開催される展覧会で作品が展示されるという。

あわせて読みたい