今週末に見たいアートイベントTOP5:カーディフ&ミラーによる愛らしく奇妙な小品展、「主体」の位置を再考する鷹野隆大の3シリーズ

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

バルテレミー・トグオ(space Un)より、展示風景。space Un / Courtesy of Galerie Lelong

1. ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー Small Works(ギャラリー小柳)

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー
溺水のメカニズム
2023 年
ミクストメディア、
アーカイバルインクジェットプリント、オーディオ
60 x 40 x 22 cm
© Janet Cardiff & George Bures Miller / Courtesy of Gallery Koyanagi
ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー
スーツケース・シアター
2020/2023 年
ミクストメディア、樹脂製のフィギュア、
スーツケース、スマートフォン
56 x 46 x 38 cm
© Janet Cardiff & George Bures Miller / Courtesy of Gallery Koyanagi
ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「Small Works」展示風景 2025年 © Janet Cardiff & George Bures Miller / Courtesy of Gallery Koyanagi
ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「Small Works」展示風景 2025年 © Janet Cardiff & George Bures Miller / Courtesy of Gallery Koyanagi

2人の作家が可愛くも奇妙な小品11点を展示

共にカナダ出身のジャネット・カーディフとジョージ・ビュレス・ミラーは、アルバータ大学在学中の1983年に出会い、次第に共同制作するようになる。2人の本格的なコラボレーションは、暗い部屋を様々なオブジェで埋め尽くし、鑑賞者がその部屋の中で動くと音楽や話し声が聞こえてくる、1995年の《ダーク・プール》に始まる。

本展では、展覧会タイトルの通り、2人が制作した小品を11点集めて展示する。主にファウンドオブジェを素材に組み立てたアッサンブラージュの作品たちで、中には手のひらほどのサイズのものもあり、新作7点を含む全てが本邦初公開。作品の規模は変わっても、「聴く」「見る」といった複合的な知覚体験を伴うスタイルは変わらない。ちょっと不気味だが、かわいらしい人形たちがシュールな小芝居を繰り広げる《スーツケース・シアター》や、偶然目に留まった科学雑誌の溺死に関する記事からインスピレーションを得たという《溺水のメカニズム》など、愛らしく、時に奇妙な珠玉の作品群だ。

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー Small Works
会期:3月22日(土)〜6月14日(土)
場所:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F)
時間:12:00~19:00
休館日:日月祝


2. バルテレミー・トグオ(space Un)

space Un / Courtesy of Galerie Lelong
space Un / Courtesy of Galerie Lelong
space Un / Courtesy of Galerie Lelong

カメルーンのアーティストが見た奈良・吉野

パリとカメルーンを拠点にし、ディアスポラ、アイデンティティ、社会正義といったテーマについて絵画、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなどジャンル横断的に表現するバルテレミー・トグオの個展。トグオは新進気鋭のアフリカ人アーティストを支援するカメルーンの文化・芸術拠点「バンジュン・ステーション」の創設者でもあり、その作品は、ヴェネチア・ビエンナーレポンピドゥー・センターニューヨーク近代美術館(MoMA)など、世界の主要な美術展や機関で展示されている。

同スペースの1周年記念として行われる展覧会では、トグオが奈良県・吉野でのアーティスト・イン・レジデンスに参加して制作した新作が公開されている。

バルテレミー・トグオ
会期:4月18日(金)~6月29日(日)
場所:space Un(東京都港区南青山2-4-9)
時間:12:00~19:00(29日は17:00~19:00フィニサージ)
休館日:月火


3. アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)

1963 – Otl Aicher, E5/HfG Ulm – Lufthansa – Ticket
1969 – Walter Breker – Minimal Art Exhibition (Kunsthalle Düsseldorf) – Brochure cover
1971 – Anton Stankowski – Berlin–Layout – Design manual © Stankowski-Stiftung, St

戦後西ドイツのデザイン・ソリューションを紹介

現代のコーポレート・デザインにみられるシステマティックなデザイン・ソリューションは、20世紀初頭のペーター・ベーレンスたちにはじまり、それに続くバウハウスやウルム造形大学など、ドイツのデザイナーたちが生み出した。そして、ドイツのこのデザイン領域が、経済発展した民主主義国家という戦後ドイツのイメージを形作っていった。

本展では、デュッセルドルフにデザイン事務所vista を構えるグラフィックデザイナー、カタリーナ・ズセックとイエンス・ミューラーが設立した「A5コレクション デュッセルドルフ」の膨大なアーカイブの中から、ルフトハンザ航空など企業のリブランディングを担った著名なポスターやビジュアル・アイデンティティの実例、デザイン・マニュアルなどの貴重な原稿のスケッチやサンプル等を通して、戦後から西ドイツの驚異的躍進を支えたデザイン・ソリューションの体系的な発展を紹介している。

アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング
会期:5月27日(火)〜7月5日(土)
場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F/B1F)
時間:11:00~19:00
休館日:日祝


4. 鷹野隆大 連続企画—写真を問う: part 1「bodies」(Yumiko Chiba Associates)

©Ryudai Takano, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

男性の裸体を捉えたシリーズから「主体」の位置を再考

2006年に写真集『IN MY ROOM』で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞以降、セクシュアリティやジェンダーに関わる写真のみならず、写真という媒体の特殊性を問い直す多様な表現を展開し、国内外で高い評価を得てきた写真家、鷹野隆大の個展。

本展では、男性の裸体を捉えた「立ち上がれキクオ」「ヒューマンボディ 1/1」「ヨコたわるラフ」の各シリーズを展示する。これらの作品を通して、写真と絵画の間、「写す」ことと「写る」ことの狭間で彷徨うように、写真における身体表現の中での主体の位置を再考する。6月14日には、美術批評家・沢山遼によるミニレクチャーと鷹野とのトークイベントも行う。現在、東京都写真美術館では「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ―この日常を生きのびるために―」展も開催中(6月8日まで)。

鷹野隆大 連続企画—写真を問う: part 1「bodies」
会期:5月27日(火)〜7月12日(土)
場所:Yumiko Chiba Associates(東京都港区六本木6-4-1 六本木ヒルズ ハリウッドビューティープラザ3F)
時間:12:00~19:00
休館日:日月祝


5. やんツー 個展「Homage to NewYork」(WALL_alternative)

やんツー

アメリカでのリサーチから生まれた大作を発表

1984年生まれのやんツーは、AIを用いた自動描画マシンや、セグウェイが作品を監督するインスタレーション作品など、機械が人間の行為を代行する「自律的な装置」を用いた作品を制作している。近年では自身が用いる技術の根幹にあるエネルギーの在り方を追求しており、テクノロジーと人間の関係性を問い直すとともに、表現の主体や身体性について新たな視点を創出している。

展覧会タイトルは、キネティック・アートの先駆者ジャン・ティンゲリーが1960年にニューヨーク近代美術館(MoMA)の庭で発表した大規模な上演形式のキネティック作品《Homage to New York(ニューヨーク讃頌)》に由来。同スペースの7メートルにおよぶ壁面に、昨年アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)の助成を受けてニューヨークやその他アメリカ各所で半年間リサーチを行った経験を元にして制作した新作を発表する。また、「遅いミニ四駆」シリーズの新作が全長15メートルのコースを徐行する。

やんツー 個展「Homage to NewYork」
会期:6月4日(水)〜6月28日(土)
場所:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4 1F)
時間:18:00~24:00
休館日:日曜

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