中東アートシーンの最前線! アラブ首長国連邦(UAE)を代表する美術館・ギャラリー20選【MAP付き】

中東最大規模のアートフェア「Art Dubai」の発展を筆頭に、近年大きな盛り上がりを見せるアラブ首長国連邦(UAE)のアートシーン。世界的な美術館の分館建設も相次ぐなか、いま現地ではどんな施設が増えているのか。ドバイとアブダビに広がる20のギャラリーやアートセンターを紹介する。

Photo: Ahmed Aldaie/Unsplash

アラブ首長国連邦(以下、UAE)はいま、グローバルなアート・エコシステムから見ても決して無視できない存在となっている。石油依存からの脱却を掲げた国家戦略の後押しもあり、ドバイの莫大な富を背景に中東最大級のアートフェア、Art Dubaiは年々大規模化しており、2025年には世界60以上の都市から約120の出展者が参加。『Art Review』の2024年版「Power 100」で1位に輝いたキュレーター、フール・アル・カシミが率いる湾岸地域で最も歴史ある国際ビエンナーレ、シャルジャ・ビエンナーレ(1993年~)も、ますます世界的存在感を強めている。こうしたことから、UAEは、中東・南アジア諸国など従来のアートマーケットが注目してこなかった地域のアーティストが世界へ進出する場としても、ますます重要なものとなっていく可能性がある。

UAEにおけるアートシーンの盛り上がりを証明するがごとく、近年ドバイやアブダビのギャラリーやアートセンターは成長し続けている。なかでもアブダビは、ルーブル・アブダビ(2017年開館)、チームラボ・フェノメナ・アブダビ(2025年4月オープン)が進出しているほか、グッゲンハイム・アブダビ、大英博物館が協力するザイード国立博物館のオープンも控えている。そこでARTnews JAPAN編集部は、UAEに胎動する新たなアートシーンを追うべく、ドバイとアブダビからギャラリーとアートセンターを中心に20の施設をピックアップ。ぜひ現地を訪れ、現在進行系の熱気を感じとってほしい。

1. Jameel Arts Centre

ドバイのジャダフ・ウォーターフロントに位置する独立系のアートセンター。10の展示室とライブラリー、レジデンス用スタジオ、カフェなどを擁する10個のボックスからつくられている。彫刻作品が展示される公園も併設されるほか、ワークショップやトークイベントも多く開催されており、老若男女が入り交じるコミュニティを生み出している。

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2. Alserkal Avenue

旧工業地帯に広がる約40棟もの倉庫をリノベーションすることで生まれた、ドバイ屈指のアートディストリクト。レム・コールハース率いるOMAが設計を手掛けている。2008年のオープン以降、入居ギャラリーが増加しているだけでなく、映画館やレストラン、ジムなどもつくられており、ローカルの人々が交流できる空間へと発展している。

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3. Museum of The Future

ドバイ未来財団が2022年にオープンした、テクノロジーによる未来の変化を提示する博物館。建物を覆うアラビア語のカリグラフィーが独創的な外観を生み出しており、『ナショナル・ジオグラフィック』の「世界で最も美しい博物館14」のひとつに選ばれている。館内ではAIや宇宙、気候変動などをテーマに、最先端のテクノロジーと未来の社会のつながりを問う展示プログラムが展開されている。

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4. ARTE MUSEUM Dubai

韓国のクリエイティブスタジオ「d’strict」が手掛ける、没入型のメディアアート美術館。4K映像と24chサウンドによる高精細な視聴覚体験だけでなく、香りの演出を加えることでより五感全体を刺激する体験を生み出している。自然をテーマにした展示プログラムのほか、オルセー美術館とコラボレーションしたプログラムも提供。

5. Theatre of Digital Art

世界最大級の人工島「パーム・ジュメイラ」につくられた、360度スクリーンに囲まれたドーム型のシアター。ゴッホやモネの作品を活用した没入型の展示プログラムを提供するほか、ジャズやクラシックのコンサートに映像演出を加えたパフォーマンス、VR/ARワークショップや子ども向けの教育プログラムなど、さまざまな取り組みを展開している。

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6. Foundry

ドバイのダウンタウン地区に位置するカルチャースペース。7つのホールでは展示が行われるほか、コワーキングスペースとしての機能も有しており、ライブラリーやポッドキャスト収録ルームなども併設。ローカルアーティストからアンディ・ウォーホルのような著名アーティストまで、さまざまな展示によって人々がアートに触れる機会を創出している。

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7. Lawrie Shabibi Gallery

Alserkal Avenue内に位置するアートギャラリー。2011年オープン。中東や北アフリカの若手アーティストを積極的に支援するほか、近年はモロッコのモハメド・メレヒやイラク/フランスのメフディ・ムタシャール、モナ・サウディなど、これまであまり注目されてこなかったアーティストへフォーカスしながら、世界各国の美術館との連携を強めている。

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8. Gulf Photo Plus

UAEでも数少ない、写真に特化した文化施設。ギャラリーだけでなくプリントスタジオや教育プログラム、機材レンタルなど写真にまつわるさまざまなサービスを提供。初心者向けのワークショップからプロフェッショナルな作家を育成するプログラムまで、幅広い取り組みを展開することで、UAEに新たな写真文化を根づかせようとしている。

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9. Bayt AlMamzar

アル・マムザル地区の邸宅をリノベーションした独立系のアートスペース。アーティスト用のスタジオやギャラリー、ライブラリーなどが設置されており、イタリアやバングラデシュ、チュニジア、クウェート、パキスタンなど世界各国のアーティストのレジデンスを受け入れている。ローカルなクリエイティブコミュニティと連携しながら、アーティストが新たな実験に挑戦できる場を提供している。

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10. TABARI ARTSPACE

2003年にオープンした、中東・北アフリカ地域のアーティストを支援する老舗ギャラリー。ディアスポラ系のアーティストや女性アーティストのサポートにも力を入れており、グローバルなアートシーンへ多様なナラティブを反映させることを目指している。アーティスト向けのメンターシッププログラムや海外アート機関との連携も盛んに推進。

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11. Efiɛ Gallery

2021年に設立された、アフリカ系アーティストにフォーカスしたアートギャラリー。写真や彫刻からNFTまでジャンルを問わず多様な作品を取り扱うとともに、ガーナのアクラとドバイをつなぐレジデンシープログラム展開することで、アフリカ系アーティストとグローバルなアートシーンをつなぐプラットフォームとして機能している。

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12. Aisha Alabbar Gallery

UAEで初めて女性主導でつくられたアートギャラリー。2018年設立。ファウンダーのアイシャ・アラバーは写真作品を制作してきた経験をもち、既存のギャラリーが海外アーティストや伝統的なアートに固執してきた状況を変えるべく、ローカルなアーティストのサポートに注力している。Art Dubaiなど国内のアートフェアにも積極的に参加。

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13. 1X1 Art Gallery

1996年に設立された、グローバルサウスのアーティストにフォーカスした老舗ギャラリー。現在はAlserkal Avenue内に拠点を構えている。とくに南アジアの現代美術・近代美術に強みをもち、インドの抽象画から映像インスタレーションまで幅広い表現をカバー。南アジアのアートと文学に特化したライブラリーと書店も運営している。

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14. Dubai Design District

ドバイのアートシーンに触れるなら、ギャラリーやアートセンターだけでなくデザインディストリクトにも目を向けておきたい。政府が中心となり2015年にオープンしたDubai Design Districtは大学やデザインスタジオ、ファッションブランドの集積地となっており、常に多種多様なイベントが開催されている。ドバイに生まれる新たなクリエイティブ・エコシステムに触れられる場と言えるだろう。

15. Dubai Mall

近年、ラグジュアリー層をターゲットにしたショッピングモールはアートを積極的に取り入れており、世界最大級のモールとされるDubai Mallもその象徴だろう。館内にさまざまなパブリックアート作品が展示されており、パフォーマンスイベントが行われることも。ドバイの活気を感じられる場所と言えそうだ。

16. Louvre Abu Dhabi

UAEの首都、アブダビも近年さまざまなアート施設が増加中。ルーヴル美術館の分館、ルーヴル・アブダビが位置するサディヤット島は文化地区であり、美術館や博物館、教育・文化施設が立ち並んでいる。フランスの建築家、ジャン・ヌーヴェルが設計したドーム型の建築は圧倒的なスケールを誇り、数百点のコレクション作品だけでなく、フランス国内の美術館・博物館から貸し出された300点の作品が展示されている。

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17. teamLab Phenomena Abu Dhabi

2025年4月にオープンしたばかりの、チームラボが手掛ける没入型巨大アート施設。「環境が生む現象、その現象が作品の存在。その存在群に没入し、環境と一体となる」をコンセプトに、1万7,000平方メートルの広大な敷地で展開される作品は常に変化しつづけている。ルーヴル・アブダビと同じくサディヤット島に位置し、今後はグッゲンハイム美術館の分館もオープン予定だ。

18. Bassam Freiha Art Foundation

レバノンのコレクター、バッサム・フレイハにより非営利財団が運営するアートスペース。同財団は50年以上にわたってオリエント美術の収集を続けており、自身のコレクションに加え、国内外のパトロンのコレクションを紹介する展覧会を開催している。展示だけでなくレジデンスプログラムや助成金制度、ワークショップなどさまざまな取り組みを通じてローカルのアーティストを支援している。

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19. Manarat Al Saadiyat

2009年にオープンしたManarat Al Saadiyatは、近年盛り上がりを見せるサディヤット島のなかでも初期につくられた施設のひとつ。作品展示はもちろんのこと、子どもたちが作品制作を体験できるサマーキャンプや若手アーティスト向けワークショップ、スペースの貸出などを通じて、市民とアートをつなぐ場として機能している。

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20. 421

アブダビの港湾エリアに位置する倉庫をリノベーションし2015年にオープンしたアートプラットフォーム。ギャラリーからスタジオ、中庭、コワーキングスペース、ライブラリー、カフェに至るまでさまざまなスペースを有し、展示だけでなく多くのシンポジウムやパフォーマンスイベントも実施してきた。これまでに行われきたプログラム数は1,000以上に及ぶという。近年はさらに若手アーティストの育成に注力する教育プログラムを展開。

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