2000年前の沈没船から「ほぼ原型」の陶器を大量発見。古代の梱包方法に専門家も驚きの声

トルコ南部、地中海沿岸のリゾート地であるアンタルヤ沖で、約2000年前の沈没船から非常に状態の良い陶製の皿や鉢などが発見された。これらは、「イースタン・シギラタ陶器」と呼ばれる上質な赤色の食器だという。トルコでは新しい水中考古学博物館の建設計画が進められるなど、近年この分野の研究や観光への活用が意欲的に進められている。

トルコ沖の沈没船で見つかった積み重ねられた陶器。慎重に砂を払う作業が行われている。Photo: Courtesy the Ministry of Culture and Tourism, Turkey

ヘレニズム後期〜ローマ帝国初期の数百点もの陶器の皿、盆、鉢が、トルコ沖の沈没船から「積み重ねて運ばれた当時の形がほぼ完璧に残る」状態で見つかったと、7月初旬に同国文化観光省が発表した。船が沈んでいるのはアンタルヤのクムルジャ地区アドラサン沖で、トルコのメフメット・ヌリ・エルソイ文化観光大臣も視察のための特別ダイビングでこの水中遺跡を訪れている。

視察後の記者発表でエルソイ大臣は、沈没した貨物船はおよそ2000年前のもので、陶器は「輸送中の保護のために粘土で覆われ、積み重ねられていた」と説明。この古代の技術により、陶器は「ほぼ原型をとどめたまま」砂に埋もれており、当時の色味や模様、表面の質感が残されていた。

エルソイ大臣は「これは我が国にとってだけでなく、世界的な文化遺産として非常に貴重な発見です」と続け、「2000年前の製造技術や梱包方法を知るうえで、非常に貴重な手がかりを提供してくれる」ものとして、現地の修復・保存研究所による出土品の保存処理が行われていることを明らかにした。

トルコでは「未来への遺産」と名付けられたプロジェクトの一環で、水中考古学調査が各地で活発に展開され、発掘のスピードアップが図られている。エルソイ大臣はその進捗についてこう述べた。

「地中海沿いのパタラからメルシンまでの海域だけで400以上の沈没船が確認されており、研究者たちは熱意をもって計画的に調査を進めています。また、これらの発見は科学的に重要であるだけでなく、観光分野においても大きな可能性を秘めています。沈没船の1つ1つが、海中における過去の歴史を探る新たな扉を開いているのです。ボドルム水中考古学博物館のような文化施設では、こうした発掘調査の成果が一般に公開されています」

発掘を指揮したアクデニズ大学のハカン・ウニス准教授も、沈没船の発掘が完了した後、その一部がダイビング観光に開放される予定だと述べている。

エルソイ大臣はまた、アンタルヤの南西にあるケメル=イディロス地区で、水中考古学に焦点を当てた新しい博物館の建設が今月中に開始され、今回発見された陶磁器などが展示される計画であることを発表。それに加え、今夏はアンタルヤ考古学博物館でも水中考古学の特別展示エリアが設けられる。(翻訳:石井佳子)

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