時が止まった深海で16世紀の沈没船が姿を現す! 手つかずの船からは大量の陶器や大砲も発見

フランス海軍が地中海での調査中に、海面下約2.6キロの深海で偶然16世紀の沈没船を発見した。フランス領では史上最深の場所から見つかったこの船は過去誰からも見つけられず、大量の水差しや皿などの遺物がそのまま残されていた。

地中海の海底2.6キロで見つかった16世紀の沈没船。Photo: Facebook/@Drassm

フランス南東沿岸沖で深海ケーブルのチェックや鉱物などの資源を探査する任務を行っていたフランス海軍が2025年3月、海底2.6キロの地点で異常に大きな物体を発見した。カメラを搭載した水中ドローンでその場所を調べたところ、大量の陶器類とともに沈没船の姿が現れた。船は、発見地の近くにあるサントロペのカマラ岬にちなんで「カマラ4号」と名付けられた。

アートネットが伝えるところによると、フランス海軍はその後、撮影した画像をフランス文化省傘下の水中考古学研究部(DRASSM)に送った。DRASSMは遠隔操作潜水艇でさらにその場所を調査し、6月初旬にその結果を発表した。

DRASSMの発表によると、沈没船は全長約30メートル、幅約7メートルで、16世紀に北イタリアからフランスに荷物を運んだ商船だという。船からは、約200個の多彩色陶器の水差しと100枚の皿、錨、鉄棒、6門の大砲、2つの大釜が確認されている。船の年代特定に大きなヒントを与えたのは陶器類で、水差しには押しつぶしたような注ぎ口とリボン状の取っ手が付いており、中には幾何学模様や植物模様の装飾、ギリシャ語でイエス・キリストの名前の最初の三文字を表す「IHS」の文字が刻まれたものもあった。これらの要素は、フランス国境に近いイタリア北西部の沿岸地域リグーリア州で16世紀に製造されていたものと一致した。

地中海の海底2.6キロで見つかった16世紀の沈没船。大量の水差しが手つかずで残っている。Photo: Facebook/@Drassm
地中海の海底2.6キロで見つかった16世紀の沈没船。Photo: Facebook/@Drassm
沈没船と共に、現代の空き缶も見つかった。Photo: Facebook/@Drassm

カマラ4号が沈んだこの海域は何百年もの間、海上交通の要所だった。そのため船の遭難が度々起こり、過去、1516年に沈没したジェノヴァの船ロメリーナ号や、1693年に沈んだデンマークの戦艦サント・ドロテア号などの難破船が見つかっている。

DRASSMは声明で今回の発見が稀なものであるとして、次のようにコメントした。

「深海では、16世紀以来時が止まったままです。この沈没船は一般的に人の目が届かない場所にあったため、略奪や、船体の劣化から守られてきました。これは他に類を見ない研究の機会です」

DRASSMは次の段階として、この船に未発見の積荷がまだあるのか、船はどのように沈没したのか、通常2個装備する錨がなぜ1つしかなかったのかを解明したいと考えている。その一環として歴史学者、地質学者、考古学者を含む学際的なチームを編成し、数百枚の画像を組み合わせるフォトグラメトリという手法を用いて船の3Dモデルを作成する予定だ。

今回カマラ4号付近の深海で、現代のプラスチック製ボトルやヨーグルト容器が見つかった。DRASSMは沈没船の解明と共に、海洋汚染の害についての意識を高めるために調査を活用したいと検討している。

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