ARTnewsJAPAN

16世紀ポーランド王室の宝物が86年振りに姿現す! 清掃中に偶然発見、長年の捜索に終止符

第2次世界大戦勃発時の1939年にリトアニアのヴィリニュス大聖堂の壁に隠され、行方不明だったポーランド王室の財宝がこのほど見つかったと、リトアニアの観光促進機関が発表した。

発見されたポーランド王室の冠。 Photo: Facebook/Vilnius Archdiocese

1931年の春、リトアニアのヴィリニュス大聖堂が洪水に遭って清掃を行っていたところ、リトアニアも統治していたポーランド王族が埋葬された地下室を発見した。棺からは沢山の埋葬用の宝飾品が見つかったが、1939年、第2次世界大戦勃発時の混乱から守るため、それらは新聞紙に包まれて大聖堂に隠された。その存在は忘れられることは無かったが、正確な隠し場所は時とともに失われてしまった。

アートネットが伝えるところによると、宝飾品はヴィリニュス大司教区の協力の下、数十年に渡って探されてきた。2009年、ポーランド文化省は、宝飾品が埋められた際に立ち会っていた者の証言や、地中レーダーや金属探知機などの技術を用いて探索したが見つけられなかった。2023年には、建物をデジタルスキャンするプロジェクトが企画され、今度こそ隠し場所が特定出来るものと思われていたが、資金不足により中断された。

そんな中、美術史家サウリウス・ポデリスが、隠された財宝の手がかりを掴んだ。彼はその情報を大聖堂と文化遺産局に報告し、2024年10月に調査が開始されたが、ポデリスが考古学の闇市場と関わっているという疑惑があることからプロジェクトから外され、彼は不満を抱いている。

調査チームは、大聖堂の地下室の過去と現在の図面を参考にし、内視鏡カメラを使用して階段の壁のくぼみから王室の財宝を見つけ出した。1939年9月の日付が記された新聞紙からは、いくつかの王冠や指輪、鎖、笏、玉座、棺の飾り板などが出てきた。

階段の壁から発見された時の様子。Photo: Facebook/Vilnius Archdiocese
発見された宝飾品。Photo: Facebook/Vilnius Archdiocese
発見されたポーランド王室の笏。Photo: Facebook/Vilnius Archdiocese

それらに付けられた紋章から、持ち主はリトアニア大公にしてポーランド王のアレクサンデル・ヤギェウォ(1461-1506)、同じくリトアニア大公でポーランド王だったジグムント2世(1520-1572)と2人の妻(エリザベート・ハプスブルクとバルバラ・ラジヴィウ)であることが分かった。両王はともにヤギェウォ朝の主要メンバーであり、16世紀のポーランドの黄金時代を築いた人物だ。

この発見について、ヴィリニュス大司教区のギンタラス・グルシャス大司教は声明で、「発見されたリトアニアとポーランドの支配者の埋葬用宝物は、かけがえのない歴史的遺物です。リトアニア国家の長い伝統の象徴であり、リトアニア大公国の首都であったヴィリニュスの証であり、金細工と宝飾の素晴らしい作品です」と喜んだ。

見つかった宝飾品は、すぐに安全な場所に移され、目録が作成された。今後は調査と修復が行われ、2025年下半期に一般公開される予定だ。

あわせて読みたい